HRレビュー 編集部 / 株式会社ビズリーチ

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「構造化面接法」は判断基準を標準化し、採用確度を飛躍的に高める

採用活動における課題の一つに、「面接官による評価のバラつき」があります。面接の評価は個人の主観による部分が少なくなく、面接官によって評価・判断が分かれるケースが起こりやすいものです。この評価のズレによって、優秀な人材を逃してしまったり、反対に期待に反した人材を採用してしまうことも。評価のズレが起きないよう、候補者見極めの判断基準を標準化できれば、採用確度は飛躍的に高まることでしょう。そのための効果的な面接手法としておすすめしたいのが「構造化面接法」です。優秀な人材を多数獲得し、革新的な事業を次々と世に送り出しているGoogleでも採用されている手法です。

構造化面接法は、まったく新しい面接手法というわけではありません。臨床心理学におけるアセスメント(心理査定)のアプローチの一種として、古くからある面接手法です。その方法は至ってシンプルで、「あらかじめ評価基準や質問項目を決めておき、手順通りに実施していく」というもの。つまり、マニュアルに沿って実施することで、誰が面接官を務めても面接の評価が安定しやすくなるのです。

臨床心理学の面接法と聞くとピンとこない方もいるかもしれませんが、面接を受ける側の内的心情を把握するのに優れているため、近年は採用の世界でも注目を集めています。その一例がGoogleです。同社人事部のブライアン・ウェル氏は、2014年に社内で行われた講義でこう述べています(YouTubeより)。

ここ数年でGoogleは構造化面接法という採用方法を確立し、実施しています。これにより、候補者たちをふるいにかけるような意地悪な質問はなくなり、募集ポジションの仕事内容のデメリットや、そのポジションで求められているものを掘り下げて理解するようになりました。
Googleでは面接官に、募集ポジションを十分理解したうえで面接に臨んでもらうよう徹底しており、もし同じポジションで5名の候補者と面接する場合は、その5名全員が同じ質問を受けられるようにしています。
この面接方法は機械的だと指摘する方もいますが、非構造的な面接は採用には向かないという研究結果が出ています。構造化面接法を実施すれば、募集ポジションに最適な人材を採用しやすくなるのです。

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構造化面接法なら、面接官による評価のバラつきを抑えて、募集ポジションに最適な人材を効率的に採用できるのです。また、候補者にとっても公平な選考を受けられるというメリットがあります。では、構造化面接法を実践するには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

ここからは、Googleの事例を交ぜながら紹介していきます。

ポイント1 「行動面接」「状況面接」で候補者の志向と誠実さなどを見極める



Googleの構造化面接法は、「行動面接」と「状況面接」の2つを組み合わせて設計されています。行動面接とは、候補者の過去の行動を掘り下げる質問を投げかけていく面接のことです。行動は、候補者の資質や性格から生まれるもので、行動を分析すれば、その背後に隠れている真の能力や志向性、誠実さを測ることができます。たとえば、「あなたがこれまでの仕事でもっとも苦労した経験を教えてください」といった質問を皮切りに、当時の状況(Situation)、その時抱えていた課題(Task)、どのような行動(Action)をとったか、どのような成果(Result)が出たのか、順に掘り下げて聞いていきます。行動面接はこれらのアルファベットの頭文字を取って「STAR面接」とも呼ばれます。

行動面接(STAR面接)の質問例

Situation:状況

「どのような組織のなかで、どのようなチーム体制でしたか」

「そのなかであなたはどんな役割でしたか」

「どのような責任と権限を持っていましたか」

Task:課題

「どのような業務目標を掲げていたのですか」

「どのようなトラブルだったのですか」

「問題発生のきっかけは何でしたか」

「なぜ問題点に気づいたのですか」

「いつまでに解決しなくてはいけなかったのですか」

Action:行動

「その課題をどうやって解決しようとしたのですか」

「どのような計画を立てましたか」

「とった行動を順に聞かせてください」

「チーム内外とどのように関わりましたか」

Result:成果

「課題はどれだけ解決できましたか」

「どれだけ計画通りに実行できましたか」

「足りなかった部分は何ですか」

「成果に対する周囲の反応はいかがでしたか」

「取り組みの後、どのような変化がありましたか」

一方、状況面接は、「もし、○○な状況にあったらどうしますか?」という具合に、面接官側で設定した架空の状況に対して、どのように考え、行動するのかを答えてもらうものです。こちらも行動面接と同様に、具体的な話を掘り下げて聞いていくことにより本音を引き出し、候補者の本質に迫ることができます。

