「最後の攻撃を仕掛ける!」「ダメだった!」「諦めよう!」

熱戦つづくプロ野球日本シリーズ。第4戦は終盤までもつれた試合を日本ハムが逆転勝ちでものにして、通算2勝2敗のタイに。これで再びマツダZOOM-DOKOスタジアムに戻って、真っ赤に燃える最終決戦が行なわれることが確定しました。他人事ながら熱い、他人事ながら燃える、面白いシリーズになってきました。

第1戦・第2戦ではシーズンを制した「勢い」そのままに、セオリー無視の野球で日ハムを撃破したカープ広島。それに対して、大谷翔平という異次元超人のチカラで、勢いを押しとどめるほどの「恐怖」を第3戦で与えた日ハム。いよいよ五分と五分の戦いが始まる。この興奮を前に、僕の先輩が会社の会議室に大量のビールを運び込んだのは、決して責められるようなことではありません。ホワイトボードに書き込んだ「打」の文字。もちろんそれは打ち合わせではなく、野球の「打」です…!

日本ハムの先発は高梨、広島の先発は岡田という顔合わせ。高梨は序盤から「行けるところまで」という飛ばし具合で、広島打線をノーヒットにおさえる立ち上がり。一方で岡田は序盤から不安定で、初回から3回まで毎回ランナーを三塁まで進める立ち上がり。今季成績を見ても高梨は10勝をあげており、一本出れば大差の試合になりそうな雰囲気も。

しかし、先に試合を動かしたのはカープ広島のほう。4回表の広島の攻撃は、先頭の丸が四球で出たところから始まります。前の回に二死一塁という状況から盗塁をし忘れた後悔があったのか、広島ベンチは「無死一塁、打席には4番の新井」という状況で盗塁を敢行。「新井の長打にまったく期待してないベンチ」「中村ノリなら怒って退団するレベル」「さっきの後悔ひきずりすぎ」と戸惑う声が上がるなか、ここは日ハム・大野が好送球で盗塁を刺します。広島の無鉄砲機動野球に少しずつダメージを与える刺殺です。

普通ならコレで意気消沈するところなのですが、新井が四球を選び、ひとり倒れて二死一塁となったところで、まさかのプレーが。エルドレッドが打ち上げた外野へのフライに、日本ハム守備陣は4人が駆け寄ります。極端な話「4人の誰でも追いつきそう」な状況から、一番遅れてやってきたライトが「俺に任せろ」と猛然と突進。猛然突進のあまりボールを行き過ぎてしまいました…!

↓完全に打ち取った当たりを、連携ミスで落球!まさかのエラーでカープ広島が先制!


ハム:「オーライ!」
ハム:「オーライ!」
広島:「結果オーライ!」

横浜VS広島とかでありそうな展開やんけ!

こういうのがつづくと「神ってる」気がするのかもしれんね!

ノーヒットで先制するというラッキーエラー。久々に訪れた好兆は、5回表には二死ながら満塁というチャンスの形で広島に勝機を運びます。しかし、ここで4番・新井は初球でポップフライを打ち上げる、もったいないバッティング。バットを地面に叩きつける姿には、「バットのせいじゃないだろ」「地面じゃなく頭に叩きつける場面」「今気づいた、コレ阪神の新井だろ」などの声が会議室でも一斉に上がります。

一方、日本ハムは6回裏に先頭打者の4番・中田翔がレフトスタンドに叩き込む同点ホームラン。まだ6回なのにいつの間にか守備固めでレフトに入っていた広島・野間の頭上をどでかい一発が越えていきました。「守備固めせず後逸」「前進守備せずサヨナラ」につづく「昨日のことをひきずった早すぎる守備固め」というマシンガン緒方采配には、パ・リーグ勢を中心として「工藤よりヒドイ」「工藤以下の戦力で工藤以下の采配」「よく優勝できたな」という感嘆の声が。巨阪中の弱体化は深刻なようです!

↓第3戦のタイムリーにつづき、第4戦では貴重な同点ホームラン!さすが中田翔!


「中田が打たなくて負けるなら、しょうがない」というチームとしての揺るぎない信頼!

コロコロ変わるようで、絶対に変わらない芯のあるチーム、それが北海道日本ハムファイターズ!

