猪口 真 / 株式会社パトス

写真拡大 (全3枚)

チーム・リーダー(または現場リーダー)が自分自身の実行力をどのように評価しているのかを見てきたが、この評価が現実の業績とどのように関連しているのだろうか。

普通に考えれば、実際に業績を上げているリーダーのほうが、自分自身の実行力に対する評価も高いということが予測できるが、本当にそうなのだろうか。

次のグラフは、自分自身に対する評価を、増収増益の組織と減収減益の組織に分けて表示してみた。

当然ながら、増収増益組織の「自分の実行力は十分にある」と考えるリーダーは、減収減益組織のリーダーの倍以上である。

しかし、それ以外に関しては、さほど大きな違いはない。前回述べたように、約6割のリーダーは、自分に行動力・実行力はあると認識しており、「たまに感じることがあるが普段は感じない」と考えるリーダーが、減収減益組織の場合のほうが若干多いのが目につく程度だ。

そういう意味では、現在よく言われる「勝ち組と負け組が両極になっている」という現象の割には、業績の良し悪しとリーダーの自分自身への評価の差においてはたいした変化はないと言える。

続いて、自分のチームメンバーに対する「行動力・実行力」の評価を見てみよう。次のグラフは、チームメンバーに対する評価を、増収増益の組織と減収減益の組織に分けて表示してみた。

おもしろいことに、さきほどの結果とは違い、業績の良し悪しによって、大きな違いが見て取れる。

増収増益組織のリーダーは、6割以上が「自分のチームの行動力・実行力は十分にある、または、ある」と答えているのに対して、減収減益組織のリーダーは、逆に6割以上が、「普段は感じない、または、ない」と答えている。

つまり増収増益組織のリーダーは、自分自身に対してもチームメンバーに対しても同様の評価をしており、自分も含めたチームメンバー全員の行動力・実行力が、好業績につながっていると認識していると考えられる。しかし、減収減益組織のリーダーは、自分への評価とは違い、チームメンバーへの評価が低くなる、つまり、自分は行動しているにもかかわらず「チームメンバーが動いてくれない」と嘆いているリーダーが多いのではないか。

減収減益となる組織には、さまざまな原因があることは承知している。業界自体の構造不況、組織としての戦略、マーケティングの失敗、本当の意味での人材不足、バリューチェーン/サプライチェーンにおける明らかな欠陥など、どれかひとつでも致命的な欠陥があるだけで、組織が増収増益となることは難しい。

しかし、リーダーとして、減収減益の原因を自分自身ではなく、チームメンバーの行動力・実行力の不足に求めているならば、その組織/チームが減収減益になるのは当然の帰結だろう。また、裏を返せば、減収減益組織の中でも、チームメンバーの行動力・実行力は、「ある」と答えたリーダーであれば、戦略次第では、浮上の可能性が高いと考えてもいいかもしれない。

あなたの周囲にも「自分は日々忙しく動き回っているのに、部下が動いてくれない」と言っているリーダーはいないだろうか。

そして、当然そうしたリーダーに対するチームメンバーからの評価は、かなり低いものとなるのも容易に想像できるし、そうした言動をあなたも頻繁に見聞きするだろう。

自分への評価が低い約4割のリーダー、そして、自分への評価よりもチームメンバーへの評価を低くつけた約2割のリーダー(全体分母の中では約1割)、つまり全体でも約半数のリーダーが行動力・実行力に問題を抱えていることになる。

今回の調査で、自分の組織は増収であると答えたリーダーが、約4割いたことを考えれば、この数値の一致は単なる偶然とは思えない。

次は、行動力・実行力がある状態というのは、どのような状態を指すのか、こちらもアンケート調査結果を使って考えてみたい。