「イジメで自殺、はマスコミにやられる」<br />これが教師の「隠蔽体質」を生んだ
福岡県筑前町の町立三輪中2年の男子生徒、北海道滝川市の小学校6年生の女児の「学校でのイジメ」による自殺が連日マスコミをにぎわせている。そして、学校側はイジメが原因で自殺したことを「認めない」、さらに「隠蔽」しようとしている。それはどうしてなのか。
ある教育委員会関係者は、J-CASTニュースの取材に対し、こうした「イジメが自殺の原因ではない」としたがる学校側の対応は、マスコミの目を気にしていることが大きいと話す。
いじめ自殺でなければ、教師の処分や昇進に影響しない
この関係者は、自身が教員時代に教え子を自殺で亡くした経験がある。進学に悩んでの自殺だった。マスコミの興味は呼ばないようで、どこも報道しなかった。
「自殺を止められなかったのは、もちろん我々教師の責任。重く受け止めショックも大きく今でも凄く悔しい思いを感じています。ただ、生徒の自殺が教師の処分や昇進に影響することは少ない。でも、イジメで自殺したとなれば全然変わってきます。その原因はマスコミ報道なんです」
1986年に中野区立中野富士見中学2年の男子生徒が「このままじゃ、生きジゴクになっちゃうよ」と遺書を残して自殺した。学校で教師も関わった「葬式ごっこ」が衝撃的なイジメ自殺として連日大きく報道され、関わった教師や関係者が報道で丸裸にされた。
「イジメ自殺はマスコミの餌食になり、重大な責任を取ることが求められる。それが中野富士見中学の件でわかり、極端に恐れるようになったんです」
帰宅できるのは、電話が少なくなる午前零時頃
福岡県筑前町にはイジメ自殺のニュースが出るやいなやマスコミが大挙して押し寄せた。イジメに関わったとされる教師の情報が氾濫。クラスの生徒を成績に応じ、イチゴの品種になぞり「あまおう」「とよのか」「出荷できないイチゴ」と呼んだことや、書道の時間に太っている女生徒に「豚」と書かせたなど報道された。ネットでは関わった教師への批判だけでなく、実名と思われるイジメた生徒の名前や、三輪中校長室の直通電話番号なども出た。
J-CASTニュースの取材に対し、福岡県庁内の福岡県教育委員会の担当者は、「一つの命が無くなったことは重大な問題であり、毎日、問い合わせについては真摯に対応している」と話した。06年10月13日から義務教育課の電話が鳴り続け、受話器を置く暇がないほど問い合わせが来ているのだという。繋がらないこともあり、総務など他の部署にも連日相当数の電話がかかり、その数は数えられないほど多いという。その問い合わせの内容の殆どが「許せない!」と担当教師に対する怒りの電話。「できる限り問い合わせに対応したいので、うちの部署の10人が帰宅できるのは、電話が少なくなる午前零時頃になります」と疲れた様子で話した。
学校でのイジメ問題がクローズアップされたのはもう10年以上も前だが、文部科学省の調査では、99年から05年9月まで公立小・中・高等学校の児童生徒の「イジメが原因の自殺者はゼロ」となっている。とにかくマスコミの関心を引かないこと、という教師側の対応の反映かもしれない。