それを境に不安を覗かせるようになった選手。応援の音量を低下させた浦和サポーターの姿も鮮明になった。スタンドの1割にも満たない鹿島サポーターが活気づき、その他大勢の浦和サポーターが沈黙するバランスの悪いにスタジアム内の構図に、危ないムードはプンプンと漂っていた。

 ペトロヴィッチは、そのタイミングで高木に代え、再び青木を投入。第1戦と同種のより守備的な交代を行った。守る浦和、攻める鹿島。この構図を浦和の監督自らが描き出そうとした。

 かつて、ミラン等、イタリアのクラブはその方法で成功した。バルサに対して、前評判で劣りながら勝利をモノにしている。だが先述の通り、浦和対鹿島は、資金力豊富な強者と弱者の関係にある。

 ペトロヴィッチが監督に就任して丸5年。絶えず優勝候補に挙げられながら、優勝はもちろん、王者らしい振る舞いができずにいる浦和。力がありそうなのにそれができない理由は、監督のサッカーの志向性と密接な関係がある。浦和という日本を代表するビッグクラブと、ペトロヴィッチとの相性はよろしくない。なにより敗れたときに、大きな悔いが残る。格好悪く映る。

 なぜちゃんと攻めなかったのか、日本一の強者なのに、小心者のようなサッカーをするのか。ペトロヴィッチはサンフレッチェ広島の監督ではないのだ。

 敗れても、強者に相応しい王道を行く模範的なサッカーを披露したなら救いはある。浦和ファンは意気消沈しても、他のクラブのファンは浦和を陰でこっそりリスペクトする。浦和に偉大さを覚えるものだ。つまり、愛されキャラになる。全国各地に隠れ浦和ファンは、多く存在することになるだろう。いまよりはるかに。浦和はペトロヴィッチをいつまで引っ張るつもりなのか。

 ペトロヴィッチの限界を見たチャンピオンシップ決勝。鹿島の石井監督の方が、僕の目には断然上に映るのだった。