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ポイント2 「想定質問」「誘導質問」を避け、候補者を公平に見極めることにフォーカスする

面接内容がマニュアル化している構造化面接法に対して、細かなルールを設けず面接官が自由に面接を行う手法を「非構造化面接法」といいます。構造化されていないからダメというわけではありませんが、構造化面接法と比べて、面接官による面接内容の差が生じやすくなります。たとえば面接で、「聞きたいことは聞けたはずなのに、終わった後に振り返ってみると、聞いた内容が浅くて候補者の見極めに迷ってしまう」という経験に心あたりがある方は、非構造化面接法で自分の聞きたいことに終始して、「想定質問」や「誘導質問」を多くしていたのかもしれません。

想定質問とは、候補者が事前に準備できる質問のことです。たとえば、「自社の志望理由を聞かせてください」「入社したらどんなことをしたいですか」といった質問は、候補者は「きっと聞かれるだろう」と想定し、適切な答えを用意して面接に臨んでいるケースが大半です。面接には、自分を少しでもよく見せようと入念に準備をしてくる候補者が少なくありません。入念な準備をすること自体はポジティブに評価できるのですが、その半面、面接で見せる姿や言動は取り繕ったものになりがちで、候補者の真の能力は見えづらくなります。

誘導質問は、企業側が期待している答えが相手に伝わってしまう質問のことです。「地方への転勤は可能ですか」といった質問は、「転勤してほしい」という企業の希望が暗に伝わってしまうため、とにかく入社したいと考えている候補者は、本心では転勤したくなくても「はい、可能です」と答えてしまうでしょう。その結果、内定を出した後に「やはり転勤できない」と内定を辞退されることも。誘導質問も候補者の本音は見えにくく、見極めが難しくなります。

想定質問も誘導質問も意図があって行うぶんには問題ありません。ただし、明確な意図がなければ注意が必要です。候補者の本質を見極めるにあたっては、想定質問や誘導質問をしてしまいがちな非構造化面接法は避け、構造化面接法で候補者の公平な見極めに焦点を絞ったほうがよいでしょう。

ポイント3 構造化面接法だけが正解ではない。柔軟な対応を

Google人事担当上級副社長のラズロ・ボック氏は米メディア「WIRED」の署名記事で、「採用面接の目的は、候補者が仕事に就いたときのパフォーマンスを予測すること。そのためには、面接では一つの方法に縛られるのではなく、いくつかの方法:構造化面接法のほか、一般的な能力認知テストや責任感や誠実度を測る検査、リーダーシップ検査などを組み合わせるほうが効果的ということが、過去の研究からわかっている」と述べています。

構造化面接法は、候補者の能力を客観的に見極める方法の一つであって、絶対的な方法ではありません。実際の選考は他の方法も織り交ぜて多角的に行うほうがよいでしょう。面接を受ける側にしてみると、面接がすべてマニュアル通りに進められて終わったら、「マニュアル通りにしか働けない会社だ」と思うかもしれません。また、採用面接の目的は、候補者の能力を見極めるだけではなく、他にもあるはずです。たとえば、面接ですぐに相手が優秀な候補者だとわかった場合は、見極めのための質問を早々に切り上げて、自社で働く動機づけを行うほうが時間を有益に使えるでしょう。面接はあくまでも、「候補者一人ひとりに寄り添って柔軟に行うこと」が前提なのです。

まとめ

構造化面接法で行う質問自体は真新しいものではないので、「日頃からやっている」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは個人の話であって、誰が面接官を務めても同じように実行できるよう標準化している企業は多くないと思われます。面接官によって評価基準がバラつくことに悩まれている方、候補者の見極めに苦労されている方は、構造化面接法を実践されてみてはいかがでしょうか。

(文:HRレビュー編集部 高梨茂)

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