インタビュー:ポール・ハギス監督「自分の価値は、証明し続けなければならない」
ラッセル・クロウ主演の映画『スリーデイズ』が全国公開中だ。クロウ演じる主人公が、殺人罪に問われて投獄された妻を救うため、脱獄を計画――。ごく普通の男が、善悪を超える問題に直面し、窮地に追い込まれるサスペンス大作だ。
メガホンをとったのは、『ミリオンダラー・ベイビー』『クラッシュ』でアカデミー賞作品賞などを受賞したポール・ハギス監督。作品で描きたかった題材は“関係”だというハギス監督が、撮影での苦労話や、リーアム・ニーソンら豪華俳優陣のキャスティング秘話などを明かした。
・【YouTube】ラッセル・クロウが演じる主人公らのスリリングな逃亡シーン
「自分の価値は、証明し続けなければならない」。
そんな監督の思いが詰まった映画『スリーデイズ』は、全国公開中だ。
・映画『スリーデイズ』特集
・映画『スリーデイズ』公式サイト
メガホンをとったのは、『ミリオンダラー・ベイビー』『クラッシュ』でアカデミー賞作品賞などを受賞したポール・ハギス監督。作品で描きたかった題材は“関係”だというハギス監督が、撮影での苦労話や、リーアム・ニーソンら豪華俳優陣のキャスティング秘話などを明かした。
ラッセル・クロウを指導する役を演じられる俳優
――撮影中で一番苦労されたシーンは?
ポール・ハギス監督(以降、ハギス監督):高速道路のカーチェイスの撮影が大変だった。準備万端で臨んだけど、それでも現場で何度か撮り方を変えた。このシーンは、撮影中、夜中に目が覚めるほど心配だった。というのも、このシーンに真実味がなければ、この映画自体がダメになってしまうと思ったからなんだ。・【YouTube】ラッセル・クロウが演じる主人公らのスリリングな逃亡シーン
――ブライアン・デネヒーやリーアム・ニーソンと、映画ファンをニヤリとさせるキャストが出演されてますよね。キャスティングの経緯をお聞かせください。また、彼らとの撮影はいかがでしたか?
ハギス監督:リーアムとブライアンはどちらも良く知っている友人だけど、依頼をしたら即OKしてくれてすごく嬉しかった。リーアムは他の映画を撮影中だったのに、わずか2日間のオフを利用して、西海岸のバンク−バーから東部のピッツバーグまでわざわざ出演しに飛んで来てくれた。私にとっては贈り物のような嬉しい出来事だったね。何しろ、ラッセル・クロウを指導する役を演じるのだから、それなりの重みや存在感のある俳優が必要だった。その意味では、リーアムほど説得力のある役者はいないからね。彼に出てもらえて本当にありがたかった。ブライアンには正直断られるかと思っていた。というのも、存在感のある役だけれどセリフが8つしかないから(笑)。でも、むしろ彼はそれをチャレンジと感じてくれて、OKしてくれた。オリヴィアも登場するシーンは少ない役だけど、快く参加してくれて記憶に残る演技をしてくれた。――あなたの作品を心待ちにしているファンにメッセージをお願いします。
ハギス監督:この『スリーデイズ』という映画を体感して欲しい。オープニングからラストまでナーバスでいて、「自分ならどうするか?」を考えまくって欲しい。そして観終わってからも、友人同士でいろいろと意見を飛ばし合って欲しい。そうして、映画館の外まで映画が続いていくことを、私はとても素敵なことだと思っている。クリント・イーストウッドのすごさ
――2004年に『クラッシュ』を、2007年に『告発のとき』をそして2010年に本作の監督をと3年スパンで監督作品を公開されていますが、意識的なものなのでしょうか?
ハギス監督:脚本を書いて監督もすると、それ位の時間が掛かるということ。できればもっと早く書きたいけど(笑)。次回作も一年半掛かって脚本がやっと完成して、これから製作費を集めてプロジェクトに入るので、これまでと同じくらい掛かるだろう。でも、インディペンデントの映画製作とはそういうものだと思っているから。クリント・イーストウッドのように、ひとの脚本で監督できる人間がうらやましいよ。まあ、彼の場合は年に2本撮っても最高の作品ができるわけで、私は彼ほど利口でも才能があるわけでもないけどね。――製作・脚本に関わった『ミリオンダラー・ベイビー』、監督作品の『クラッシュ』とアカデミー賞に連続受賞し、その後もヒット作に関わっています。本作を作る上でプレッシャーは感じましたか?
ハギス監督:違う種のプレッシャーを感じています。良いストーリーを見つけ、それを良い形で伝えるためにいかに心を砕けるか、それが私にとって一番のプレッシャーですね。自分としては、「これって難しいな」と思える題材のほうが好きなんです。そのほうが楽しいんだよね。自分自身の価値は、証明し続けなければならない
――アカデミー受賞経験からの影響はありますか?
ハギス監督:アカデミー賞を取れば認知度は上がるので、やりやすくなることはある。でも実際には過去の作品ではなく、もっとも最近の作品の成績や内容が判断の基準にされることが多い。つまり、どんなに賞を取ったって、自分自身の価値や力というものは、証明し続けなければならない。でも、僕はその点は好きだし、それは良いことだとも思う。――今後はどのような作品を撮りたいと思いますか?本作を作った上で次の作品のアイデアや制作につながったことはありますか?
ハギス監督:今後も自分にとってパーソナルな作品を撮っていきたい。たとえば『硫黄島からの手紙』を書いた時は、戦争というものが頭にあって、自分の中で湧き上がる疑問に答えようとする自分がいてそれで書いていった。『クラッシュ』の場合は自分のL.A.での経験があって、それに自問する形で書いていった。どの作品でも題材は違っていて、『スリーデイズ』では“関係”。夫婦や恋愛あるいはそれ以外の愛情なども含めて、自分自身も良く分かっていないので、それらをもっと知りたいと思って書いている。次の作品もラブストーリーなので、それはまだ続いているけどね。だから、自分の作品への向き合い方というのは、頭の中をグルグルと巡っている質問を、娯楽性を持たせながらストーリーとしていかに語ることができるか、ということ。それが自分の映画作りなんだよね。――子供の頃からは観ていて、影響を受けた作品はありますか?
ハギス監督:トリュフォー、ゴダール、デシーカ、フェリーニ、アントニオーニ。あとクロサワも大きかったね。外国映画のほうが影響を与えられているかな。でも、ジョン・フォードやヒッチコックとか、影響を受けているアメリカやイギリスの監督からもいるけどね。「自分の価値は、証明し続けなければならない」。
そんな監督の思いが詰まった映画『スリーデイズ』は、全国公開中だ。
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