「飲むアルコールの種類によって、もたらされる感情が変わる? 21カ国での調査から明らかに」の写真・リンク付きの記事はこちら

人間の感情はもともと不安定だが、それを操る手段としてアルコールは非常にすぐれている。嬉しいときに飲めば気分はさらに上がり、悲しいときに飲めば気分はさらに下がる。エネルギッシュにもなるし、リラックスもさせてくれる。過去についての後悔があっても、短期的には忘れさせてくれる(新しい後悔が生まれるかもしれないが)。

だからといって、実はすべての酒が同じように感情を操る力を提供するわけではない。「BMJ Open」に発表された新しい論文によると、21カ国の約3万人を対象に行われた飲酒に関する調査から、酒を飲む人は異なった雰囲気と目的を求めて、異なった種類のアルコールを飲もうとすることがわかった。

赤ワインを飲むと「リラックスできる」

例えば、回答者の約53パーセントが、赤ワインを飲むとリラックスできると考えており、60パーセントは眠くなると報告している。このため、クリスマス休暇に短気な親戚を大人しくさせる酒を探しているなら、熟成したメルローがいいだろう。

もっと一緒に楽しめそうな客には、カクテルがお勧めだ。回答者の約60パーセントが、カクテルはエネルギーを与えてくれるし、気分が向上すると考えている。また42パーセントが、カクテルを飲むとセクシーな気分になると述べている。だが、短気な親戚にマティーニ(ジンとベルモットのカクテル)は飲ませない方がいいだろう。回答者の約30パーセントが、蒸留酒を飲むと攻撃的になると答えているのだ。

この研究は、英NHS(国民保険サービス)の一部局であるウェールズ公衆衛生局(Public Health Wales)のキャサリン・アシュトンを中心として行われたものだ。同局に勤務している共同執筆者のマーク・ベリスは、次のように述べている。「何世紀にもわたって、ラム、ジン、ウォッカなどの蒸留酒の歴史には暴力が付き物でした。今回の世界的な研究により、蒸留酒は今日でも、ほかのアルコールと比べて攻撃的な感情につながりやすいことがわかりました」

鎮静効果のある選択肢としては、ビールもお勧めだ。回答者の約50パーセントが、ビールを飲むとリラックスできると答えている。また、45パーセント近くが自信を感じる、38パーセントが眠くなると報告している。

すべてのアルコールのなかで、最も感情を左右しなかったのは白ワインで、どの感情とも強い関連性を示さなかった。だが18パーセントは、白ワインを飲むと疲れを感じると回答している。

ただし、自己申告でバイアスあり

この研究では、年齢、性別、出生国、教育レヴェルといった一部の人口統計データが考慮されている。その結果、女性と若年者は、感情を飲酒と結び付ける傾向が高いことがわかったが、その感情に攻撃性は含まれていない。これに対して男性は、あらゆる種類のアルコールに攻撃性を結び付ける傾向が高かった。だが今回のデータは、ビールを飲む男性は蒸留酒を飲む男性より攻撃性が低いという、以前の研究結果を裏づけるものでもある。

今回の研究には多くの限界がある。まず、これが自己報告データに基づく観察研究であるという点だ。また、自分の状態を思い出す際にさまざまなバイアスがかかるという問題もある。特定のアルコールを飲みながらどんな行動をしていたのか、アルコールをミックスして飲んだのかどうか、特定のアルコールを飲み始めた時点ではどんな気分だったのかといった多くの要素が絡み合っている。

それでもこの調査結果は、飲酒問題に介入する際に役に立つ可能性がある。調査に携わった研究者たちは、このデータを参考にすれば、「アルコール消費行動をより深く理解でき、特に飲酒量の多い人に対して、酒量変化を促す戦略や介入に関する情報を得ることができる」と述べている。