これが頼れる4番だ!

迎えた8回表、広島の先頭・新井が四球で塁に出ると、広島ベンチは迷わず代走を告げます。絶対にこの回に1点取るという強い意志。延長15回などまったく想定していない必勝の決意。「もう1周することは考えてないのか」「日本シリーズは延長15回まであるが」「4番への揺るぎない信頼って一体…」などと言うのは、勝負師の直感への愚弄というもの。見切りの早い智将・緒方はココを最後の勝機と見て、勝負をかけたのです。ココでダメなら今日は負けでいい、それくらいの気持ちで…!

↓で、何やかんやで最後の勝機が無得点で終わったカープ広島は、DHを解除して「今日は負けでいいです」の捨てゲームに突入!

早すぎる守備固めで松山が引っ込む

新井に代走を出して新井が引っ込む

ファースト誰が守ればいいんや

小窪は代打で残しておきたい

エルドレッドが守れるな

エルドレッドのDHを解除して守らせよう

よっしゃ!

いや、よっしゃじゃねぇだろwwwww

野手を使い切る前にDH解除するとかwwwww

確かにDH解除というのは、たまに見る現象ではあります。総力戦で野手を使い切ったとか、DHに代走を出してそのまま守備固めに入れるとか、戦略的に解除するケースもないわけではありません。パ・リーグでもときどき投手が打席に立ってバットをブン回しています。ただ、ファーストという一番替えがききやすそうなポジションの事情でDHを解除するのは珍しい。そして、「DH」という「守備は下手だけど打てる」選手用の特別待遇の放棄に至る原因が、レフトへの早すぎる守備固めだとすれば、試合途中でいろいろと考えすぎかもしれません。やはりカープ広島には、何も考えずに勢いでドーンといく野球のほうが向いているのでしょう。

いっそ「そんなに守備を固めたい選手」がいるなら、そういう選手をこそDHで使うのがよかったかもしれません。そうすれば、守備は最初から固まり、打棒は十分に活かすことができ、新井さんはポップフライを打ち上げることもなく代打の切り札として温存できた。結局9回の守備固め・野間の打席では代打が送られるワケですが、ここに新井さんを送り出すことができていれば、打てなくても納得の打席だったように思うのです。「どっちが出ててもどっちみち打ててない」という納得感で…。

↓カープ広島が捨てゲームとした直後の8回裏、日ハムはレアードのツーランで勝ち越し!


勝負って怖いwww

捨てた途端にこうなったwww

最終回、日ハムは満を持して守備固めの陽岱鋼を投入し、それまでセンターにいた岡をライトにまわします。一死からライトに飛んだ大飛球を岡がビッグプレーでキャッチしたのは、やるべきときにやるべきことをやっているからこそ。偶然ではなく、「固めるべきときに守備固めをした」ことが功を奏したプレーでした。

そして、二死ながら満塁のピンチを迎えてからのラストバッター・丸との勝負。日ハムバッテリーはボール球中心での組み立てとなり、最後もボール球を振らせての決着となりますが、そこには「次打者が投手」という頭があったはず。もちろんカープ広島は代打を出すでしょうが、誰がきても丸よりいいバッターではないのです。

しかも、「早すぎる守備固め」「代走だけで引っ込む野手浪費」「守備固めへの代打」「普通の代打」と代打のカード自体をほぼ使い切っていた。「押し出しで1点やっても、次の代打をおさえればいい」という余裕が、四球でも構わないという配球を可能にさせたのです。これぞ日ハム野球。圧倒的に強いとは思わないが、接戦になると小さなリードを拾って勝ってしまう、「日本一野球が上手い球団」の真骨頂。

やはり広島は「勢い」で上回るしかないのではないか、4試合を見て改めて思います。細かい勝負では日ハムが一枚も二枚も上。考え始めたら日ハムの思うツボです。希望としては第7戦まで見たいというのがありますので、何とかあとひとつは勝ってほしいところ。自分を信じて、ドーンと行く。相手を気にせず、ドーンと行く。普段バントしてない選手にバントさせたりするのはやめて、普段着の勢い野球でいきましょう!

いっそ最初からDH使わないほうが、わかりやすいかもしれませんよ!