短い人生、この世を謳歌することをなによりも大事にしていた江戸っ子たち。
遊びの天才だった彼らの生活には、私たちが現在楽しんでいるものの原点が、多く存在します。相撲に歌舞伎、食い気に色気。そして江戸っ子の日常に必ずあったもの……それは「洒落」でした。

今でも東京にある「地口行灯」(写真/mai)



「地口(じぐち)」というものをご存知でしょうか。
落語のオチなどでもよく使われる、語呂合わせや駄洒落の延長でできた言葉です。

有名なものには、こんなものがあります。
「驚き桃の木山椒(さんしょ)の木」
「けっこう毛だらけ猫灰だらけ」
皆さん、一度くらいは聞いたり、言ったりしていますよね。

こうした「地口」を含んだ会話は、江戸っ子がなによりも得意とするものでした。
あまりにも好きだったため、行灯(あんどん)に絵をかいて地口を添える、「地口行灯」というものを飾るのが流行したほど。
今でも、東京にある稲荷神社ではこの「地口行灯」を下げるところがあります。

それでは、選りすぐりの地口を、ご紹介しましょう。

「その手はくわんぞ!」と言うときは、「その手は桑名の焼き蛤!」。
桑名は焼き蛤で有名な場所だったのですね。
「びっくりした」ときは、「びっくり下谷(したや)の広徳寺(こうとくじ)」。
「どうぞかなえて暮れの鐘」「情け有馬の水天宮」……。

いかがでしょうか。この韻を踏んでいる気持ちよさ、なんだかヒップホップの原点のような気がしませんか?

一度頭に残ったら、言わずにはいられなくなる「地口」。
きっと、次に驚いたときには「びっくり下谷の広徳寺」、ついつい口に出してしまいますよ!

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は、「江戸のヒップホップ・地口」として、2015年10月7日に放送しました。

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<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
放送日時 :毎週月〜木曜15:00〜16:50
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