大阪の安宿を求めて西成のあいりん地区に外国人旅行者に混じって宿泊してみた
1泊シングルで1500円。シャワーとトイレは共同。液晶テレビ、冷蔵庫、エアコン、Wi-Fi完備。ただ室内は狭い。それでも日本でこの値段はあり得ません。そんな旅心をくすぐる安宿が大阪の西成のあいりん地区にたくさんありました。世界中を旅してきたのですが、物価がこんなに高い国で、ここまで安い宿はないですよ。かつては日雇い労働者のドヤ街だったそうですが、現在は外国人旅行者もご用達。そして何かと今話題の生活保護の文字もたくさんみかけました。
東は阪神高速14号松原線「天王寺出口」「阿倍野入口」の高架から……
西は南海本線「新今宮駅」の高架まで。
地下鉄御堂筋線の「動物園前駅」一帯のこの区間に安宿が密集していました。あいりん地区と呼ばれています。二つの高架をくぐった時だけ、空気が変わるのを感じました。でも、東なんて、すぐに天王寺の繁華街に出るのですよ。今ニュースにも流れている日本一高いビルになる「あべのハルカス」も近くです。あいりん地区は不思議な場所です。
ここには安宿が密集しています。
メインの通りに面している安宿。
一本路地に入ったら、こんな感じ。
たくさんの安宿が競争を繰り広げていました。
1泊1200円の看板。
1泊1000円から。
1泊1200円から1400円まで。
ここは1泊2000円くらいですね。
外国人旅行者向けの英語や、韓国人旅行者向けのハングル表記があったりします。
こちらは1泊3300円と高いですが、それだけに設備も良さそう。
「福祉の方、大歓迎」とは生活保護のことでしょうか。西成のあいりん地区では安宿と同時に生活保護や福祉といった単語もたくさんならんでました。だからといって、あのような部屋で暮らしていくのは大変そうですが。
「ビジネスホテルラッキー」に1泊してみました。
こちらが外観。
宿の入口で、部屋の様子が分かるので検討しましょう。
洋室シングルの部屋で1500円でした。ベッドが一つと人間1人が歩けるような狭い室内ですが、液晶テレビ、エアコン、冷蔵庫がついています。安宿といったら暗いイメージがしますが、こちらの部屋は新築のように明るい室内でした。照明も十分で眩しいくらいです。宿がWi-Fiを飛ばしているので、機器があればインターネットも部屋でできます。
こちらが洋室シングル1500円の室内。
部屋奥の角には、机と椅子の作業スペース。
液晶テレビのある宿なんて初めてですよ。
冷蔵庫もありました。
エアコンはなんと「霧が峰」
安宿ですので、シャワーとトイレは共有。当たり前ですが、ガンガンとホットシャワーが出ます。それどころか、日本なら共同浴場でしょう。お風呂もあったりしました。共有スペースにはコンロとやかんもあるので、お湯を沸かしてカップめんくらいは食べれます。
こちらは、土足厳禁です。
シャワーとお風呂の案内。
受付ロビーにある自動販売機。
共有スペースにある流し台。
また別の日には同じ地区にある「ホテルみかど」に宿泊しました。
料金の表示がある看板。
外から分かるお部屋の紹介。
和室シングルの部屋で1980円でした。3畳一間の狭い室内ですが、こちらにも液晶テレビ、エアコン、冷蔵庫がついています。ビルの各階でWi-Fiを飛ばしているので、部屋でインターネットも問題ありません。Wi-Fiが使えなくてもロビーにはパソコンが置いてありますよ。
こちらが和室シングル1980円の室内。
バスタオルやフェイスタオルまで用意してくれています。
液晶テレビ。
冷蔵庫。
エアコン。
細かい気遣いを感じたドアストッパー。
使い捨てのスリッパまでありました。
フロアの様子。
ホテルみかどの共有スペースは充実しています。旅の細かい所に手が届くサービスに胸が熱くなりました。世界中を旅してきたのですが、ここまでのものは見たことがありません。だから、日本はすごいのです。
共同風呂の案内。
こちらはシャワールーム。
共用トイレなのにウォッシュレット付き。
コインランドリーを完備しています。
公衆電話。隣ではテレホンカードも販売されています。
雨が降っても大丈夫。無料で傘の貸し出しをしていました。
何台か並ぶジュースの自動販売機。
共同キッチンはこのような感じ。
小さなスペースに必要な物がきちんと整理整頓されています。
ガスを使わない電磁調理器。
電子レンジ、トースター、冷蔵庫。フリーの調味料までありました。
2台の給湯ポット。1台だと空になりますが、2台だと常時の給湯が可能です。
お茶はフリーサービス。
ホテルみかどでは、イギリス人、スウェーデン人、台湾人とたくさんの外国人旅行者の姿をみかけました。ユースホステルやゲストハウスの相部屋2段ベッドより安いシングルルームがあるのですから当然です。ホテルみかどでは外国人旅行者を歓迎しているようでした。自分もヨーロッパではよく利用していたオンラインホテルブッキングの「ホステルワールド」に加盟しています。ここで検索をかければ、はじめての外国人旅行者でも西成のあいりん地区のこの宿まで辿りつくことができるでしょう。
入口にはホステルワールドに加盟していることが分かるステッカー。
いろんな案内も日本語だけじゃなく、英語が併記されています。
2008年に大阪に立ち寄った際にも西成のあいりん地区に1泊していました。
そのときに泊まったのは「ホテル東洋」。
和室のシングルの室内。
この安宿が集まる西成のあいりん地区は通天閣のある新世界まで歩いていけます。地下鉄を使えば「動物園前駅」から繁華街である梅田(キタ)や難波(ミナミ)に出れます。いろいろと観光するにも悪くない場所です。
歩いていける通天閣。
ビリケンさん。
生活の色が残るジャンジャン横丁。
観光だけでなく、西成のあいりん地区の日常にも旅心をくすぐられます。日本ではなかなか見ることができない景色がありました。商店街をうろついているといかついお兄さん声をかけられます。
お兄さん「おぉ兄ちゃん、どっから来たんや、自転車旅行中かー?」
チャリダーマン「いやいや、海外から関空経由で帰ってきたんですよ」
お兄さん「そうか、だったら働かんか、毎日じゃないけれど仕事あるでー」
チャリダーマン「!!」
スカウトされました。断りましたが、どこに連れていかれたのか気になります。ここは本来は日雇い労働者が暮らす街です。
だからこそ、コインロッカー屋さんが営業していました。
小で1日100円、大で1日200円とリーズナブルな価格設定。
自分も荷物を預けていました。
ロッカーじゃなくて管理人が棚に保管する「荷物預かり所」も存在します。
どこからみてもパチンコ店、名前からしてパチンコ店の「スーパー玉出」はパチンコ店ではなくスーパーマーケットです。
道端にはジュースが50円の自動販売機があります。
そしてお酒の自動販売機も。自販機の周りで昼間から酒盛りをしているのも、日本では珍しい光景です。
立ち飲み屋もありますよ。夜は風情を感じました。
「ごみすてるな、大便スルナ」、これは強烈!!
路上の自転車修理工。
旅人として放っておけないのが、西成のあいりん地区でした。こんなに楽しいところはありません。これからも大阪で用事があれば、こちらにお世話になりたいと考えています。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com)
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