ここまでのレギュラーシーズン、僕はダルビッシュの登板した試合は全てプレイボールから見てきた。前日朝まで飲んでようと何だろうと、プレイボールから見た。ところが昨日はうっかり寝坊、試合開始から2時間以上経ったところで目が覚め、慌ててMLB.comを開くとまだ1回裏。"Rain Delay"が表示されたままゲームが止まっている。ゲーム開始時間を考えると大分長いこと中断しているのだろうからよほど雨が酷いのだろう、今日はこのまま中止かなと思った矢先、ゲームは再開。とはいえこれだけ長時間の中断があった場合、一度暖めた肩が冷えてしまったスターターはマウンドを降りて次に備えるのが一般的。今日はいずれにしても、、と思いきや、ダルビッシュ続投。3アウトまで2時間以上かかった1回裏が終わり2回表のマウンドに上がったダルビッシュに、雨にも関わらず満員御礼Sold Outのファンは最高のスタンディングオーベーションで応え、アーリントンから遠く離れた東京から僕もその和に控えめに加わった。

 開幕前から「今季メジャーリーグ最高のrivalry」と称された、エンジェルスとレンジャーズのシーズン初対決。ご存知の通りエンジェルスはここまで絶不調、一方のレンジャーズは絶好調。まさか両者がこんな両極端なステータスで初戦を迎えるとは誰もが予想していなかったところだが、それでも昨日のゲームはエンジェルス先発が去年までレンジャーズのエースであり酒・ドラッグフリーのストレートエッジとして有名なイケメン、C.J.ウィルソン、そしてレンジャーズ先発は東洋が誇る世紀のロックスター、ダルビッシュということで、大いに注目を集めた。

 因縁とかそういう話は置いておいてメジャー屈指のイケメンマッチアップとなったこのゲーム。まずはダルビッシュが1回表を簡単に片付けるとその裏、ウィルソンは不運な打球で1点を失い、なおも1アウト満塁というピンチ。ここで、テキサスの豪雨という思わぬアクシデント。日本だったら余裕で中止だが、2時間の中断を経てゲーム再開。時間があきすぎてしまったため、ウィルソンは敢えなく2番手のJ.ウィリアムスにマウンドを譲ることに。Rangersはこの「雨の恵み」を逃さず畳み掛け、鮮やかに6点を先取。一方のダルビッシュは異例の続投。2回表の初球、93mphの4シームでストライクを取ると、場内は割れんばかりの"Yuuuuuuuu!!!"コール。アーリントンのオーディエンスはベースボールをよく知っている。ダルビッシュはその後6回途中まで、2本のHRで3失点したものの危なげないピッチングで仕事を完了。味方打線もマフィアの2打席連続HRなど着々と点を取り、ダルビッシュはハーラートップタイの5勝目を悠々とマークした。

 スケジュールが超タイトなメジャーリーグは、よほどのことがない限りゲームを中止にしない。中止にしても、そのしわ寄せが後々さらにヘヴィな形でやってくるからだ。前日もダブルヘッダーを戦って深夜に移動したレンジャーズは昨日も雨によるアクシデントとあまりにタフな2日間となったが、そんな中ダルビッシュが普通に6回途中まで投げたことは大きかった。そしてダルビッシュが余裕を持って投げられたのは言うまでもない、ハードワークの疲れを微塵も見せず打に打ちまくるオフェンスのおかげであり、その中心にいるのがもはやアンストッパブルな勢いでHRを打ちまくっているJ.ハミルトンだ。

 前回の記事でも取り上げたダルビッシュの頼もしき相棒、ハミルトン(通称マフィア)はこの日も2打席連続HRを放ち、チーム33試合目で17号という犯罪的ペースで絶賛爆発中。これは1968年のF.ハワード以来のスピード記録だという。つまり、B.ボンズも開幕からこれだけのハイペースで打ち続けたことはないということだ。しかもハミルトンは4月下旬に数試合、戦線離脱している。もう"Red-Hot"どころではない。大袈裟でなく、どこに投げても打たれる気「しか」しないマフィアに対し、ライターは「速報!ハミルトンが凡退」と報じ、また他チームの投手に至ってはiPhoneを手にしてSiriに「どうすればハミルトンを打ち取れる?」と訊かざるを得ないくらい、お手上げ状態なのだ。








 さて、そんなマフィアの強力すぎるバックアップもあり、ダルビッシュはここまで着々と勝利を積み重ねてきている。コントロールが中々安定しないことにやや不満を抱く声はあるものの、それはダルビッシュが「サイヤング賞級」のパフォーマンスを期待されている何よりの証拠。これは契約の金額だけでなく、それだけのものを期待せずにはいられない程のパフォーマンスを、ここまで既に見せつけているのだ。




 開幕から1ヶ月で、Jon Heymanにここまで言わせるとは、それはもう過度な期待するなという方が無理ってものだ。