STOP THE 履正社!履正社を止められるのはこの4チームだ!

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 第89回選抜高等学校野球大会の出場校が発表された。その中で優勝候補として期待されるのが履正社だ。攻撃力、投手力ともに大会屈指のレベルを誇る履正社だが、その履正社を止めるチームはどこになるのか?

今年の履正社はどんなチーム?

若林 将平(履正社)

 まず今年の履正社がどれくらい強いのかを知っておく必要がある。履正社の強さが最も現れたのは昨秋の近畿大会と明治神宮大会だ。得点数の多さを見ると、その強さは際立っている。

近畿大会   4試合29得点 (※コールド2試合)明治神宮大会 4試合27得点

 強豪が揃う近畿大会、明治神宮大会でこの得点数は本当に素晴らしい。まず1番の石田 龍史がチャンスメイク。本塁打も打てる怖いトップバッターである。2番には巧打の遊撃手・西山 虎太郎がつなぎ、3番には西日本最強スラッガー・安田 尚憲(関連記事)、4番には近畿大会2試合連続本塁打の若林 将平が待ち構えている。その後の打線は日によって流動的だが、神宮大会4試合で7打点を記録した大型セカンド・松原 任耶、巧みなバットコントロールを持つ筒井 太成、決勝戦で特大本塁打を放った強打の捕手・片山 悠、そしてエースの竹田 祐(関連記事)も本塁打を打てる強打者で、隙が見当たらない。

 ここぞというときに一気に畳みかけられる破壊力があり、対戦したチームはその打線の脅威さを感じてきたはずだ。その強打の秘密は木製バットにある。履正社の練習は投手が実際に投げる実戦練習が多く、選手たちのバットを見ると、木製バットを握っている。木製バットにもかかわらず選手たちは安打性の打球を飛ばしており、安田、若林、石田に限ってはさく越え本塁打も放っている。

 投手相手に木製バットでしっかりとした打球を打ち返すのは難しく、技術がなければ打ち返すことができない。若林が「最短距離で振りぬけるようなスイング軌道ではないと、木製バットは打ち返せないです」と語るように、木製バットは履正社の打撃力向上に大きく役立っているのだ。

 また投手力に目を向けると、最速145キロを誇り明治神宮大会では20.1回を投げてわずか1失点と抜群の安定感を見せ、名実ともに神宮大会ナンバーワンピッチャーとなったエース・竹田 祐は絶対的な存在。また140キロを超える速球を投げ込む田中 雷大、そして左腕からキレのある速球を投げ込む松井 百代と頭数は多い。

 そんな履正社の現状の課題は守備力。失策を重ね、失点する場面も見られた。率いる岡田 龍生監督は「まだ捕る、投げるの技術が低いんですよ。それが課題だということは選手たちに言い続けています」と話すように、選抜へ向けて盤石の守備力を築き上げる考えだ。

神宮大会で対戦した早稲田実業、仙台育英は十分に履正社を破る実力を持っている

中川 広渡(早稲田実業)

 明治神宮大会優勝の履正社を破るのは並大抵なことではない。ではその可能性を持ったチームはどこかといえば、早稲田実業、仙台育英、大阪桐蔭、日大三の4チームであると考えられる。日大三以外は秋季大会で履正社と対戦をしている。

 清宮 幸太郎(関連記事)が注目される早稲田実業だが、4番を打つ野村 大樹(関連記事)は配球を読む上手さがあり、ピンチの場面でできれば勝負を避けたいと思わせるほどの選手。また昨秋勝負強さを発揮した橘内 俊治も怖い選手で、急成長を見せた1年生ショート・野田 優人も神宮大会では1番を打ち、しつこい打撃を見せる。

