実行するビジネス・パーソンは何が違うか ?リーダーは自分の実行力をどう評価しているのか?/猪口 真
チーム・リーダー(または現場リーダー)は自分自身の実行力をどのように考えているのだろうか。
都市圏に在住で役職を持つ(主任以上)ビジネス・パーソン1,000名に、少し抽象的ではあったが、「業績を伸ばすにあたって、自分の実行力・行動力は十分だと感じますか」と聞いてみた。
その結果を見ると、全体では約6割のビジネス・パーソンが、「ある」(「十分にある」「十分ではないがある」を合算)と答えている。
この6割を高いと見るか低いと見るかは、いろいろな観点があると思うが、むしろ、「普段は感じない」「まったくない」が4割もいるのかという実態のほうがショックだ。
日本人特有の「謙遜さ」がこの答えに表れているということも言えなくもないが、本人の実行への意思とは反して、実行を阻む文化、しきたり、慣習が存在していると考えるビジネス・パーソンがいるのも事実だろうし、自分の力のなさが、業績に反映してしまったと素直に振り返っている人もいるだろう。
ただし、そうした文化的、価値観的な要因があるにせよ、この「実行力」の欠如は、組織として結果が出ない大きな要因のひとつであることは間違いないだろう。
そして、「実行力」のない(あるいは感じていない)役職者というのは、いったい何なのだろうか。何をしに会社に毎日行っているのだろう?という疑問を生むことになる。
「ある」答えたビジネス・パーソンの内訳を見てみよう。
「十分にある」が12.5%、「十分ではないがある」が47.8%だ。逆の見方をすれば、「実行力はあるが十分ではない」と考えるビジネス・パーソンが約半分だということになる。
ということは、約9割のビジネス・パーソンが、「自分の実行力は十分ではない、「実行力はあるが十分ではない、あるいは実行力はない」と考えていることになる。
これはどういうことだろう。
当然、仕事は行動しなければ成果を生み出すことはない。自分なりの戦略や計画を持ち、実行を重ね、いろいろチャレンジしたが業績は上がらなかったというのであれば、それはある意味戦略の失敗や組織の持つ商品力のなさ、マーケティングやシステムの不備がもたらしたことだと言えるかもしれないが、はなから約9割のビジネス・パーソン(しかも主任以上!)が、「自分の実行力は十分ではない」と考えているとしたら、それこそ結果が出るなど、夢のまた夢だろう。
「実行力が十分ではない」というのはどういうことだろうか。
「実行」という言葉のイメージには、「自ら考え、自ら動く」というニュアンスが含まれる。通常、上司からの指示事項やミーティング、他部署との調整事項といったルーティンワークばかりの毎日を過ごしている人にとっては、「自分は実行している」という実感はつかみにくいのかもしれない。
今の管理職、役職者は、業種、職種にかかわらず本当に忙しい。若手社員は思うように採用できず、人手不足は顕著だ。ルーティンになっている仕事だけで手いっぱいの状態なのだろう。そうした状態の中で、「あなたには実行力があるか」と聞かれても、「あまりない」と答えるのが精いっぱいなのかもしれない。
経営者からすれば、役職者たるや「自分で考え、自ら実行する」ものだと認識している。(だからこそ役職を付与しているとの思いだろう)
そして、業績を伸ばすために新たな戦略を生み出し、とまでは言わずとも、自分自身で成果が生まれるバリューチェーンやプロセスを考え、現在のシステムの中で改善点を見つけ、ポーターの言う「業務効果」という価値を生み出してほしいと心から願っている。
(これを「実行(Execution)」と呼ぶこともある)
忙しいリーダーは、ルーティンの中での様々なイレギュラーな仕事に日々腐心している。役職者ともなれば、仕事の関与者は多い。他部門や部下など、実はさほど重要ではないような仕事に振り回されている。
実際、忙しすぎて手が回らないという管理職や役職者は多いが、むしろそうした仕事に自ら身を置いていると言ったほうが正しいかもしれない。
しかし、約9割のビジネス・パーソンが、「自分の実行力は十分ではない」と考えている状態はどう考えても健全ではない。
主任以上の役職者が、主体的に仕事ができていない状態は、組織の抱える大きな問題だろう。
次回は、この「実行意識」が、業績とどう関連しているのかを考えてみたい。