猪口 真 / 株式会社パトス

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チームメンバーの全員が戦略や企画を実行している様子というのは、どのような状況を指すのだろうか。

下のグラフは、都市圏のビジネス・パーソン1000名の役職者に対して、「チームメンバーの戦略や企画案を実際に計画し、実行する力(優れている、あるいは劣っていること)はどのようなところに表れていると感じますか」という質問を投げかけた結果だ。

併せて、自分の組織の業績についても聞いており、「増収増益」「減収減益」「維持」の3つの場合を抽出してみた。

まず、さほど大きな差があるわけではないが、「忙しくて手が付けられない」という意見が、減収減益組織の特徴のひとつであった。

実際に調べたわけではないが、増収だろうが減収だろうが、業務の忙しさには大きな差はないというのが私の考えだ。よく「仕事は間延びする」という。2人でやっていた仕事を3人でやると、元の2人の忙しさは何も変わらず、3人になっても、2人のときと同じアウトプットしか出ないという意味だ。

もちろん、忙しさというのは主観的なものなので、成果が生まれない人ほど「忙しい」を連発するものだが、結果の出ていない組織では、実際に業務プロセスや組織構造に無駄が多く、無用な労働を強いられているケースは少なくない。この「忙しさ」が本当にやるべき仕事を邪魔してしまうのだ。

増収増益組織に特徴的なのは、これはあたりまえなのだが、「実行している」2つの答え、「指示もないのに実行される」「具体的な指示があれば実行する」の2つだ。

特に、「指示もないのに実行される」という、すべてのリーダーが理想とするようなチームと言える。その値は、成果の有無で2倍以上の差が生まれている。

やはり、増収増益という結果を出す組織には、自ら動く、あるいは指示のもとであってもしっかり行動するという状況が見て取れる。

重要なのは、実行を邪魔する多くの理由、「できない理由のオンパレード」「計画力や段取り力の欠如」「新しい戦略に対するあきらめ」「アイデア賛成、行動せず」などの障害は増収増益組織でも同じように存在していることだ。そこには大きな差はない。(むしろ増収増益組織のほうが上回っているものもある)

完璧な組織などほとんど存在しない。どのような組織にも問題が山積している。しかし、そういった問題があっても、決めた戦略を何があっても実行するという決意と文化が、チームメンバーを実行へと駆り立てている。

要は、問題の多さではなく、実行する文化ああるかどうか、問題があろうが実行するメンバーが確実にいるかどうか、ということだ。

それから、減収減益組織における特徴としては、「アイデアの具体性の欠如」がある。アイデアそもそものできが悪いということになる。

当然アイデアのクオリティが低かったり、具体性に欠けたりしていると行動には結び付きにくくなる。たとえば「お客さまの本当のニーズをつかむ活動に集中する」というアイデア(らしきもの?)が出て、みなが「それがいい」となったとしても、実際には何をやっていいかわからず、あいまいなまま過ぎ去ってしまう。

間違いではないだけに、特に反対意見も生まれず、とはいえ内心では「またいつものスローガンだ」と思っていても会議は終わり、何も実行されずまた次の会議を迎える、といった状況なのだろう。

アイデア自体の問題についても同様の調査結果を見てみよう。

上半分がポジティブなもの、下半分はネガティブなものだが、増収増益組織と減収減益組織とでは、はっきりと傾向が表れている。

上になるほど、増収増益組織の数値が高く、下になるほど減収減益組織が増加する。

アイデアの量、質、具体性、すべてにおいて、増収増益組織が上回っている。

恐ろしいのは、減収減益組織では、「何を指示してもアイデアがほとんど出てこない」と答えるリーダーが、20%近くいるということだ。これでは、当然具体的な戦略がメンバーから生まれることはなく、リーダーが指示を出すことになってしまう。そして、人から言われた戦略など、誰も従うはずもなく、結果、何も生まれない組織となってしまうだろう。

当たり前の話だが、アイデア(戦略)と行動力・実行力、この2つがそろって初めて組織は成果を生むのだ。