今夜3話「プリンセスメゾン」高橋一生にバターナイフをプレゼントしたい
居酒屋勤めの地味で素朴な、少女のような女性がマンションを買うため奮闘するが「プリンセスメゾン」(NHK-BSプレミアム、毎週火曜23:15〜)2話。
第1話で初めてモデルルーム見学を経験した沼越幸(森川葵)。すっかり勤め先である居酒屋の常連となった派遣の要(陽月華)に「窓からの景色が、見てみたいです」と言い、現地に観に行くことに。
いよいよ具体的になりつつある沼ちゃんのマンション購入に対し、持井不動産の面々、新人派遣スタッフのマリエ(舞羽美海)、ヘンな関西弁を駆使する若手社員の奥田(志尊淳)は要とともに居酒屋へ行き、沼ちゃんに住宅ローンについてのアドバイスを授ける。ちなみに、携帯やクレジットカードの支払いをついうっかり延滞しただけでも、ローン審査には影響があるそうだ。自然にマンション購入に関する知識が身につく……。
さて、沼ちゃんが切れ者社員の伊達(高橋一生)に案内されて観に行ったのは豪華な豊洲のタワーマンション。二度目にして恒例となった、沼ちゃんの裸足で部屋の感触を確かめるスタイルにも動じない伊達さんがとってもクールだ。景色を一望できるスカイラウンジにうっとりした沼ちゃんは、帰りに一人、「買う…」とつぶやく。
しかし、沼ちゃんが観た部屋は、すでに別の女性が検討し、「パパがお金回さなきゃいけないからぁ、どうせすぐに決められると思う」と言っていた。なのに沼ちゃんにも紹介した伊達さんにみんなが不安を抱き、「このまま勢いで買ってしまっていいのか」と心配する。しかし、再びマンションを見に行った沼ちゃんは、「すみません。このマンションは、買えません」と決断する。
ふだんはパーカーにスニーカーの沼ちゃんが二度目にマンションを観に行ったときの、着慣れないグレーのスーツ、数メートル歩いただけで脱げるヒール靴は、この身の丈にあわないマンションと同じ存在だ。「私の人生には一切無縁で、無意味なもの」「背伸びをしても、何も見えない」という、このマンションに対する沼ちゃんのコメントを、言葉以上に服装が雄弁に語っていた。
第1話のレビューでも少し触れたが、同名の原作マンガの沼ちゃんはすでにモデルルーム見学の達人で、住宅ローンも自分で組む手続きをすすめ、自分の身の丈をよく承知している。一方、ドラマの沼ちゃんは、マンションを買うという思いだけがしっかりとありながら、知識や経験はまだまだだ。一歩ずつ、葛藤しながら学んでゆく。その姿が周りに支えたい気持ちを芽生えさせ、とくに要とは友情が育まれていく。そのようすが、たった30分のドラマのなかで丁寧に描かれていて、心地よい。
本編の流れとはべつに、今回は突然のパジャマ姿を披露した伊達さん。きれいなマンション、想像通り! 整頓された部屋、想像通り! パジャマの色は無難な青、想像通り! パジャマのままご飯を食べるのはちょっと意外? と思ったけれど、シャツを汚す可能性を少しでも排除していると思えば合理的だ。
伊達さんは、部屋のドアから手だけを出して新聞を取ると、ミキサーでにんじんジュースをつくり、トーストを焼く。使っているのはポップアップトースターだ。今流行りのバルミューダのトースターには手を出していないところを見ると、堅実で、ひとつのものを長く使う性格が見て取れる。レンジにかけられないタイプの、金で縁取られた皿にトーストをのせ、わざわざココット皿にバターを二かけ取り出して、ベーコンエッグにはナイフとフォークを用意する。そして食べる。パジャマで!
なんとこの至福の伊達さん朝食シーンは二度も登場したが、日をまたいで全く同じ朝ごはんをとっているところを見ると、きっちりしているとともに、もうこれがルーティンになっているんだな、とも思う。何かが変わることを嫌うタイプなのかもしれない。2枚のトーストの、1枚にバターを塗ったあとにそれを下において、もう1枚にも先に塗ってしまう感じ、用意周到な感じが出ている。でもたぶん本人にそれを指摘したら「面倒くさがりだから先にやってしまうんです」と言うタイプじゃないだろうか。本当の面倒くさがりは絶対バターはケースから直にとるし、ベーコンエッグは箸で食べるよ! ……想像上の伊達さんに反論するという無駄な時間を過ごしながら再び伊達さんの一挙一動を眺めてみると、ひとつだけ気になるところがあった。ベーコンエッグに添えた大きなナイフでバターを塗っていたのだ。伊達さん、ここまで準備したならバターナイフで塗ろうよ。やっぱり「面倒くさがりだから」っていうのかな。でもわざわざバターを取り出しているのだから、もったいない。伊達さんにバターナイフを買ってあげたい。
余談だが、本日も続いている「シン・ゴジラ リアルタイム実況」(@shingoji_real)。そこで「冗談ポイです尾頭さん。ありえないですよ」と、「あーっ! あーっ! こんなんありかよ!」の2ツイートは前後のツイートに比べてRT数もお気に入り数も抜群に多かった。この2つ、高橋一生演じる巨災対メンバー、安田のセリフだ。伊達さんには安田の気配はまるでないが、つい安田の姿を思い出しながら2話を見返していると、要さんが沼ちゃんに住宅ローンのことを教えるために「ねえ奥田君、中森さんと連絡取れないかしら」と思いつき、手をパン、と顔の前で合わせるシーンで思わず巨災対の間准教授を思い出してしまった。
マンション購入という”手の届く”夢に向かって一歩一歩踏みしめながら進む沼ちゃん。いい部屋は見つかるだろうか。「プリンセスメゾン」3話は今夜!
