強姦の罪に問われ服役・出所した人が再び犯罪を犯す「再犯率」は4割、強盗の再犯率も4割――2010年版「犯罪白書」でこんな数字が明らかになった。

   インターネットなどでは、刑務所で行われているはずの矯正・改善指導は役にたっているのか、と不安の声も出ている。どんな対策が必要なのだろうか。

犯罪白書「性犯罪の再犯リスク大きい」

   法務省は2010年11月12日、犯罪白書(10年版)を公表した。今回、通常の統計とは別に、殺人など5つの重大犯罪に関係して服役し00年に出所した計1021人を対象に記録などをもとに再犯状況を追跡調査した。

   各犯罪の調査対象者の再犯率は、殺人(で服役・出所した人)17%、傷害致死33%、強姦39%、強盗39%、放火26%だった。ここでいう「再犯」とは、「おおむね出所の10年後までに、交通法令違反のみによる犯行などを除き、禁固以上の刑の言い渡しを受けて確定した」ことをさしている。5罪全体でみると、再犯率は31%だった。

   再犯率の中でも、強姦と強盗の4割近い数字が目につく。また、強姦と強盗については、同種再犯(例えば、強盗で服役・出所し、また強盗を犯した)の率もほかの罪の場合より高く、強姦9.4%、強盗8.3%で、5罪中1、2位を占めている。強姦については、強制わいせつなども含む「性犯罪」としてみると、再犯率は16%にもなる。

   さらに犯罪白書では、強姦再犯率について、性犯罪の前科がありかつ強姦で服役・出所した人のうち、性犯罪を再犯した率は「38%にも及ぶ」として、「性犯罪を繰り返す者は、更に性犯罪の再犯に及ぶリスクがより大きいことがうかがわれる」と指摘している。

   犯罪白書発表のニュースを受け、数は多くないが、各種個人ブログなどでは、刑務所などで更生・矯正に向けた指導などが行われているはずなのに「あまり役に立っていない」といった感想の書き込みが続いている。性犯罪者の去勢の必要性を訴える声もある。

   犯罪白書によると、「被害者の視点を取り入れた教育」「性犯罪再犯防止指導」などを実施しているが、「始められてから間がなく」効果の検証や改善を今後重ねて強化していく必要性があるとしている。また、出所した人たちの住む場所や働くところの確保に向けた支援や、犯罪者の社会復帰に対する「社会・国民の協力」の大切さも訴えている。

「矯正効果は出ている」の声も

   「刑事政策概論」(成文堂)の共著などがある福岡大学法学部の平田紳教授に、再犯率の数字をどうみるか聞いてみた。

   平田教授は、「(強姦・強盗の)4割も再犯したと問題視するか、6割は再犯しなかったと評価するか、矯正効果についての見方は分かれるでしょう」としつつ、教授自身は「矯正効果は出ている」と一定の評価をする考えを示した。「けっして低い数字ではないが、矯正効果を否定するような驚くほどの数字ではない」という。

   刑務所などでの矯正・更生への取り組みの充実が一層必要なことは言うまでもないが、出所後の職や住居の確保に社会が協力することも重要だと指摘する。雇用への協力者が以前は比較的多かった土木・建築分野が公共工事削減などの影響を受け、以前ほど協力できない状態になっていることを教授は懸念している。

   平田教授は「何にせよ、政府は無策といっていい。一部の民間の人の善意に頼りすぎで関連予算も低すぎる」と話し、再犯率は施策によって下げていくことが可能だとの見方を示した。

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