泉本 行志 / 株式会社アウトブレイン

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君はセラピストにでもなったつもり?」

新米コンサルタントのときに、上司に言われた一言。

このときに思ったのは、


「どんなにやる気と誠意をもって臨んでも、
技術がないと、仕事を進められない」

ということ。

コンサルタントと称する職でなくても、
営業でもSEでもデザイナーなどでも
クライアントの要望を把握するために、
ヒヤリングを実施することはよくあると思います。

このヒヤリングっていうのは結構おもしろくて、
質問に対して最低限のことしか話さない寡黙な人もいれば、
機関銃のように話が止まらない人、
要望を聞いてるのに、不平・不満ばかり言い出す人など、
いろんな人がいます。

ヒヤリングする相手が、日ごろから頭の中が整理されて、
理路整然に説明できる人だと、ヒヤリングする側は助かりますが、
そんな人は稀な方です。

通常は、いろいろなテーマのさまざまなレベルの話を区別せず、
思いつくままに話をしてくるので、下手をすると話の筋を見失います。
もちろん、それを上手く整理してあげることが、我々のバリューの1つですが。

以前一緒にプロジェクトをした若手コンサルタントは、
こういったヒヤリングを行い、相手の話す「要望」を漏れなく書き取り、
それを一覧化して、整理していました。
そして、すべての要望をうまく集約して、それに対する解を提案しようと、
奮起していました。
でも、その意欲に反し、事はうまく進まず、行き詰まっていました。

そんな姿を横で見ていて、自分が新米コンサルタントだったときの姿とが
重なり合いました。

当時、新人として何とか自分自身の価値を提供しようと、
クライアントが発した要望全てを必死にメモって、
その要望を満たすような解決方法を提案しようと考えていました。

そのとき上司から冒頭の言葉、

「君はセラピストにでもなったつもり?」

最初、言われている意味が分からず、
「この人何っているんだろう?」と思いました。

続けて言われたことは、

「話をただ頷いて聞いてあげて相手を喜ばせるだけじゃ、
コンサルとしての価値ないでしょう。」

「クライアントの要望を丸呑みして、そのまま帰ってくるんじゃだめだ。
その要望の先にある真の目的を突き止めなさい。
手段と目的を区別し、要望が単なる手段に過ぎないなら、
目的を押さえて、その実現手段を検討すべきだろう。」

言われてみればその通り。
全ての要望を取りまとめても、やるべきことは見えてこない。
相手の話すことすべてを並列に並べても、
何も見出すことはできない。

相手が要望と称して話をしている内容を
そのまま受け取るのではなく、その先にある目的に意識を向ける。
真の目的を読み取って初めて、解決策を検討して提案することができる。

こういった話は、頭で理解していたつもりでしたが、
実際の体験を通じて、その本当の意味を体で理解できた瞬間でした。

みんなこういう体験を積み重ねて、学んでいくんですね。。