(釣木文恵)
沼ちゃん、住宅ローンを知る
第1話で初めてモデルルーム見学を経験した沼越幸(森川葵)。すっかり勤め先である居酒屋の常連となった派遣の要(陽月華)に「窓からの景色が、見てみたいです」と言い、現地に観に行くことに。
いよいよ具体的になりつつある沼ちゃんのマンション購入に対し、持井不動産の面々、新人派遣スタッフのマリエ(舞羽美海)、ヘンな関西弁を駆使する若手社員の奥田(志尊淳)は要とともに居酒屋へ行き、沼ちゃんに住宅ローンについてのアドバイスを授ける。ちなみに、携帯やクレジットカードの支払いをついうっかり延滞しただけでも、ローン審査には影響があるそうだ。自然にマンション購入に関する知識が身につく……。
身の丈に合わないスーツとマンション
さて、沼ちゃんが切れ者社員の伊達(高橋一生)に案内されて観に行ったのは豪華な豊洲のタワーマンション。二度目にして恒例となった、沼ちゃんの裸足で部屋の感触を確かめるスタイルにも動じない伊達さんがとってもクールだ。景色を一望できるスカイラウンジにうっとりした沼ちゃんは、帰りに一人、「買う…」とつぶやく。
しかし、沼ちゃんが観た部屋は、すでに別の女性が検討し、「パパがお金回さなきゃいけないからぁ、どうせすぐに決められると思う」と言っていた。なのに沼ちゃんにも紹介した伊達さんにみんなが不安を抱き、「このまま勢いで買ってしまっていいのか」と心配する。しかし、再びマンションを見に行った沼ちゃんは、「すみません。このマンションは、買えません」と決断する。
ふだんはパーカーにスニーカーの沼ちゃんが二度目にマンションを観に行ったときの、着慣れないグレーのスーツ、数メートル歩いただけで脱げるヒール靴は、この身の丈にあわないマンションと同じ存在だ。「私の人生には一切無縁で、無意味なもの」「背伸びをしても、何も見えない」という、このマンションに対する沼ちゃんのコメントを、言葉以上に服装が雄弁に語っていた。
第1話のレビューでも少し触れたが、同名の原作マンガの沼ちゃんはすでにモデルルーム見学の達人で、住宅ローンも自分で組む手続きをすすめ、自分の身の丈をよく承知している。一方、ドラマの沼ちゃんは、マンションを買うという思いだけがしっかりとありながら、知識や経験はまだまだだ。一歩ずつ、葛藤しながら学んでゆく。その姿が周りに支えたい気持ちを芽生えさせ、とくに要とは友情が育まれていく。そのようすが、たった30分のドラマのなかで丁寧に描かれていて、心地よい。
伊達さんのパジャマ姿!!!
本編の流れとはべつに、今回は突然のパジャマ姿を披露した伊達さん。きれいなマンション、想像通り! 整頓された部屋、想像通り! パジャマの色は無難な青、想像通り! パジャマのままご飯を食べるのはちょっと意外? と思ったけれど、シャツを汚す可能性を少しでも排除していると思えば合理的だ。
伊達さんは、部屋のドアから手だけを出して新聞を取ると、ミキサーでにんじんジュースをつくり、トーストを焼く。使っているのはポップアップトースターだ。今流行りのバルミューダのトースターには手を出していないところを見ると、堅実で、ひとつのものを長く使う性格が見て取れる。レンジにかけられないタイプの、金で縁取られた皿にトーストをのせ、わざわざココット皿にバターを二かけ取り出して、ベーコンエッグにはナイフとフォークを用意する。そして食べる。パジャマで!
なんとこの至福の伊達さん朝食シーンは二度も登場したが、日をまたいで全く同じ朝ごはんをとっているところを見ると、きっちりしているとともに、もうこれがルーティンになっているんだな、とも思う。何かが変わることを嫌うタイプなのかもしれない。2枚のトーストの、1枚にバターを塗ったあとにそれを下において、もう1枚にも先に塗ってしまう感じ、用意周到な感じが出ている。でもたぶん本人にそれを指摘したら「面倒くさがりだから先にやってしまうんです」と言うタイプじゃないだろうか。本当の面倒くさがりは絶対バターはケースから直にとるし、ベーコンエッグは箸で食べるよ! ……想像上の伊達さんに反論するという無駄な時間を過ごしながら再び伊達さんの一挙一動を眺めてみると、ひとつだけ気になるところがあった。ベーコンエッグに添えた大きなナイフでバターを塗っていたのだ。伊達さん、ここまで準備したならバターナイフで塗ろうよ。やっぱり「面倒くさがりだから」っていうのかな。でもわざわざバターを取り出しているのだから、もったいない。伊達さんにバターナイフを買ってあげたい。
余談だが、本日も続いている「シン・ゴジラ リアルタイム実況」(@shingoji_real)。そこで「冗談ポイです尾頭さん。ありえないですよ」と、「あーっ! あーっ! こんなんありかよ!」の2ツイートは前後のツイートに比べてRT数もお気に入り数も抜群に多かった。この2つ、高橋一生演じる巨災対メンバー、安田のセリフだ。伊達さんには安田の気配はまるでないが、つい安田の姿を思い出しながら2話を見返していると、要さんが沼ちゃんに住宅ローンのことを教えるために「ねえ奥田君、中森さんと連絡取れないかしら」と思いつき、手をパン、と顔の前で合わせるシーンで思わず巨災対の間准教授を思い出してしまった。
マンション購入という”手の届く”夢に向かって一歩一歩踏みしめながら進む沼ちゃん。いい部屋は見つかるだろうか。「プリンセスメゾン」3話は今夜!
(釣木文恵)