ザックJAPANの初戦は、王国ブラジルが相手。試合は0-3と完敗だった。
……完敗でした。去年の10月にブラジルと戦って0-4と負けたとき、敗因は最後の精度の問題ということになりました。今回の0-3という差も、そのフィニッシュの精度がブラジルと日本とでは違っていたということが言えるでしょう。

ただ、僕が疑問に思ったのは、なぜ最初に岡崎を1トップに起用したのだろうということです。去年のブラジル戦は本田の1トップでした。今回は本田をトップ下で使いたかったのでしょう。でも、それで岡崎の良さが出せなかったように思います。

デイフェンスの裏に飛び出していくのが岡崎のいい部分なのです。ところが、1トップだとポストプレーも重要になってくるので、動き方が違ってきます。そのことで岡崎は本来の力を出せず、日本の攻撃はギクシャクしました。前田を投入して日本がこれまで一番慣れた形に変え、良さが出せるようになったと思います。前田は守備も良かったから、スタメンでも良かったんじゃないでしょうか。

オーストラリア戦でのスタメンのように、これまでの日本代表が自信を持っている形でスタートして、そこから選手を変えていってほしかった。日本の良さを発揮できたのは、ほんの少しの時間しかありませんでしたから。もちろん、今回のスタメンを組んだことには何らかの事情はあったと思います。ですが、僕は日本がこれまで実績を積み重ねたメンバーで戦うところも見たかったと思います。

試合後の選手の表情を見ていても、相当ショックを受けたと思います。ただ、予選グループ突破のためには急いで気持ちを切り替えてイタリア戦に立ち向かい、勝利を収めるしかありません。

現在のイタリアは守備の強さはもちろん、攻撃をきちんと組みたててきます。そんな相手に対して日本も良さを出してほしいと思いますね。次こそ岡崎が守備ラインの裏に飛び出す良さを見せてくれればと願います。

次の戦いでは日本の集大成を見せてほしい。イタリア戦で最初にどんなメンバーをピッチに送り出すのか、楽しみにしたいと思います。

 (撮影:岸本勉/PICSPORT。6月15日、ブラジリア国立競技場にて)

小倉隆史

■プロフィール
小倉隆史(おぐら たかふみ)
1973年生まれ、三重県出身。サッカー解説者。92年、名古屋グランパスエイトへ入団。翌年にレンタル移籍したオランダ2部リーグのエクセルシオールで、チーム得点王に輝いた。さらに、アトランタ五輪の代表や、ファルカン監督率いる日本代表にも選ばれた。

現在は、サッカー解説者として、TVを中心に幅広いメディアで活躍中。12年に、日本サッカー協会公認S級コーチライセンスを取得。宝島社から先月、書籍(小倉隆史の「観る眼」が変わるサッカー観戦術)を出版した。