中国四川省で7日から降り続いた豪雨によって約100人の死者・行方不明者が出たほか、2008年5月12日に発生した四川大地震で廃墟となった街を保存した「地震遺跡」が水没した。中国国内では、数億元を費やしたとされる「地震遺跡」は現地官僚の点数稼ぎのために進められた愚かなプロジェクトだったとする意見も出た。(イメージ写真提供:123RF)

写真拡大

 中国四川省で7日から降り続いた豪雨によって約100人の死者・行方不明者が出たほか、2008年5月12日に発生した四川大地震で廃墟となった街を保存した「地震遺跡」が水没した。中国国内では、数億元を費やしたとされる「地震遺跡」は現地官僚の点数稼ぎのために進められた愚かなプロジェクトだったとする意見も出た。

 カナダ在住の地質学者で四川地震の現地考察を行ったことのあるケイ少丞氏は、科学網内の自身のブログで10日、「私は地震遺跡は保存できないと言ったはずだ」とする文章を掲載した。ケイ氏は地震発生直後に記録映画制作班とともに北川県の廃墟に足を踏み入れた際、大地震によって地形は極度にアンバランスな状態となっており、短くて数十年、長くて数千年は「街は同じ場所に再建できないし、地震遺跡も保存できない」と語ったことを明かした。

 にもかかわらず、現地政府は「主観的な意志」を変えず、「永久保存」をテーマとして数億元の費用を投じて遺跡保存プロジェクトを進めたことにより、「科学を尊重しない施策で、人民の血と汗が詰まった金銭を浪費した」と批判した。

 被災地における洪水災害は今回が最初ではない。震災発生からわずか4カ月後の08年9月に大雨により山崩れや土石流が発生、遺跡の半数以上が埋まったほか、11年にも大雨により「北川大酒店」の廃墟が3度水没した。

 地震による甚大な被害、悲しい記憶を後世に残そうとする取り組みは咎められたものではない。ただ、当初から「保存は不可能」とする忠告があったにもかかわらず、全く耳を貸さずに巨額を投じて保存プロジェクトを進めた結果、全てが「水の泡」となってしまったことに対する責任は免れず、現地官僚の点数稼ぎとの批判を浴びても仕方ない。

 プロジェクトを進めた地方役人らは、水没すべくして水没したとも言える「地震遺跡」の跡形もない姿を目の当たりにして、どのような感情を抱いただろうか。もし、「これはまた洪水遺跡を作らねば」などと考えているようであれば、もはや救いようがない。(編集担当:近間由保)(イメージ写真提供:123RF)