インタビュー:プラッチャヤー・ピンゲーオ「世界中の子供の売春をテーマにしたストーリーをつくりたかった」
金で殺しを請け負う凄腕のスナイパーが、売春やクスリを扱う犯罪組織に立ち向かう『パーフェクト・スナイパー』。監督を務めたのは、プラッチャヤー・ピンゲーオ。あの『マッハ!!!!!!!!』シリーズを制作した監督だけあって、アクションが本格的なことは言うまでもないだろう。しかし、今作は、アクションだけでなく、少女売春などの社会問題や人間心理の部分まで、より深く描かれている。どんな決意を持ってこの作品に取り組んだのかプラッチャヤー監督に真相を聞いてみた。
プラッチャヤー・ピンゲーオの内面には、社会問題や伝統格式への挑戦という熱い想いがあった。もしかすると、この飽くなき挑戦心があったからこそ、型破りな『マッハ!!!!!!!!』シリーズをつくりあげることができたのかも知れない。そんなプラッチャヤー監督の挑戦魂が詰まった『パーフェクト・スナイパー』は、必見である。
――殺し屋が売春組織と戦うというストーリーですが、“少女売春”をこの作品のテーマに据えた理由は何でしょう?
プラッチャヤー:少女売春については長い間映画をつくりたいと思っていたんだ。『パーフェクト・スナイパー』の前に『トム・ヤム・クン』を作っていた時でさえも、世界中の子供の売春をテーマにしたストーリーをつくりたかったが、当時はそれがかなわなかった。私はこの人身売買には強く反対だし、『パーフェクト・スナイパー』は、自分の感情やこの問題を止めなければならない事をタイの人々に示す良い機会だったと思う。――正体不明の謎の少女が現れたり、寺院を隠れ家にしているために僧侶とのやり取りがあったりと、アクションに“霊”や“宗教”的なものを組み合わせた狙いは?
プラッチャヤー:私はもっと多くのアクション要素を映画に取り込みたかったが、ハリウッドのある規定の中で仕事を進めなければならなかった。タイの仏教では、僧侶が少女に触ることは絶対に許されていないため、私にとっても今回仏教的要素を取り込むのはチャレンジだった。しかし、タイの伝統的な信仰に背いて、多くのドラマを織り込んだ新しい世界を創造することは、伝統的価値に馴染んだ観客にとっても、そうでない観客にとっても興味深いことだと思う。また、このことによってメイが幽霊で、人間の少女ではないことを正当化できるだろう。――ジャイモン・フンスーが演じた主人公のチャーチは、無差別に人を殺しているわけでないと思ったのですが?いかがでしょう。
プラッチャヤー:映画の始めでは、ジャイモンが演じた役は、プロの殺し屋で、唯一“金”に対してだけ献身的だった。だから、金を支払ってくれる限り、標的は誰でもよかった。だが、彼が少女メイと会った後、少女の売春のことを知り自分の良心が刺激を受け、その後、少女たちの売春から利益を得た男たちを殺すことに全精力を注ぐようになる。ジャイモンにとって、良心を持った冷血な殺し屋を演じることはチャレンジだったと思うよ。――殺し屋という職業について、監督自身はどう思いますか?
プラッチャヤー:私にとっては、人を殺すことが職業になりうるとは決して思わない。平和と全ての人類の生活の質というものを信じているので、これは問題外。プラッチャヤー・ピンゲーオの内面には、社会問題や伝統格式への挑戦という熱い想いがあった。もしかすると、この飽くなき挑戦心があったからこそ、型破りな『マッハ!!!!!!!!』シリーズをつくりあげることができたのかも知れない。そんなプラッチャヤー監督の挑戦魂が詰まった『パーフェクト・スナイパー』は、必見である。
金で殺しを請け負う凄腕のスナイパーであるチャーチ(ジャイモン・フンスー)は、娘をさらわれた男からギャング団をつぶしてほしいとの依頼を受ける。武器商人のジミー(ケヴィン・ベーコン)を頼り、ギャングたちの襲撃に成功したチャーチだったが、メイという不思議な少女に会い、そのギャングたちが売春やクスリを扱って辺り一帯を支配しているチャンガオ団だと知る。相手がチャンガオ団だと知りチャーチの雇い主は手を引くが、チャーチはジミーを仲間に引き込んでチャンガオ団を壊滅させようと企てる。しかし、、そこには二重三重の罠が隠されていて――。