名門・東芝も無理筋の要求に四苦八苦

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東芝」vs.「監査法人」泥沼闘争を実況中継(下)

 巨額損失を出した東芝が上場廃止の危機に瀕している。原因は監査を担う「PwCあらた監査法人(以下PwCあらた)」との「冷戦」だ。次々と難しい内部調査を求められ、何とかやり遂げたら「ちゃぶ台返し」。いつになったら決算を承認してくれるのか。決算書には載らない東芝と監査法人のバトル実況中継、後編である。

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 3月10日、東芝の監査委員会は、追加調査の報告骨子をPwCあらたに伝える。結果はここでもシロ。もはや、調べは尽くした、と思っていたら、またもや「NO」である。

「今度も、アメリカのPwC本社によるちゃぶ台返しでした。レポート提出直前になって、新日本監査法人が担当していた時代(15年度以前)に遡っての調査など4項目を突きつけてきたのです。一体どこまでやれというのか、底なしの要求です」(関係者)

 いくら信用を失っているとはいえ、最初から決算を承認するつもりがないのではないか。東芝サイドは、そんな疑心を抱くようになる。PwCあらたとの間に、冷たい風が吹き始めていた。

名門・東芝も無理筋の要求に四苦八苦

 3月14日、東芝は決算発表を再延期、翌日には上場廃止の恐れがあるとして「監理銘柄」の指定を受ける。株式上場68年にして屈辱の事態だった。

全員引き揚げ

 通常、4月に入ると、東芝は通期の業績予想を明らかにする。だが、今年は前年度の第3四半期決算も発表できないでいた。

「調査結果が出そうになると急にアメリカのPwC本社が出てくる。そこで言われるのは、最初の調査の蒸し返し。どこまで調べたらいいのか聞くと“自分で考えろ”です。日本側の公認会計士に言っても“アメリカが認めないので”と取り合ってくれない」(同)

 4月9日、業を煮やした東芝は、これまでの調査をまとめた「包括報告書」を提出。これに対して、PwCあらたは4月11日に「意見不表明」という手段に出る。また、綱川智社長が「これ以上、調査を続けても意味がない」と発言すると、PwCあらたは実力行使に出る。

「4人の公認会計士を含めたスタッフ全員が東芝本社から引き揚げ、1カ月近く、監査業務が中断するという事態になったのです」(全国紙経済部の記者)

 5月15日、東芝は「意見不表明」のまま9500億円の最終赤字となる見通しを発表し、半導体部門の売却に着手せざるを得なくなる。定時株主総会では綱川社長が、ひたすら陳謝するばかりだった。そして、決算提出の期限はまたもや延ばされ、デッドラインは8月10日に設定された。

「制度的には、さらに延期することも出来ますが、有価証券報告書に虚偽の記載が見つかるなど、よほどのことがないと認められません。もし、その日までに延期が認められないと、8営業日後に上場廃止が決まります」(関係者)

“監査無用論”

 さて、こうした事態を、企業会計の専門家はどう見ているのだろうか。青山学院大学大学院の八田進二教授が言う。

「PwCあらたの『意見不表明』は、日本の会計制度では極めて異例です。監査補助を務めるアメリカのPwCに主導権を握られているのではないか。彼らは日本の東芝が上場廃止になっても関心はなく、自分たちの責任回避に重きを置いているように思われます。そもそも、こんな事態になってしまったのは東芝に責任がありますが、このまま意見不表明を続けると“監査無用論”が出てくる可能性もある」

 上場廃止になれば株価は暴落必至。株主も打撃を受けるため、固唾を飲んで見守っているに違いない。最近では、PwCあらたが、「意見不表明」でなく、決算そのものを認めない「不適正意見」を出すという報道も流れている。

 そこで、当のPwCあらた代表執行役の木村浩一郎氏に聞くと、

「守秘義務があるので個別の話は出来ませんが、事態の重大さは認識しているつもりです。アメリカのPwC本社に指示されてやっているわけではありません」

 酷暑が続く空のもと、東芝の「運命の日」は日一日と近づいている。

「週刊新潮」2017年8月3日号 掲載