台湾のトップ医療を誇る台湾大学付設病院(以下台大病院)で、HIVに感染した臓器を誤って移植するという信じられない事件が起きた。移植前の検査結果を報告する電話を受けた台大病院の移植チームスタッフが、「reactive」(陽性)と「non-reactive」(陰性)を聞き間違えたのだという。

今月24日、新竹に住む男性(38)が転落事故に遭い、脳死と診断された。男性の家族は「家族を失う悲しみを少しでも減らせれば」と男性の臓器を提供することにしたという。連絡を受けた台大病院は医療チームを送り、男性の心臓、肝臓、2つの腎臓、肺を摘出、HIVなどのウイルス検査を行い、心臓は成功大学病院の移植チームに渡した。

台大病院では、口頭だけでなく、電子文書での確認も義務付けているが、移植チームはこの確認を怠った。また、成功大学は衛生署臓器提供センターへの確認も行っているが、資料は台大病院が登録した「陰性」であった。その後、成功大学病院、台大病院ではそれぞれ、24日夜から25日明け方にかけ5つの移植手術が行われた。

26日、移植チームは男性の検査結果が「陽性」であったことに気付き、2度目の検査を行ったという。間違いなく「陽性」であることが確認され、成功大学病院にも報告した。

移植手術を受けた患者への感染は免れないものとして、両大学病院では患者に対し、HIVの進行を予防する薬を投与している。このほか、成功大学病院では、臓器の摘出に携わった6人の医療スタッフに対しても、投薬をする方針だ。衛生署は両大学病院に対し、移植手術を受けた患者と家族に対する謝罪を求めるとともに、3日以内の調査報告を求めている。

移植手術の成功を喜んでいた家族たちは、移植された臓器がHIVに感染していたと聞くと、その場に泣き崩れたそうだ。これまで、輝かしい成績を残してきた台大病院移植チームだが、これでは臓器を提供した男性の家族の善意も浮かばれない。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)

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