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●舞台『Wake Up, Girls! 青葉の記録』開幕
『Wake Up, Girls!』初の舞台劇『Wake Up, Girls! 青葉の記録』が2017年1月19日〜22日の期間、東京・AiiA 2.5Theatre Tokyoにて上演される。今回は、1月19日昼に行われた初演の模様をレポートする。

『Wake Up, Girls!』は、震災後の仙台と密接にリンクした物語と、作中に登場するユニット「Wake Up, Girls!」のキャストとして公開オーディションで全国から経験の新人を選抜し、選ばれたキャストとキャラクターをリンクさせる(キャラクターに声優と同じ読みの名前をつけて、設定や言動などにも演者らしさを取り入れていく)という「ハイパーリンク」が特色のアイドルコンテンツだ。2014年1月にはTVアニメと劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』を同時に公開する独特の手法が話題となり、2015年後半には「Wake Up, Girls!」が東京で新たな挑戦をして大きな壁にぶつかり、再び仙台から再出発する続・劇場版『Wake Up, Girls! 青春の影』『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』が公開された。そして2017年には、TVアニメ『Wake Up, Girls! 新章』の放送も決定している。

そんな『Wake Up, Girls!』初の舞台劇が『Wake Up, Girls! 青葉の記録』。主人公ユニットの「Wake Up, Girls!」に関しては、島田真夢役を吉岡茉祐、林田藍里役を永野愛理、片山実波役を田中美海、七瀬佳乃役を青山吉能、久海菜々美役を山下七海、菊間夏夜役を奥野香耶、岡本未夕役を高木美佑といったとおり、アニメ版の声優キャスト本人が舞台でも同キャラクターを演じている。一方、WUGのライバルであり、中央(東京)の象徴である巨大アイドルグループ「I-1 club」の選抜メンバー7人は、大半が舞台版の新規キャスト。島田真夢の親友でもある吉川愛役を元AKB48の岩田華怜、日英ハーフで長い金髪が印象的な小早川ティナは「プリティーリズム」シリーズなどで主題歌を担当したPrizmmy☆のメンバー・日下部美愛が担当している。演劇畑のキャストもいれば、ほぼこの作品が初舞台というキャストもいるバラエティ豊かなメンバーとなっているが、島田真夢とは因縁浅からぬライバルである「I-1 club」のセンター・岩崎志保役だけはアニメ版で声優を務めた大坪由佳が舞台でも同役を担当している。

●成長した今の「Wake Up, Girls!」が演じる面白さ
○舞台ならではの7人の姿を、成長した今の「Wake Up, Girls!」が演じる面白さ

ここからは幾分かのネタバレが含まれることを事前に断っておきたい。なお、舞台版はアニメ劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』と同時期、仙台でWUGが結成される前から物語がスタートすることは公演前から公式サイトで既に公開されている。

アニメと本舞台の最大の違いはといえば、I-1 clubの存在感だろう。『七人のアイドル』ではI-1 clubは印象的なシーンの数々や緻密な設定を垣間見せながらも、あくまでも物語の主体はWUGであるという方針が貫かれていた。舞台版では演劇という作品媒体の特性もあって、I-1サイドのシーンや台詞をかなり膨らませている印象だ。その分白木ゼネラルマネージャーのようなアニメ版の重要なキャラクターの出番がバッサリとカットされており、地方から立ち上がる弱小アイドルWUGと、トップを走り続けるがゆえの苦悩も抱えるI-1 clubとの対比により重きが置かれていると感じられた。WUGとI-1のステージを舞台の上下で同時に見せるような見せ方は舞台ならではだろう。脚本に関してはアニメと同じく待田堂子氏がクレジットされており、足して引いてのさじ加減に抜かりはない。

キャストに注目すると、WUGの7人は声優キャスト自身がステージでも演じているので、やはり違和感は少ない。一番キャラクターとの落差と戦っていたのは、永野だろうか。林田藍里はショートカットでダンスが苦手、永野愛理はロングヘアーでWUG一番のダンス番長というのは真逆にも思える。しかし永野は、うつむいて髪の毛を隠すようにして、最初の頃の藍里の自信のなさと内に抱えたアイドルへの憧れという、藍里の感情をしっかりと演じてみせた。これは長年演じてきたキャストにしかできない、外形だけを似せるよりも難しい挑戦だろう。逆に、元モデルの七瀬佳乃というビジュアルが洗練されたキャラクターを演じる青山は、年齢が近かった4年前より、役者として女性として洗練された今のほうが舞台での在り方がぴったり合っていたように思う。

