1〜10月の「労働者派遣業」の倒産は前年同期比8.0%増となる54件に達し、増加傾向にあることが東京商工リサーチの調査で分かった。しかし、大型倒産の発生はなく、小規模企業の倒産が増加しているのが実態だ。

 企業倒産はバブル期並みの低水準で推移しているが、労働者派遣業の倒産件数は前年同期比8.0%増に達した。

 このペースで推移すると、年間(1-12月)ベースで2013年(88件)以来3年ぶりに前年を上回る可能性が出てきた。

 負債総額も38億200万円(前年同期比8.2%増、前年同期35億1300万円)で、前年同期を上回った。

 ただ、負債10億円以上の大型倒産は発生がなく(前年同期ゼロ)、1件当たりの平均負債額は前年同期と同水準の7000万円にとどまり、小規模企業の倒産が際立っている。

 倒産の原因別では、「販売不振」が最多の35件(前年同期比9.3%増、前年同期32件)で64.8%を占めた。

 次いで、「他社倒産の余波」が8件(前年同期比14.2%増、前年同期7件)、「事業上の失敗」が6件(前年同期2件)と続く。

 従業員数別では、最多は5人未満の34件(前年同期比17.0%減、前年同期41件)だったが、前年同期より減少している。

 次いで5人以上10人未満は10件(同150.0%増、同4件)、10人以上20人未満は6件(同200.0%増、同2件)といずれも増加しており、従業員5人未満の零細事業者より5人以上20人未満の小規模事業者が前年同期より2.6倍増と増勢が目立った。

 形態別では、債務超過で企業が消滅する破産が54件(前年同期比12.5%増、前年同期48件)で、倒産企業はすべて破産だった。

 資本金別では、1000万円以上5000円未満が24件(前年同期比7.6%減、構成比44.4%)、100万円以上500万円未満が16件(同14.2%増、同29.6%)と続き、1億円以上は発生がなかった(前年同期1件)。

 1000万円未満は27件(前年同期比17.3%増、前年同期23件)と半数(構成比50.0%)を占め、資本金規模の小さい企業が目立った。

 今後の動向について東京商工リサーチでは、「2015年9月30日に改正労働者派遣法が施行され、事業者の資産要件が強化されたり、キャリアアップ支援が義務化されるなどの負担が増えたため、今後も経営体力が乏しい中小・零細規模の派遣事業者の動向から目を離せない」と分析している。