ギリシャが9月に「破産」? 独誌の報道で「EU危機」が緊迫
欧州危機の発端となったギリシャへの財政支援について、またしても不透明感が増している。ギリシャが欧州連合(EU)などとの約束を果たせるかどうか疑念が広がっており、同国向けの追加支援に消極的姿勢を強めている。
国際通貨基金(IMF)がギリシャへの今後の融資実行を停止し、これによりギリシャが2012年9月に支払い不能に陥る可能性が強まる「9月危機説」を、独シュピーゲル誌がEU当局者の言葉を引用して伝えたというのだ。
債権団が「政策評価」のためにギリシャ入り
ギリシャの債権者であるEUの欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は、救済合意に基づく目標とギリシャの現状が、どの程度かい離しているか評価するため、2012年7月24日にアテネ入りする。
融資条件の履行状況が思わしくなければ、くすぶり続けているギリシャのユーロ圏離脱観測が再燃し、またしても欧州の債務危機の「焦点」に浮上するとみられる。
独シュピーゲル誌によると、財政再建中のギリシャへの支援プログラムについては、融資条件の履行状況の審査はまだ終了していないが、ギリシャが2020年までに公的債務の削減目標を達成できないのはすでに明らかだ、という。
同誌はギリシャが目標を達成できない場合には、同国が100億〜500億ユーロの追加支援を必要とするとし、IMFやEU諸国はこれを受け入れる準備ができていない可能性がある、と報じた。
それによると、EUの指導者は恒久的な基金である欧州安定化メカニズム(ESM)が稼働するまでギリシャの財政を支えることを望んでいるが、ギリシャのユーロ離脱は管理可能と判断している、とされる。また、ECBが介入することで、しばらくギリシャを支援する可能性もあるとも伝えた。
これに対して、IMFは「ラガルド専務理事とギリシャのサマラス首相とが、金曜日(7月20日)に電話で、24日に協議をはじめることを確認しています」とし、そのうえで「基本的に、IMFはギリシャに対する融資プログラムのミッションを継続してサポートしていくという方向性に変わりはありません」と話した。
ギリシャへの「圧力」は引き続きかかる
2012年7月23日、EU財務相会合は1000億ユーロ(約9兆5000億円)のスペインの財政支援策を承認したものの、外国為替市場でのユーロの安値更新を阻止できずにいた。その背景にも、ギリシャの陰が見え隠れする。
EUやIMFによるギリシャへの財政支援はもう限界なのだろうか――。ギリシャの政策評価などは24日からだが、今のところギリシャは「EUに残りたい」と考えていて、突発的にEUを飛び出すこともない。スペインやイタリアなど他国への影響も大きくEU自身も困るからだ。
「ただ、3〜5年後はわかりません」と、SMBC日興証券・金融経済調査部の債券ストラテジスト、嶋津洋樹氏はいう。「ギリシャが残りたいといっても、EU側が見放すかもしれません。現在も、EU諸国は少しずつギリシャから撤退しています。債務が減り、また実際の貿易取引なども減っていって、ギリシャとの関係が薄れれば、出て行ってもらってもかまわない、となります」と説明する。
それまではマーケットが「約束はしっかり守れ」と圧力をかけ続ける。「それにより、一時的にマーケットが緊張する局面が起こる可能性はあります」と指摘する。