WUGの7人に共通していたのは、劇場版『七人のアイドル』に近い脚本だからこそ、当時右も左もわからず体当たりで演技していたころより、感情の積み重ねを踏まえた演技が数段進化していて、特に吉岡の「慟哭」や「感情の高まり」の芝居に関しては演者の感情の高まりにこちらが持っていかれるほどだった。もちろん、アフレコと舞台の演じ方は違う部分もある。夏夜を演じる時はマイク前での演技に特化して普段とは違う声を演じている奥野が、声を張った「叫び」に夏夜らしさを乗せていたのは舞台ならではの工夫と進化だろう。逆に、高木や田中がステージでも「キャラクターそのまま」に自分を寄せていく姿はすごかったし、菜々美のあの声質の美少女を生身で演じられるのは山下七海以外には考えられないほどだった。

演出として印象に残ったのは、プロジェクションマッピング的な手法だ。白地の背景パネルに、「事務所」が映し出されていたのが、次の瞬間には仙台の町並みが投影されていたりする。季節の移り変わりを投影映像でスムーズに表現できるのは素晴らしく、このあたりは、イベントやライブ演出にもプロジェクションマッピングを取り入れてきた「Wake Up, Girls!」ならではかもしれない。

そして忘れてはいけないのは、WUGを支え、引っかき回す存在である丹下社長と松田の舞台ならではの存在感だ。特に圧巻だったのが田中良子演じる丹下社長。アニメで日高のり子が演じる丹下社長とは声質が全く違うのに、演技の呼吸が近いというのだろうか。強引で豪腕で短気でマイペースで、でも情には厚く目が利く丹下社長というキャラクターが現実にいればこんな感じだろうか、というイメージを具現化したような存在感。「オーラ」などという抽象的なものを演じきる舞台役者のすごみを体現する演技だった。一方、一内侑演じる松田は、誠実で頼りないが憎めない感じで、舞台ならではのまた微妙に違う味付けで、物まねではなく、一内流の松田として真夢たちに体当たりでぶつかっていく姿に好感が持てた。

声優自身が演じる舞台であり、声だけの演技とはまた違う魅力がある。似た物語を違う形で演じながらも数年前からの成長を端々に感じられるのは、作品と一緒に育ってきた「Wake Up, Girls!」のメンバーにしか表現できないハイパーリンクだろう。新しい表現があるのはもちろん、新曲も用意されているので「Wake Up, Girls!」が好きなファンにも新しい発見があるし、作品を知らないファンにも間違いなく楽しめる上質な舞台劇に仕上がっていた。週末のチケットは完売しているようなので、少しでも興味がある人は金曜日昼夜公演の当日券を入手してみてほしい。

公演後に、そのままステージ上でミニライブが行われたのも「Wake Up, Girls!」ならでは。4年間磨き上げられた「Wake Up, Girls!」のパフォーマンスはもちろん、ライブで舞台新曲「Knock out!!」を披露した「I-1 club」も、様々なバックボーンの7人が、この舞台のためだけによくぞここまで……というほどのパフォーマンスを見せてくれた。最後はWUGとI-1が一緒に歌う「極上スマイル」で、ステージは幕となった。

○ミニライブ初日昼公演セットリスト

M-01 ゆき模様 恋の模様/Wake Up, Girls!(新曲)
M-02 Knock out/I-1club (新曲)
M-03 少女交響曲/Wake Up, Girls!
M-04 極上スマイル/Wake Up, Girls!&I-1club

●キャスト陣からのメッセージを紹介
○初回の公演を終わっての感想と明日以降の意気込み

◆Wake Up, Girls!

○島田真夢役 : 吉岡茉祐
あっという間に本番を迎えてしまいました。「七人のアイドル」時代の7人に少しでも近づけられていたらいいなと思っています。ラストまで頑張ります!

