28日、東京・有楽町の国際フォーラムで開催された「イノベーション・ジャパン2005」で講演する小宮山宏東大総長。(撮影:常井健一)

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東京大学の小宮山宏総長は28日、国内270の大学や研究室から知的財産や産学連携の事例を集めた見本市「イノベーション・ジャパン2005」(東京都中央区国際フォーラム)で、「時代の先頭に立つ − 知の構造化と人材養成」と題した講演を行い、集まった技術者や研究者約300人に「大人よ、自信と夢を持って。そうすれば子は育つ」と人材育成の持論を語った。

 小宮山総長は、アメリカで起きた大型ハリケーン「カトリーナ」の原因に様々な学説が挙がっていることを例に「(いろいろな観点から論じるのも重要だが)、知識の膨張で細分化され、全体像が見えなくなったことが様々な問題の根底にある。今回の総選挙のように、声が大きい人の意見が通る不健全な状況にもなりかねない」と指摘。「学問は時の権力から自由であることが不可欠」としながらも、研究機関や教授会が細分化された東京大学の現状を見ながら、「増えた知識を前提に動かねば」と領域を超えて知識を統合させる東大の新学術プロジェクトを示した。

 また、小宮山総長は、ヒートアイランド現象、エネルギー輸入、生ごみ問題、 高齢化社会など日本の抱える課題を挙げ、「日本は地球がこれから抱える困難を先取りしている」と見解を述べた。地政学的には「マクドナルド化」されたアメリカよりもモンスーン気候のアジア諸国と課題を共有していることを説き、「自分たちで解決できるか、日本が問われている」として、科学技術に偏りがちなイノベーションを社会制度や財政とも一体化して起こす必要性を強調した。【了】