大相撲のテレビ中継を観ていると、観光客らしき外国人の来場者に気づく。カメラマンが意識的に映しているのかもしれないが、それにしてもここ最近は増えている印象だ。

 2016年の訪日外国人は、史上初めて2000万人を突破した。人数が増えればニーズも多様になる。スポーツ観戦も選択肢に入ってくるのだろう。

 日本相撲協会のホームページにも、英語版が用意されている。チケット購入方法の説明も分かりやすい。始まりは何時で終わりは何時くらい、といった観戦の手引きもある。

 Jリーグはどうだろう。僕が取材で訪れるスタジアムは、ほぼ首都圏に限られている。その範囲内で考えると、スタジアムに外国人観光客は多くない。ほとんどいない、と言ってもいい。

 サッカーは世界でもっとも大衆的なスポーツだ。自分の国の選手がJリーグでプレーしていなくても、「タイミングが合えば見てもいいかな」という人はいるような気がする。タイミングを「きっかけ」に置き換えてもいい。

 新宿や渋谷で買い物をするなら、その前後に味の素スタジアムへ行くことに無理はない。池袋を起点に動くなら、埼玉スタジアムやNACK5スタジアム大宮を行動範囲に加えられる。横浜ならもちろん、ニッパツ三ツ沢球技場である。

 訪日外国人を誘導するために、Jリーグは、各クラブは、「タイミング」を提供できているのだろうか。これが物足りない。

 たとえば、新宿駅の高速バスターミナル『バスタ新宿』は、英語、フランス語、中国語、韓国語、タイ語に対応した無料Wi-Fiを用意している。それだけ利用者が見込まれているわけだが、施設内にJリーグのポスターなどが貼ってあるだろうか。

 どこにも、ない。年間を通して外国人観光客が足を運ぶデパートで、Jリーグの情報を得ることができたら──サッカー観戦のタイミングを提供することにつながると思うのだが。

 そもそも、訪日外国人にとっての窓口となる成田空港や羽田空港で、Jリーグのロゴを見つけることができない。この国のプロリーグはいつからいつまで開催され、どこにチームがあり、どうやったらスタジアムへ行けるのかを、すぐに伝えることができていないのだ。

 Jリーグやクラブのホームページに、日本語以外の言語を用意するのは最低限の準備でしかない。Jリーグの放映権をアジアなどの国外へセールスするだけでなく、アジア枠を使って外国人選手を補強するだけでもなく、訪日外国人をどうやって取り込むのかも考えていってほしいものだ。