○林田藍里役 : 永野愛理
今までにないくらいの初めての緊張を味わいました。終始ドキドキしていましたが、今はホッとしています。私達も初挑戦のことばかりで不安なこともありますが、精一杯演じるので一緒に楽しんでくださるとうれしいです。

○片山実波役 : 田中美海
とにかく…なんとかおわったー!!って感じです。まだ1公演目だけど…笑。泣くのをガマンしてこれからの公演も頑張ります!!

○七瀬佳乃役 : 青山吉能
一言、とっても楽しかったです!!(^o^) しかし、ミスも多くて…くやしい…。これからどんどん佳乃との融和をしていけたらいいなと思います!改めて、WUGというコンテンツがすさまじいとみせつけられると確信しています。

○久海菜々美役 : 山下七海
初日昼公演、無事に終わってほっとしました〜!! I-1さんと円陣を組んだりもして、とっても楽しく初日を迎えることができました。残りの公演もみーんなと頑張っていきますっ!

○菊間夏夜役 : 奥野香耶
舞台初日、緊張しましたが、7人で目を合わせて"大丈夫、大丈夫"と言い合うと本当に心強くて、改めてこの7人で良かったなと感じます。きっと公演を重ねるほどその想いが増していき舞台も進化していくと思うので、最後までよろしくお願い致します。

○岡本未夕役 : 高木美佑
初回公演、無事終了して良かったです!ひとまず、ホッとしました。始まる前ドキドキしてたのですが、前説の時点であたたかい声援が聞こえてきてとても安心して、舞台に立てました!まだまだ公演続きますので、ますますパワーアップできるように未夕らしく、元気に頑張ります。

◆I-1club

○岩崎志保役 : 大坪由佳
舞台版でも志保を演じる事が出来て嬉しかったです!舞台版でしか見えないパフォーマンスを一公演一公演大切にし、全力で頑張ります!

○近藤麻衣役 : 小山梨奈
初日ご来場頂いた皆さまありがとうございました。近藤麻衣ちゃんを演じることができて嬉しいです。舞台版限定のI-1clubということで、不安な気持ちもありましたが、ワグナーの皆さまのあたたかさに胸がいっぱいになりました。舞台版ならではのI-1clubをお届けできるよう、千秋楽まで全力で駆け抜けます!

○吉川愛役 : 岩田華怜
本日はご来場誠にありがとうございました!今日まで歌、ダンス、お芝居共に、みんなで試行錯誤しながらたくさん練習してきました!少しでもI-1clubに近づけていますように…♡私の地元仙台が舞台の「Wake Up, Girls!」という大好きな作品にこうして携われた幸せを噛み締めながら、千穐楽まで駆け抜けます!1回と言わずに何回でも観に来てください♡

○相沢菜野花役 : 水原ゆき
まずはご来場頂き、ありがとうございます!初日昼公演、サイリウムで埋めつくされた劇場に感動しました!あったかいワグナーの皆さまにありがとう!見守ってくれているスタッフの皆さまにありがとう!そして、WUGちゃんのみんなにありがとう!千秋楽まで、I-1club一丸となって変わらぬ笑顔とパワーを届けたいと思います!

○鈴木萌歌役 : 山下夏生
初日のご観劇ありがとうございました!!皆様の暖かい声援を感じ、最後まで楽しくやり遂げることができました。そして明日以降お越しになる方も、とにかく見どころ満載の舞台ですので、楽しんで頂けたらと思います。WUGちゃん、I-1、どちらもたーくさん応援して下さい!お待ちしております。

○鈴木玲奈役 : 立花玲奈
私にとってこの舞台が初舞台で緊張もしたのですが、ワグナーのみなさんのあたたかい声援が熱量に変わり、とっても楽しかったです。役作りのために前髪を作ったり、ヤル気は満々です!今回の舞台で神戸から上京して、色々な出会い、学びがあり、すごく感謝しています。精一杯頑張りますので、残りの公演もよろしくお願いします!

○小早川ティナ役 : 日下部美愛
今回の役が金髪だったので、なるべく自然に、観ている人も気にならない感じにしたかったので、自分の髪を金髪に染めたり…。演技もティナちゃんに近づけるように、アニメなど何回も見たり、自分にしかできない"小早川ティナ"を演じられるように千秋楽まで気を抜かずに全力で頑張りたいです!

(C)Green Leaves / Wake Up, Girls!2製作委員会

(中里キリ)