1月13日には磐田の新体制会見に臨んだ中村。新天地での活躍が期待される。(C)SOCCER DIGEST

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 中村俊輔がマリノスからジュビロへ移籍したね。中村には以前から移籍の噂があったけど、本当に実現して驚いている人は多いんじゃないかな。
 
 中村はマリノスでプロデビューし、2002年には海外へ活躍の場を移した(レッジーナ、セルティック、エスパニョールでプレー)。そして、2010年にマリノスに戻りクラブの顔としてチームを牽引してきた。2010年の南アフリカ・ワールドカップ後に日本代表からは引退を表明したが、その後も高い人気を誇っていた。
 
 その中村が長年在籍したマリノスを離れるんだから、耳を疑った人も多いはずだ。サポーターとしては、引退するまでマリノスでプレーしてほしいという想いだったんだろうね。
 
 移籍の背景にはクラブとの考えの相違があったという。ただ、僕は直に話を聞いたわけではないから詳しくは分からない。中村本人も公の場で、移籍の経緯を事細かに語っているわけでもないしね。
 
 もっとも、驚いている人は多いだろうけど、僕は周囲が騒ぎすぎているようにも感じるよ。中村はプロのサッカー選手として、自分が納得する環境でプレーをするという当たり前の判断をしただけだ。金銭、競技環境、周囲との関係性などを総合的に考えて、ジュビロへの移籍を決めたんだ。それを外の僕らがとやかく言う必要はないよ。
 
 確かに中村は愛着のあるクラブからの移籍に葛藤があったはずだ。でも、今後のサッカー人生のために決断をしなくちゃいけない時もある。僕らはその想いを尊重することが大事だと思う。
 
 そもそも、Jリーグには移籍という文化がしっかり根付いてないようにも感じる。海外のチームを見れば主力選手が引き抜かれるなんてザラだよ。メッシ(バルセロナ)みたいにひとつのクラブでプレーを続ける選手は稀で、クリスチアーノ・ロナウド(レアル・マドリ―)のように自らを高く評価してくれるクラブに移るのが普通だ。
 
 日本では人情などを大切にする傾向があるけど、もっとドラスティックに考え方を変えるべきだと思う。プロ選手の寿命は短く、彼らも生活がかかっているわけだからね。
 
 中村は昨季、怪我の影響もあったが、出場機会が限られていた。マリノスはモンバエルツ監督の続投が決まっていて、ベンチで燻る可能性があったわけだ。それだったら好オファーをくれた名波監督の下で、プレーをしたいと思うのは当然の流れだと感じるね。
 
 中村は今年39歳になるけど、その左足の精度はまったく錆びついていない。いまだピッチで違いを作れる存在だし、ジュビロでどんなプレーを見せてくれるのか期待だよ。マリノスからは、移籍しても最後にはクラブに戻ってこられるような“例外的な契約”を打診されたというが、本人はそれを固辞したらしい。退路を断って新天地でチャレンジするという強い想いなんだろうね。
 
 昨季は残留争いに巻き込まれたジュビロを中村がどう押し上げるのか。台風の目となるようなチームになってくれれば、来季のリーグ戦は盛り上がりそうだ。
 
 
 一方でマリノスは中村に続き、兵藤、小林、ファビオ、榎本らが移籍するなど戦力の流出が目立つ。一時は38歳の中澤にも50パーセントダウンの年俸を提示するなど若返りを図っているようだが、それが吉と出るのか、凶と出るのかは今の時点では想像がつかないね。
 
 海外クラブやフロンターレへの移籍の噂がある齋藤が抜ければさらに苦しい状況にはなるけど、扇原、松原、山中といった働き盛りの選手を補強しているし、FWには昨季のセルビアリーグで活躍した(20得点・10アシスト)ポルトガル人のウーゴ・ヴィエイラ(レッドスター)も獲得した。
 
 昨年のグランパスのように降格を予想する人もいるみたいだけど、どうなるかは蓋を開けてみないと分からないというのが率直な感想だよ。
 
 また、今オフは多くの選手が動いているから来季のJリーグがどのような勢力図になるのか楽しみだね。昨年の王者である鹿島はペドロ・ジュニオール、レオ・シルバら即戦力を確保しているし、エースの大久保と風間監督が抜けた川崎も、家長や阿部らを加えて戦力の上積みを図っている。FC東京は大久保に加え、永井、林らを獲得してタイトルを虎視眈々と狙っている。
 
 来季のJリーグは1シーズン制に戻る重要な1年なわけだし、各クラブはより奮闘し、人気を上げてもらいたい。