「TPPは好機。品質で日本と勝負する時期だ」と意欲満々のカナダ・サンテラ社(千葉市の国際展示場で)

写真拡大

 海外の豚肉生産者が、国内産の供給量が落ち込む日本の市場に売り込もうと懸命だ。千葉市の国際展示場で9日まで開くアジア最大級の食品展示商談会「フーデックス」には、豚肉生産国が続々と出展。知名度のある米国やカナダは、低価格路線ではなく高級志向のブランド肉を提案する。環太平洋連携協定(TPP)の発効を控えるカナダは「絶好の風が吹く」と意気込む。輸入物に対抗するには、その手の内を知ることも重要。各国の戦略を探った。(齋藤花)

高価格も自信 米国 TPP追い風 カナダ


 フーデックス会場で、米国のスミスフィールド・フーズの展示ブースから焼き肉の香りが立ち上ると、たちまち人垣ができた。

 同社はバージニア州に本社を持ち、85万頭の母豚を飼養し、養豚から加工まで手掛ける世界最大の豚肉生産業者だ。日本には冷蔵と冷凍肉を出荷する。スタールバウマー常務は「日本市場を念頭に置いた規格と、完璧なトレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)」と自信満々に説明する。

 同社はプリマハム、エスイーなど国内大手食品メーカーと提携し「大平原健やかポーク」「麦仕上げ三元豚」など、ブランド商品の販売も行う。同社は「日本市場でカナダ産が伸びてきている。負けずに消費者にPRをして販売を伸ばしたい」とライバルを意識する。

 8日にもチリでTPP加盟11カ国が署名し、発効手続きが進む。カナダはTPPを追い風にしようと攻勢をかける。

 サンテラ社は、日本への生鮮豚肉輸出で25年の実績を持つ。全生産量の85%を輸出し、うち7割が日本向けだ。「TPPは絶好の風。豚肉の関税が下がれば、さらに輸出が伸ばせる。今年は出荷量が1、2割増えるだろう」とプライス社長は見込む。日本産以上の高級ブランド豚の生産を目指し、「低価格路線ではなく、品質で日本産と勝負する」と言い切る。

 同社は2000ヘクタールの農地で飼料用大麦を作り、夏も冬も豚舎を適温に保つ生産と、日本の消費者の求めるカット、食感を追求。「毎週、日本の取引先の意見を聞き入れ、経営に反映させている」と同社長。展示では、日本人好みの霜降り豚肉の薄切りの試食を振る舞った。

健康志向狙い フィンランド


 実績が少ないフィンランドも、日本市場を狙う。HKスカン社は2016年にオメガ3系脂肪酸を含み、飽和脂肪酸の少ない「オメガ3ポーク」を開発した。オメガ3系脂肪酸は炎症抑制作用があり、血管壁に付いた悪玉コレステロール除去などの働きをするという。

 香港への輸出を始めたという同社のハカライネン国際販売部長は「健康意識の高い日本の消費者のために開発したと言っても過言でない」と話す。「来年から取引ができるように、商談をまとめたい」と意気込む。

 この他、スペインも同国貿易投資庁の音頭で穀物育ちの豚のPRなどを行った。

 財務省の貿易統計によると、17年の豚肉輸入量は93万2069トンと初めて90万トンを上回った。国産と競合する冷蔵品が増え、全体量は10年前の2割増となった。

 カナダにとって日本は第2位の豚肉輸出先。カナダ政府は日本への輸出拡大を見込み、世界への総輸出量を17年の138万トンから18年に145万トンに増やす予定だ。

 米国農務省(USDA)によると、18年の輸出量は前年比5%増の約270万トンを見込む。自国生産を増やした中国への仕向けを減少し、他国市場への輸出拡大を図る。