【Q&A】優秀人材に能動的に声がけする採用手法「ダイレクト・リクルーティング」とは/HRレビュー 編集部
総務省発表の平成26年度版情報通信白書によれば、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は2013年時点で実に32年ぶりに8,000万人を下回り、今後の推計では2020年に7,341万人、2030年には6,773万人にまで減少すると予測されています。労働人口が減少する日本において、企業経営における優秀人材確保の重要性は一段と高まり、人材の獲得競争・育成競争の時代を迎えると予想されます。
このような時代において、企業の競争力・成長力を維持・伸長するためには、優秀な人材の応募や紹介を“待つ”だけでなく、能動的に採用活動を行う企業側の自助努力が必要となります。そこで「求人広告」「人材紹介」に次ぐ新たな採用手法として注目されているのが「ダイレクト・リクルーティング」です。
しかし「ダイレクト・リクルーティング」とはいったいどのような採用手法なのでしょうか? まだ「ダイレクト・リクルーティング」を本格的に運用したことがない採用担当者向けに、その仕組みをQ&A形式でご紹介します。
Q&A
Q.そもそも「ダイレクト・リクルーティング」とはどんな採用手法なのでしょうか?
A. 「ダイレクト・リクルーティング」とは、人材紹介会社や求人広告、人材データベース(転職データベース)、SNS、自社Webサイト、ハローワークなど、さまざまな媒体を戦略的・包括的に活用して採用の基点となる母集団を形成し、そのなかの優秀な人材に能動的に声をかけることによって、たとえその時点で自社への転職意欲が低かったとしても、メール・電話による直接のやりとりや「面談」を活用して転職意欲を高め、最終的に内定承諾を促す採用手法です。
応募や紹介を受動的に“待つ”だけでは採用が難しい優秀層と接点を持てるのが、「ダイレクト・リクルーティング」の特長です。近ごろはさまざまな企業が「ダイレクト・リクルーティング」サービスの提供を始めていますが、「ダイレクト・リクルーティング」サービスにとってもっとも重要なのが、その母集団たる「人材データベース(転職データベース)」の質です。人材データベース(転職データベース)に登録された優秀な人材が少なければ、スカウトするにしても、その努力のほとんどが徒労に終わってしまうのです。「ダイレクト・リクルーティング」サービスも、やみくもに利用するのではなく、「人材データベース(転職データベース)」の質をしっかり見極めてから利用することをおすすめします。
Q. 「ダイレクト・リクルーティング」を利用した採用活動の流れは?
A. 「ダイレクト・リクルーティング」の具体的な活用方法は、各企業・各組織が持つ採用課題によって異なりますが、一般的には、内定まで以下のように進みます。
- 人材要件の決定(必要なスキル・経験、キャリアの志向性などをできるだけ明確にイメージして決める)
- 母集団の形成(人材紹介、求人広告、人材データベース(転職データベース)など、採用課題に合った媒体を活用する)
- 候補者の選出
- 「面談」による自社への転職意欲上げ(必要な場合のみ)
- 面接
- 内定
- 内定承諾
上記は内定までの一般的な流れですが、「優秀人材だが、現在この人に合うポジションが空いていない」「他社でもう少し経験を積んだら採用対象になる」「候補者側からの内定辞退」など「お断り」の場面もあります。しかしそのような場合も、採用活動をそこで完結するのではなく、「タレントプール」と呼ばれる候補者データベースを自社に構築することをおすすめします。「タレントプール」は、半年、1年など定期的に見なおし、「お断り」した(された)人材に継続的にコミュニケーションをとっていくことによって、のちの採用活動に大きく貢献する可能性があります。大げさな仕組みを用意しなくても、最初はExcelによる管理でもかまいません。優秀な人材との接点が面接終了時点で失われるのは非常にもったいないことだという認識が重要です。
詳しくは「優秀人材は2〜3年かけて口説くことも。人材採用の革命的手法『タレントプール』という考え方」をご参照ください。
Q. 「人材データベース(転職データベース)」とは?
A. 「人材データベース(転職データベース)」には、ヘッドハンターや人材紹介会社が企業へ紹介する候補者を選出する際に活用する、求職者の情報を収集・管理・検索できるデータベースと、社員紹介(リファラル・リクルーティング)による採用活動を社内向けに管理、サポートするデータベースがあります。近年は、ヘッドハンターや人材紹介会社が活用していたデータベースを企業向けに公開しているサービスもあります。「ダイレクト・リクルーティング」サービスは、この「人材データベース(転職データベース)」とイメージされる場合が多いようです。
Q. 候補者の転職意欲を高めるための「面談」はどのように行うのですか?
A. 「ダイレクト・リクルーティング」では、メールや求人媒体の管理ツール上でのこまめなやりとりに加え、「面談」と「面接」を使い分けることによって候補者の転職意欲を高め、内定承諾へとつなげていきます。「面接」は転職意欲の高い候補者に対し見極めを行う場として利用しますが、「面談」は企業と候補者は対等な関係で、お互いの理解を深める場として活用します。「面談」では、企業は気になる候補者に自社の魅力をアピールし、選考ステップに進んでもらうため、候補者に合った自社の人材に会ってもらうなど、さまざまな工夫をします。
詳しくは「『面談』と『面接』を使い分ければ、母集団の数と質を飛躍的に改善できる」をご参照ください
Q.「ダイレクト・リクルーティング」はどのような企業に必要ですか?
A. 「ダイレクト・リクルーティング」は、大手企業から中小・ベンチャー・地方企業まで、すべての企業が活用できる採用手法です。特に、「人材データベース(転職データベース)」を活用したダイレクト・リクルーティングであれば、地方企業にとってこれまで難易度の高い課題であった県外や首都圏に住む優秀人材の採用も不可能ではなくなります。もちろん、面談や面接までのやりとりや現地までの物理的な課題をフォローするための工夫は必要となりますが、そうした手間こそが最後には内定承諾という結果として表れるでしょう。
Q. 最近よく聞く「リファーラル・リクルーティング」とは?
A. 「リファラル・リクルーティング」は、社員紹介による採用活動のことを指し、昔でいうところの「縁故採用」と基本的には変わりません。ただし、現在の「リファラル・リクルーティング」は、さまざまな支援ツール、SNSや人材データベース(転職データベース)の活用により、優秀な人材に声がけをしていくことが容易になりつつあります。以前のように、社内イントラに告知をして「縁故採用」キャンペーンを仕掛けるのではなく、社員が実際に友人・知人を紹介するためのツールが用意されているのです。
優秀な人材に声をかけることで接点をつくり、そこから自社への転職意欲を高めていくという点で、この「リファラル・リクルーティング」も「ダイレクト・リクルーティング」の一つであるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「ダイレクト・リクルーティング」は、職務経歴書を公開する習慣のある欧米では当たり前の採用手法ですが、日本ではまだまだ活用されていません。しかし、すでに活用している企業は優秀な人材を確保できている可能性があります。「LinkedIn」「ビズリーチ」「MIIDAS」「GLOVER Refer」など、さまざまな「人材データベース(転職データベース)」が日本でも活用され始めています。これまでの「求人広告」や「人材紹介サービス」に加え、「ダイレクト・リクルーティング」という新たな採用手法によって、自社に優秀な人材を確保し、これからの人材獲得競争時代を勝ち抜いてください。
文:望月美奈子