「野球人口拡大」「愛媛野球強化」へ活発議論!【愛媛県高野連監督研修会】
「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」で全国強豪を迎える愛媛県高校野球の熱き議論〜2017年1月14日(土)13時より、愛媛県松山市の「にぎたつ会館」において、「平成28年度愛媛県高等学校野球連盟監督研修会」が開催された。今回はこれまでと異なる意見交換会方式を採用した同研修会。その狙いと様子を独占レポートする。
「愛顔つなぐえひめ国体」最初の高校野球行事「愛媛県高野連監督会」済美平成・山本 篤志監督
今年、2017年は愛媛県にとって特別な年である。秋には第72回国民体育大会「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」開催。野球関連でも正式競技として成年男子軟式野球(10月6日(金)〜9日(月・祝)今治市・西条市・新居浜市・四国中央市・上島町開催)、特別競技として高等学校野球(10月6日(金)〜9日(月・祝)硬式は松山市<坊っちゃんスタジアム>・軟式は宇和島市<丸山公園野球場>)が開催される。
そんな2017年・愛媛県野球の冒頭行事となったのが「平成28年度愛媛県高等学校野球連盟監督研修会」。平成27年度は四国地区監督研修会との同時開催だったため、2年ぶりの開催となった同研修会では、初採用となった円卓形式の中、より熱を帯びたものとなった。
研修会は例年通り昨年11月の研修報告から。済美平成・山本 篤志監督による「野球競技人口の減少を食い止めるには」などについて激論を交わした「高校野球・甲子園塾(第1回)」研修報告。「大学生のような選手の意思が入った」2016年夏の甲子園王者である作新学院(栃木)の練習を3日間同行した新居浜東・近藤 輝幸監督。四日市工(三重)と3日間、練習見学、練習試合と合同練習を行った中から感じ取ったものを秋の愛媛県大会覇者・宇和島東の若藤 太監督が話した県外研修報告は、それぞれ学んだものを愛媛県高校野球の発展に寄与しようとする意気込みが感じられるものに。
その後、15分の休憩を挟んでメインテーマとして開催されたのは……。これまでの講演会ではなく「愛媛の今後の高校野球の在り方について」と銘打たれた監督・指導者たちによる意見交換会であった。
意見交換会の様子「愛媛の今後の高校野球の在り方について」激論交わす会の形式は約10分間円卓ごとに話し合い、意見としてとりまとめて2分間ずつ発表。あるいは司会が直接意見を求める形。事前にアンケート形式で提示されていた議題と出た意見概要は以下の通りである。
1.夏の愛媛大会のシード・球場割について
(現状)秋の県大会から春の四国大会までのポイント制で第4シードまでを決め、全校が初戦からメイン会場の坊っちゃんスタジアムで戦う。
(出た意見)・愛媛県全体を考えれば強豪校同士の早期対戦を避けられる。球場割は選手たちの体調を考えるとシード校が坊っちゃんスタジアムにこだわる必要はない意見と、選手たちの坊っちゃんスタジアムでやりたい意思を尊重したい。・現状では完全ノーシードの春県大会もシード制にしないと、公平性を欠く。・球場の付帯設備の差異を考えると、坊っちゃんスタジアムでのシード校全試合シードは妥当。ただ、日程優先の見地はあってもよいのいではないか。
・優勝チームがよいコンディションで甲子園でいい成績を残すためにはシード制は必要。ただ、秋の成績によって春のシードを与えることなどは必要。また、戦力拮抗している現状を考えれば夏のシードは現状4校から8校に増やすことも一考なのではないか。・現状、地区予選から四国大会までどの試合でも1勝1ポイント(センバツ出場の際のみ6 ポイント付与)だが、大会によってポイントを2ポイント・3ポイントと増やす考え方もある。・以前採用されていた「投票制」を復活してはどうか?ただ、ポイント制にも利はあるので、併用制を考えることも考えてよいのでは。全国で戦って勝つ消耗度を減らすため、8校をシードにすることも要検討課題。
