HRレビュー 編集部 / 株式会社ビズリーチ

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採用において苦労することの一つが、候補者の母集団形成です。特に知名度の低い中小・ベンチャー企業は待っているだけでは候補者は集まりませんし、候補者が少なければ、優秀な方と会うチャンスがさらに少なくなります。

質の高い候補者をより多く集めるためには、採用したいと思う人材に企業から積極的に声をかける必要があります。今すぐ転職しようと考えていない人も含め、なるべく多くの人に直接声をかけます。このように、企業が主体的に求職者に直接アプローチして採用活動を進めることを「ダイレクト・リクルーティング」といいます。

「ダイレクト・リクルーティング」を実践し、優秀な候補者に直接アプローチをすれば、一定の母集団が作れます。しかしこの時点では、まだ転職する気がない候補者も多数含まれています。そうした候補者の転職意向を引き上げ、お互いの魅力を理解するのに有効な手段が「面談」です。

採用の場でよく行われているのは「面接」だと思いますが、「面談」と「面接」は、どう違うのでしょうか。

採用においては、一般的に次のような区別をしています。

面接

応募者の見極めを行う場。応募者にとっては、企業に自分自身を理解してもらい、職務に対する意欲をアピールする。

面談

企業と候補者が対等な関係で、お互いの理解を深める場。企業は、気になる候補者に自社の魅力をアピールし、選考ステップに進んでもらうことを目指す。

自社の魅力をまだ知らない候補者をいきなり面接に誘っても、候補者に興味がなければまず来てもらえませんし、たとえ面接を行えたとしても、途中で辞退されることも少なくありません。その点、選考ではない「面談」の誘いなら、「気にしていなかった会社だけれど、まずは一度話を聞いてみよう」と前向きな気持ちで来てくれる可能性があります。

知名度が低い会社でも、候補者と会うことさえできれば、自社の魅力を直に伝えて転職の意欲を高められる可能性があります。また、面談で会うことにより、メールやレジュメなどの書面だけではわからない候補者の人柄を知れます。このように、「面接」の前に「面談」を取り入れることで、優秀な候補者の転職意欲を引き出し、母集団の質を高められるのです。


効果的な面談方法とは

では、具体的にどのような「面談」が効果的なのでしょうか。「面談」を行ううえで、もっとも重要なのが、面談担当者の割り当てです。

面談担当者の割り当て

候補者に企業の魅力を効果的に伝えられる社員や役員をタイミングよく任命する

「面談」の目的は「自社の魅力を効果的に伝え、候補者の転職意欲を高めること」です。ここで、面談担当者に求められるのは、候補者に自社のファンになってもらえるよう説得するコミュニケーション力です。

人事担当者が面談を行うこともできますが、候補者の役職や経験が上になるほど、相手にとって魅力的に映る説明をするのは難しくなるので、場合によっては、経営者や事業責任者、現場のトッププレイヤーなどに参加してもらうとよいでしょう。

また、採用においては常に先を読み、候補者の関心を引くことが大切です。これは、面談前のメール送信で一工夫するのが有効です。そのコツをお伝えします。


面談前のメール文面例

××様
お世話になります。
△△社採用担当の▼▼と申します。
このたびはスカウトメールにご返信くださり誠にありがとうございます。
早速ではございますが、弊社COOの■■との面談日程を調整させていただきたく存じます。
COOの■■の経歴はこちらをご覧ください。
http://△△sha.co.jp/recruit/■■
面接ではなく、ざっくばらんにお話させていただく場ですので、
職務経歴書などのご用意は不要です。
(もし面談ではなく面接をご希望でしたら、ご意向に沿って調整させていただきます)
〜以下省略〜

候補者に興味を持ってもらえそうな社員や役員を面談担当者に割り当てたら、メールでその社員や役員の情報を先に伝えます。たとえば、コーポレートサイトの社員紹介ページや、その社員の魅力が伝わる取材記事などへのリンクがあれば、候補者も簡単に見られて便利です。そうしたページがない場合は、自己紹介の資料をお送りするだけでも、候補者の関心を引くことができます。

同時に、「面談」は選考の場ではなく、カジュアルな情報交換の場であることをはっきりと伝えることも大切です。このようにすることで、候補者の心理的な負担を減らし、面談への参加意欲を高めるのに効果的です。また、面談設定のタイミングは、面接前はもちろんですが、一次面接や二次面接のあいだなど選考の途中でも、候補者の状況に合わせて設定します。

次に、「面談」の具体的な流れをご紹介します。


「面談」の具体的な流れ

1 アイスブレーク(雰囲気づくり)

面談時にも、まずは選考の場ではないことをはっきりと伝え、候補者が構えずリラックスして話せる雰囲気づくりをします。


2 自己紹介・自社紹介

雰囲気づくりができたら、次は自己紹介、自社紹介です。面接と大きく違うのは、企業側から先に候補者に話をするということです。心理学では「自己開示の返報性」といい、自己開示をされた受け手は同程度の自己開示をするといわれています。そこで、まずは企業側から候補者へ歩み寄り、候補者も本音で話しやすくなるように努めましょう。

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また、企業の魅力の伝え方は、対面で話すだけではありません。オフィスを案内したり、会社紹介の動画を見せたり、会社説明用の小物を用意したり、さまざまな方法がありますので、効果的な手段を選んでください。


3 候補者のキャリアなどの確認

そして、候補者のお話をうかがいます。過去・現在・未来のキャリアや、働くうえで大切にしていることなど、お話をうかがいながら、自社の価値観と合うか、本当に求めている人材かどうかを探ります。


4 質問タイム

候補者からの質問を受け付けます。これにより、候補者の志向性を把握できます。また、その質問に対する面談担当者の答え方次第で、候補者の意欲を高めることも、低めることもできます。

たとえば、「御社では皆さん何時頃まで働いていますか?」という質問に対し、優秀な候補者には「月末などは遅くなることもありますが、皆やらされている感じはありません。なぜなら当社の理念は……」と企業理念で答えると、候補者の共感を得やすく、意欲をかきたてられます。

反対にお見送りしたい候補者には「いつも終電前になっていますね」など、あえて魅力的に映らないように返します。


5 社内の人材をティーアップ(また会いたいと思わせる)

面談を通じて候補者に次のステップへ進んでもらいたいと判断したら、次に会ってもらう予定の社員の魅力を語るなどし、「次の人にも会いたい」「また来たい」と思ってもらうことが重要です。次回への期待感を高めてもらいます。


まとめ

「面談」を実施するとそのぶん工数がかかりますが、優秀な転職潜在層にアプローチでき、自分たちの働きかけ次第で転職意向を引き上げることが可能です。優秀な人材の採用に成功している企業の多くは、候補者の状況によって「面接」と「面談」を使い分けています。母集団の質にお悩みの方は、無駄な時間と思わず、「面接」とは別に「面談」を実施してはいかがでしょうか。

(文:HRレビュー編集部 高梨茂)

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