日本能率協会が経営者を対象に実施した調査によると、収益性に対する意識が強まっていることが分かった。また、優秀人材の獲得を人事の優先課題と考えていることも明らかとなった。

 調査結果によると、現在の経営課題は「収益性向上」(44.5%)が前回調査(2014年度)から8.9ポイント増加してトップとなった。

 次いで、前回調査でトップだった「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)」が39.3%(前回比0.9ポイント増)で続き、「売り上げ・シェア拡大(販売力の強化を含む)」が33.6%(同1.1ポイント減)、「新製品・新サービス・ 新事業の開発」が32.7%(同4.5ポイント増)が3割を超えた。

 その他の内容でポイントが増加したのは、「顧客満足度の向上」(5.9ポイント増、11位→7位)、「適切なコーポレート・ガバナンスの推進」(3.3ポイント増、17位→12位)などとなっている。

【現在の経営課題 トップ5】
1位 収益性向上 44.5%(8.9ポイント増)
2位 人材の強化(採用・育成・多様化への対応) 39.3%(0.9ポイント増)
3位 売り上げ・シェア拡大(販売力の強化を含む) 33.6%(1.1ポイント減)
4位 新製品・新サービス・新事業の開発 32.7%(4.5ポイント増)
5位 事業基盤の強化・再編(M&A・アライアンス・既存事業の選択を集中) 20.9%(0.9ポイント増)

 今後、事業を展開していく上で必要な人材の充足度を聞いたところ、量的な観点では51.1%、質的な観点で74.4%の企業が「不足している」(「不足している」「やや不足している」の合計)と回答した。

 組織・人事領域の課題(優先順位をつけて3つまで選択した回答割合の合計)では、「管理職層のマネジメント能力の向上」(48.8%)、「次世代経営層の発掘・育成」(45.3%)が前回調査と同じく1位、2位となった。

 3位には前回調査から15.6ポイントの大幅な伸びとなった「優秀人材の獲得」(30.8%)が入り、人事の優先課題と考える経営者が増えている。

 一方、前回調査で3位の「人事・評価・処遇制度の見直し・定着」は19.6%で、前回調査から10.6ポイント減となり、7位に順位を下げた。

 順位は高くないものの、「残業時間の適正管理・削減」(15.6%)が4.7ポイント増、「多様な働き方の導入(テレワークなど)」(9.0%)が7.0ポイント増となり、ポイントを伸ばした。

【組織・人事領域の課題 トップ5】
1位 管理職層のマネジメント能力の向上 48.8%(3.5ポイント増)
2位 次世代経営層の発掘・育成 38.4%(3.4ポイント増)
3位 優秀人材の獲得 30.8%(15.6ポイント増)
4位 女性活躍・ダイバーシティの促進 26.1%(0.4ポイント減)
5位 グローバル経営人材の育成・登用 25.6%(9.2ポイント減)

 今後(3〜5年後)の海外事業展開先として重視する国・地域は、生産拠点・販売拠点ともに「中国」がトップに挙げられ、研究開発拠点としても「北米」に次ぐ位置付けとなった。

 また、「タイ」「インドネシア」「ベトナム」といったASEAN諸国が生産拠点・販売拠点としての重視度が高かったほか、「インド」も販売拠点としての重視度の比率が高かった。

【海外事業展開先として重視する国・地域 生産拠点】
1位 中国 30.3%
2位 タイ 26.1%
3位 ベトナム 22.3%

【海外事業展開先として重視する国・地域 販売拠点】
1位 中国 44.5%
2位 北米 34.1%
3位 タイ 33.6%

【海外事業展開先として重視する国・地域 研究開発拠点】
1位 海外展開は考えていない 26.5%
2位 北米 19.9%
3位 中国 17.5%

 海外に事業展開をするうえで必要とするサポートは、「海外事業を担う人材の確保(育成・紹介)」(37.0%)、「販売先候補の紹介」(26.5%)、「進出先の政治・経済・ビジネス環境等の調査」(23.7%)、「進出先の競合企業の調査」(20.4%)が上位となった。

 調査は、2016年9月1日〜20日、日本能率協会の法人会員と評議員会社の経営者を対象に郵送で実施し、211社の回答を得た。