 早稲田実業の選手を見ていて感じるのは、試合のポイントやどのイニングが攻めどころなのかを理解しているということ。打線のつながりも良く、1つの四球、エラーでの失策をモノにできる上手さがある。不安視されているのは投手陣だが、1年生右腕・中川 広渡、1年生左腕・赤嶺 大哉、エースの服部 雅生は試合を作る能力が高く、落ち着いた投球ができる。直接対決となった神宮大会決勝戦では11失点を喫したが、5回以降無失点に抑えたように履正社打線に全く通用しない投手陣ではない。早稲田実業が勝利するには、まずは先制点を挙げて、なるべく早い段階で試合の主導権を握ること。点を取られても、多くの点を取って逃げ切れる形にしたいところだ。

 東北大会優勝の仙台育英も、十分にその資格があるだろう。エースの長谷川 拓帆(関連記事)は最速143キロのストレートとキレのあるスライダーが持ち味の速球派左腕。投球のレベルも高く、履正社打線を抑える力量は持っている。不調に終わった明治神宮大会では途中降板となってしまったが、もし対決が実現したとして、しっかりと調子を上げていければ少ない失点で抑えることは可能だろう。

 打線は走攻守三拍子揃った西巻 賢二や、勝負強い打撃を見せる好捕手・尾崎 拓海、投げては140キロ、打っては3番打者としては強打が光る佐川 光明を中心にミート力が高い選手が揃い、総合力の高さは出場校の中でもトップクラスといえるだろう。仙台育英が勝利を掴むためには長谷川がまず履正社打線を抑えて、接戦に持ち込んでいくことが大前提。前回は右打者への攻めに課題を残したので、右打者に対してどう配球を組み立てていくのか、自分の意図通りにコントロールできることがカギとなるのではないだろうか。

やはり大阪桐蔭は履正社のライバル!/日大三も対抗馬として急浮上!

徳山 壮磨(大阪桐蔭)

 最後は大阪桐蔭だ。大阪桐蔭は大阪秋季大会準決勝で履正社に敗れたが、全国的に見ても大阪桐蔭ほど個々の実力が高い選手が揃っているチームはない。大阪桐蔭は履正社のライバルなのだ。

 そんな今年の大阪桐蔭の戦力を紹介すると、投手陣は最速145キロの徳山 壮磨、経験豊富な140キロ右腕・香川 麗爾、最速148キロを計測する1年生右腕・根尾 昂、最速143キロ左腕・横川 凱と140キロカルテットで勝負する。この4投手の好投は正捕手の岩本 久重の力にかかっており、西谷 浩一監督も岩本について「彼は中心選手として活躍をしてほしい」と期待を込める。

 また打線もタレント揃いで、1番藤原 恭大は50メートル5秒台を誇り、さらに一発を打つ長打力を持った大型外野手、3番を打つ山本ダンテ武蔵は履正社戦で本塁打を放ち、粗削りながら魅力たっぷりの逸材。4番は流動的だが、近畿大会では根尾が4番を打つことが多く、逆方向にも本塁打が打てる強打者だ。また5番・中川 卓也も近畿大会初戦の龍谷大平安戦で本塁打を打ったように、長打力を秘めた強打者。その他にも勝負強い打撃を見せる主将・福井 章吾や、控え選手にも打力が高い選手が多くおり、怖いチームであることには変わりない。

 大阪桐蔭が勝つにはやはり先手を取って、突き放すぐらいの打力を見せていきたい。「力」で履正社に対抗できるチームは大阪桐蔭だけだといえる。もし選抜で対決が実現すれば、球史に残る名ゲームを期待したい。

 最後に推したいのが日大三。都大会6試合で9本塁打を打った長打力がなんといっても怖い。井上 大成、金成 麗生などスラッガー揃い。これが6年ぶりのセンバツ出場だが、甲子園で十分に豪打を発揮する可能性を持ったチームである。マウンドを守る櫻井 周斗は、最速144キロとハードな曲がりをする縦スライダーを武器にする本格派左腕。履正社打線を抑え込む実力は持っている。

秋の時点で履正社を破る実力を持ったのはこの4チーム。対戦が実現すれば、死闘が繰り広げられるのは間違いない。

(文・河嶋 宗一)

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