2.秋季県大会の開催形式について
(現状)・地区別新人戦4強を地区予選シード。地区予選を経た後、16チームから県大会をスタート。(2016年秋の県大会枠は東予6<参加23校・22チーム>・中予6<参加21校>・南予4<参加16校15チーム>)
(出た意見)・地区別の新人戦では秋の県大会シード校決定の重要な資料となっている(各地区優勝校は通例・秋の県大会シード)が、夏の愛媛大会からの期間が2週間程度、かつ過密日程を強いられる中、主力選手のコンディション作りが非常に難しい。各地区4強まで決め、秋季地区予選のシード校を決める形を採っては?・新人戦で勝ち上がったチームは地区予選を免除し県大会からの出場を考えては?・平等性を考えれば地区別の割り振りを再考する必要もある。・四国大会を勝ち上がらないとセンバツに出場できない現状を考えると、秋こそ真に強いチームを輩出する必要がある。色々な会場を使ってもいいから、地区予選を一切廃し、夏の愛媛大会同様に全県方式の開催を考えてはどうか?
3.2018年・100回大会に向けての工夫
(出た意見)・レジェンド選手・関係者による始球式・功労賞の授与。・SNSを活用した呼びかけ。・小中学生チームの招待。・地区別選抜チームの結成。・注目される選手を作るため、選抜チームによる強化合宿・試合を設定。
4.野球人口底辺拡大への取り組み
(出た意見)・「小学生」に高校野球への憧れを抱くための野球教室・体験会を開催しては?・高校グラウンドを小中学生に開放する。・試合前の5分間程度、グラウンドに入れる機会を作る。・サッカーはキッズ年代からのアプローチが組織としてできている。一方、野球がキッズ年代の選択肢になりえていない中、小学校低学年向けのティーボールなどで高校野球が協力する形は採れないだろうか?
このような忌憚のない意見交換は1時間以上。愛媛県の高校野球、しいては日本の野球に対しての強い想いを指導者たちが経験年数を問わずぶつけあった。
胸襟を開き、2017年「愛媛野球復権」へ愛媛県高野連・二神 弘明理事長
こうして16時半すぎ、3時間半あまりに渡った「平成28年度愛媛県高等学校野球連盟監督研修会」は終了。これまで「上意下達・トップダウン型」の傾向があった愛媛県野球にとって画期的な「ボトムアップ式」意見交換会について、企画者の1人でもある二神 弘明・愛媛県高等学校野球連盟理事長はこう総括する。
「この意見交換会の狙いは、1つは小中学生で減少が著しい野球人口の拡大と全国で通用するチームを作る愛媛野球を強くする『野球王国えひめ』の復活。これまで指導者のみなさんがじっくり時間を取って本音を言いあう機会はなかなかなかったし、愛媛の野球をよくしたい意識はみんな持っていても共有しづらい状況がありました。また、私たち運営側とチームを指導する側での考え方が異なる部分もあるかもしれない。そこで2017年の愛顔つなぐえひめ国体、2018年の選手権100回大会を契機にその方法を地に足を付けて模索したいと考えました。指導者の皆さんにとっても自分自身を見つめ直す機会になったと思いますし、ここをスタートラインにしてみんなでやっていきます」
振り返れば甲子園全国制覇は春は2004年の済美、夏は1996年の松山商から遠ざかっている愛媛県勢。2007年からの10年間で甲子園春8勝9敗・夏5勝10敗の不振を脱する絶好の機会はこれをもってない。
研修会後、指導者側・役員会両面からも「これまでにないことができた」と概して歓迎の声が聞かれた今回の試み。その先にある想いは1つ。2017年、愛媛の高校野球界は胸襟を開き、「愛媛野球復権」への道を邁進していく。
(文・寺下 友徳)
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