各社から発売されている「携帯電話」と「PHS」

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現在、10〜19歳の6割の人が「携帯電話」を財布よりなくしては困るものと回答されている。ほかの年代でも20〜29歳では34.7%、30〜39歳では36.6%と、携帯電話を財布以上に重要視している人が多い。

携帯電話と財布、なくして困るのはどちら?〜10代では6割が「携帯電話」

携帯電話は電話をかけるだけの道具からメールやインターネット、デジタルカメラなどの機能を標準で備えた道具となっている。さらに最近では、「おサイフケータイ」や「モバイルSuica」のような電子マネー決済機能を備えた携帯電話まで登場している。

携帯電話は日々進化し、世の中にたくさんの携帯電話が出まわっているにもかかわらず、通話が混信しないのはなぜだろうか? PHSとの違いはどこにあるのだろうか?など、明確に答えられない人は多いだろう。

そこで今回は、携帯電話のテクノロジーをひも解いてみよう。


■携帯電話の特徴と種類
携帯電話とは「移動体通信サービス」の総称で、長距離を移動しながら通話する無線式電話を指す。今日では端末を「携帯(けいたい)」や「ケータイ」と略して表現することも多い。

●携帯電話はどうやって遠くの人と話せるのか
携帯電話は、テレビやラジオのように通話に電波を使っているが、話し相手の携帯電話にダイレクトに電波を送受信している訳ではない。携帯電話で使用されている電波は2kmくらいの距離しか届かないため、「基地局」と呼ばれる電波の中継基地で携帯電話からの電波を受け取り、交換機を介して通話相手の基地局にデータを送り、そこから相手の携帯電話へと電波が送られるのだ。したがって携帯電話が実際に電波を送っているのは基地局までで、それ以外の場所は固定電話と同じ方式で繋がっている。
ドコモの携帯電話「SH903i」
ドコモの携帯電話「SH903i」

もう少し詳しく説明すると、固定電話は音声を電気信号に変換してケーブルで送信しているのに対し、携帯電話は音声を電波で基地局まで送信し、基地局から交換機までと交換機同士を経由して交換機から相手側の基地局までは電気信号で伝わり、再び基地局から相手の携帯電話へ電波で送信される。

ちなみに電波は電気と磁気の波で構成され、空気のない空間でも伝わるという特徴を持っている。電波にも音と同じように波形があるので、音の波を電気の波に変換できるように声(音)を電波に置き換えて送信できる。これが携帯電話で通話できる仕組みだ。

●アナログからデジタルの時代へ
声を電波に変換する方式には、「アナログ方式」と「デジタル方式」という2種類の方式がある。アナログ方式は声の波をそのまま電波の強さに変えて送る方式で、イメージ的には声の波の形をそのまま電波の形にしたようなものだ。一方、デジタル方式は、声の波を数値に変換し、その数値を電波で送信する。

現在主流の携帯電話の大部分はデジタル方式を採用している。デジタル方式はアナログ方式に比べて様々な点で優れている。アナログ方式の電波は周りの環境により波の形状が変化すると、通話相手に届く音質が悪くなってしまうことがある。それに比べてデジタル方式は音声を数値に変換して送るため、音質の変化が少ないのだ。また、アナログ方式に比べて送信するデータ量を小さくできるので、同じ量の電波で複数の人が電話をかけることができる。これが後述するひとつの周波数で複数の携帯電話を使用可能とする技術にも繋がっている。

●携帯電話の通信規格
ひと口に携帯電話と言っても様々な通信規格があり、地域ごとに規格も異なっている(表1)。表1を見れば明らかだが、第二世代携帯電話(2G)は一部の例外を除いて、地域ごとに異なる規格であったために普段使用している端末がそのまま海外で使用できなかった。

このような苦い経験を踏まえ、第三世代携帯電話(3G)が誕生した。また日本国内で使用される携帯電話は、通信事業者ごとにあらかじめ周波数が割り当てられている(表2)。
表1.携帯電話の通信規格
地域2G3G
日本PDC、cdmaOneW-CDMA、CDMA2000
韓国cdmaOneCDMA2000、W-CDMA
北米GSM(850/1900MHz)、cdmaOne、D-AMPS、iDENEDGE、CDMA2000、W-CDMA

