ムカデ人間<br />(C)2009 SIX ENTERTAINMENT
 あなたは本当に“ヤバい”映画をまだ知らない。 つなげてみたい。一つの願望を叶える為に、狂気の博士がとった信じられない行動とは? 映画「ムカデ人間」はその衝撃的なストーリーが公開以前より話題を呼び、小規模公開ながら初日には立ち見客も出たという、この夏密かにヒット中のショッキング・サスペンスです。

ムカデ人間

オランダ=イギリスの合作映画で、ドイツ人俳優ディーター・ラーザーを主演に迎えた衝撃ホラー。かつてはシャム双生児の分離手術を専門とする医師が抱いた恐るべき計画。それは人間を“分離“するのではなく“結合“することだった。偶然にも彼のもとに迷いこんでしまった者たちは身体を繋ぎ合わされ“ムカデ人間“になってしまうのか?

恐怖1:新たなカリスマの誕生

今のホラー映画には、圧倒的なカリスマが足りない。そう感じた事はありませんか? 酷く残虐で、目を背けたくなる出来事の連続なのに、何か抗えない魅力を持つ人物。なぜか魅力的に感じてしまう、殺人鬼やマッドサイエンティスト達。

かつては、レザー・フェイス(1975年「悪魔のいけにえ」)、ハンニバル・レクター(1991年「羊たちの沈黙」)、ジグソウ(2004年「SAW」)といった悪のカリスマ達がホラー映画を盛り上げてきましたが、ついに2011年新たなカリスマ“ハイター博士”が誕生したのです。

恐怖2:目覚めたら、地下の病室。待っているのは、恐怖の手術。

ドイツの森の深くで自動車のタイヤがパンクしてしまった女性2人は、人里離れた場所に建つ大邸宅にたどり着く。住人の男に部屋に招き入れられたのが最後、薬で眠らされ、目覚めると地下病室のベッドに拘束されていた…。「旅行者・森の中・人里離れた家・差し出されてた飲み物」というホラー映画定番のフラグがどんどん立っていくので、観客は序盤から映画に惹きこまれていきます。

そして、ベッドの隣にいるのは見知らぬ一人の男。日本語(しかも関西弁)で「離せ!離せ!」と騒ぐ彼も、ハイター博士の恐るべき願望の為に捕らえられた犠牲者だったのです。

恐怖3:自分が怪物に変えられてしまった時、人間はどう行動する?

有無を言わさず強い麻酔を打たれ、歯を抜かれ、立てない様に膝の皿を破壊され、恐ろしい“ムカデ人間”に改造されてしまった3人。観る前に一番不安を感じていた手術シーンは、意外なほどアッサリ展開し、流血シーンもごくわずかですが、本当に惨いのはその後。3人はハイター博士の手で鏡に写し出され、自分達の変貌した姿に絶望します。

このムカデ人間は、1人目の肛門と2人目の口、2人目の肛門と3人目の口が縫い合わされている為、女性2人は声を出す事も許されず、ただただ泣き続けます。そして、口が使えない為、食事は当然先頭の男のみ。そしていずれ出てくる排泄物の行方は…。もうお分かりですね?

総評:“出オチ”と思いきや、案外しっかりとしたストーリー展開に満足。

狂気の変態博士が“ムカデ人間”を創り出すというあらすじを聞いた時に、あまりにも衝撃的なヴィジュアル故、ムカデ人間が完成したシーンがクライマックスになると考えていました。しかし、ホラーの定番にのっとったベタ展開は意外なほど骨太。決してお粗末では無いストーリーに最初から最後まで釘付けになります。そして何より、ハイター博士を演じた俳優ディーター・ラーザーの、ハマリっぷりはとんでもなく、その異常なほど恍惚した表情に背筋が凍るのです。ちなみにこの映画“3部作”という噂も…。またスクリーンで博士に会う日が来るのでしょうか。

ムカデ人間 - 公開情報
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絶叫度 ★★☆☆☆ 流血度 ★☆☆☆☆ 怪物度 ★★★★★ 迷宮度 ★★☆☆☆ 現実度 ★★☆☆☆