（更新日時：2010.09.30 Thursday）

　9月24日から10日ほどの予定で、タイの首都バンコクに来ている。もちろんセパタクローでもムエタイでもなく、フットボールの取材だ。今年3月、バンコクで激しい反政府デモが発生したことについては、日本でも大々的に報じられたので、ご存じの方も多いだろう。事件は当然ながらスポーツ界にも影響し、タイ・プレミアリーグの開幕日は2週間ほどずれてしまった。結果、リーグ戦は過密日程となり、10日間の滞在期間に5試合が見られることになった。主催者側と実際にプレーする選手には申し訳ないが、やはり取材する立場としては、限られた日数と予算の中で効率よく動きたい。その意味で今回の取材は、試合数とインタビュイーの数では、非常に充実したものとなった。

　それにしても久々の海外取材である。先のワールドカップ以来、2カ月ぶり。日本代表関連の取材以外の個人的取材となると、昨年8月のロシア取材まで遡らなければならない(念のため申し上げておくと、まだ本田圭佑がCSKAモスクワに移籍する前の話だ)。ご存じのとおり、この業界はワールドカップに合わせるように4年に一度の周期で回っている。ゆえに今回のタイ取材は、2014年のブラジル大会に向けて、新たなテーマに臨む第一歩と位置付けられよう。実のところ、今回のタイ取材を含めて、今後の海外取材の成果は、次のワールドカップまでに一冊の書籍に結実させるのが、目下の私の中期的目標となっている。次回作のテーマについては、今はあまり多くを語るべきではないだろう。ただ、取材中の私が常に感じているのは、日本の現状への憂い(それは何もサッカーに限った話ではない)、そして未来への希望の兆し、である。

　ところで今回の海外取材では、これまでの取材とは大きくことなる点がある。それは個人有料メールマガジン「徹マガ」の存在である。すなわち、徹マガで得た収入で海外取材を行い、徹マガの名前で取材申請をし、そこで得たコンテンツを徹マガの読者に優先的に提供していく。このミニマムな循環を初めて実現させるのが、今回の取材のもうひとつの重要なテーマであった。これが実現できれば、赤字覚悟で海外の現場に赴き、そして発表媒体のあてもないまま帰国の途につくという、これまでフリーランスの書き手を苦しめてきた悪循環から、見事に解放されることになるのだ。

　とりわけ私のように、扱うテーマや取材に赴く国が常にマイナーな書き手の場合、ずっとこうした悪循環に悩まされ続けてきた。ところが、こうしたマスメディアではなかなか取り上げにくいテーマや内容であっても、メルマガのような個人メディアであれば、十分に魅力的なコンテンツとして成立するのである(もちろん、そこで書き手としての力量が厳しく問われることは言うまでもないが)。ここから先の作業は、その事実の証明作業となる。とはいえ、現状での取材での手ごたえからして、さほど難しい話ではないはずだ。それくらい、今回の取材はお陰さまで充実したものとなった。現地でお世話になった方々には、この場を借りてあらためて御礼申し上げる次第である。

　今回のタイ取材は、メルマガの可能性を確信させる大きな第一歩であったわけだが、その内実は極めてつましいものである。取材の予算は限られていたので、格安航空券での渡航はもちろんのこと、現地の宿泊も1泊2000円ほどのゲストハウスに連泊した(それでも、スタッフは親切でネット環境も整っていたので、ほとんど不自由はなかったが)。取材申請にしても、現地のクラブはかなりアバウトだったので、徹マガのような出来たばかりの個人メディアに対しても平等に扱ってくれたような気がする。それでも、これで実績が出来たことに変わりはない。それに今後、会員数が順調に伸びれば、さらに遠い国での長期的な取材活動も可能となる。まずは出来るところからトライする。失敗したら、またやり直せばいい。徹マガは、そうしたトライ&エラーを繰り返しながら、ゆっくりと成長していくことだろう。

　なおタイ取材の成果については、今月下旬から順次、徹マガでアップする予定なので、ご期待いただきたい。もちろん、新規会員についても常時ウェルカムである。


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