※参考:通信規格 - ウィキペディア

表2.周波数帯域とサービス
周波数帯域サービス
800MHz帯ドコモ : mova(PDC)、FOMA(W-CDMA)au : cdmaOne、CDMA2000 1x(EV-DO含む)
1.5GHz帯ドコモ : PDC(movaデュアルバンド、関東・東海シティフォン、関西シティオ)ソフトバンクモバイル : SoftBank 6-2シリーズ(PDC)ツーカー : PDC
1.7GHz帯イー・モバイル:W-CDMA(HSDPA) ドコモ : FOMA(W-CDMA、東名阪地域のみ、902iS以降の一部機種)
2GHz帯
(FDD:上り1.9/下り2.1)
ドコモ : FOMA(W-CDMA、プラスエリア除く)au : CDMA2000 1x(W02H、A5515Kおよび2006年以降の一部WIN端末)ソフトバンクモバイル : SoftBank 3G(W-CDMA)

※参考:日本の携帯電話の周波数帯域利用状況 - ウィキペディア

●複数の携帯電話が混信しないのなぜ?
ところで、携帯電話の利用者が増えているにもかかわらず、どうして通話は混信しないのだろうか?

携帯電話では、表2のように通信事業者(キャリア)ごとに異なる周波数が割り当てられている。その限られた周波数を有効利用するために「多重通信」と呼ばれる技術が採用されている。ある特定の時間に基地局により割り当てられた周波数帯域は、その端末専用であるため、ほかの端末と完全に区別されるために結果として混信が起こらないのだ。
ドコモの携帯電話「P905i」
ドコモの携帯電話「P905i」

もう少し詳しく説明しよう。多重通信には、fdma(周波数分割多重)、tdma(時刻分割多重)、cdma(符号分割多重)などの種類があり、個々の技術の併用により、複数の端末が同じ基地局を利用できる。

まずfdmaは「周波数分割多重」という名称から推測できるように利用する周波数の幅を狭めることで、限られた周波数帯で多くの端末接続(通話)を実現するものだ。

次にtdma(時刻歴分割多重)は通話を3倍くらいの速度で圧縮して送信し、同一周波数を3端末で利用する技術で、第2世代端末で利用されていた。その後に生まれたcdma(符号分割多重)は、もともとは軍用の暗号通信のために開発された技術で、「スペクトル拡散」と呼ばれる技術で周波数を広げて同一周波数で複数の通話を可能にしている。

これらを簡単にイメージするには、道路(周波数)とその道を走る自動車(携帯電話の音声)を思い浮かべると良いだろう。同じ方向の道(同じ周波数)であれば、路線の多い道のほうがより多くの自動車を走らせることができる。基地局は交通ルールを定め、それぞれの自動車はそのルールを厳守するので、現実世界のように自動車が衝突(混信)することはない。

●PHSとの違いはどこにある?
携帯電話を説明するうえで、忘れてならないのが「PHS」の存在だ。
PHSとは、Personal Handy-phone Systemの略称で、文字通りに小型電話機を指す。PHSと携帯電話のもっとも大きな違いは電波の強さ(出力)だ。PHSは携帯電話に比べて端末や基地局が出す電波の出力が小さいので、電波の届く範囲が携帯電話よりも狭い。PHSが「簡易携帯電話」と呼ばれた由縁でもある。
ドコモのPHS「633S」ウィルコムのPHS「W-ZERO3[es]」
ドコモのPHS「633S」ウィルコムのPHS「W-ZERO3[es]」

そんなPHSだが、利点もある。まず電波の出力が小さい(低電磁波)ので、携帯電話の端末に比べて端末を安く作れる。基地局も同様にコストを抑えられるメリットがあるが、電波の届く範囲が携帯電話よりも狭いため携帯電話と同じエリアをカバーするためには多くの基地局の設置が必要となる。エリアにより異なるが、携帯電話では数10km間隔で基地局を設置しているのに対し、PHSでは約500m間隔で基地局を設置している。

またPHSは電磁波が極めて微弱なため、携帯電話は使用禁止されている医療機関出も利用できる場所もある。ウィルコムによると、全国3,000以上の病院をはじめ、多くの医療機関や介護サービスの現場での導入実績があるそうだ。ただし、医療機関によって個人によるPHSの使用や持ち込み禁止場所などを定めている場合もある。

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編集部:関口哲司
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