車内の新スマホ・携帯電話の利用マナーが、モヤモヤする理由

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電車内での携帯電話、スマートフォンの使用マナーについては、今や誰でも知っているだろう。通話NGなのはもちろんだが、優先席付近では、「電源をお切りください」が定番だ。

このマナーは、携帯電話やスマホなどの電波が心臓ペースメーカーに「悪影響を及ぼす可能性がある」、ということで周知されてきた。

しかし、この10月1日から、JR東日本をはじめとする鉄道事業者37社局は、このマナーをちょっとだけ変更することになった。

●新マナー「混雑時には電源をお切りください」
すでに車内放送などで、マナー変更については案内されている。
耳にした人もいるだろう。今までは「電源をお切りください」だったのが、これからは「混雑時には電源をお切りください」となるのだ。
つまり規制が少しだけゆるくなったということだ。しかし、これを聞いてちょっとモヤモヤした人も多いのではないだろうか。

●マナー変更の意図は?
今回マナーが見直されたのは、2013年1月に行われた総務省の「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改正を踏まえてのことだ。

この改正では、携帯電話と心臓ペースメーカーのような植込み型医療機器を離すべき距離が、22cmから15cmへと縮小された。これに加え、昨今の携帯、スマホ事情を考慮すれば、「電源をお切りください」は少しやり過ぎだろうというわけである。

確かに、携帯の電波が心臓ペースメーカーに影響を及ぼすなんてことはほとんどあり得ないという意見は昔からあった。優先席付近の携帯マナーについても、気にしすぎだよという意見も多かった。

今回のマナー変更は、そういった点では納得のいくものではある。

●「混雑」ってどのくらい?
しかし、モヤモヤするのはなぜか。
それは「混雑」がどのくらいの状態を指すのかがはっきりしないからだ。

・席が埋まっていて、つり革も空きがないくらいなのか、
・はたまた山手線の朝のラッシュ時くらいなのか
人によって「混雑」と感じる度合いはそれぞれ違うだろう。
自分では、まだ「混雑」してはいないと思っても、もしかしたら他の人は「混雑」していると思うかもしれない。

なんだかそのあたりの判断を、こちらに放り投げられてしまったことが、モヤモヤの原因なのだ。

●必要なのは思いやり
優先席付近では電源OFFとなっている今でも、実際に優先席付近で電源まで切っている人はあまり見かけない。

それどころか、優先席に座りながら平気でスマホをいじっている人さえいるのが現状だ。そこに新しいマナーが導入されたらどうなるか。

「混雑していない」と思えば、電源を切る必要がないということで、堂々と使用する人が増えてしまわないだろうか。

心臓ペースメーカーを利用している人の中には、実際には影響がほとんどないとわかっていても、近くで携帯を操作されると恐いと思う人も多いそうだという。
至近距離で操作されないかぎり大丈夫だとはわかっていても、もしかしたら、と思うのだそうである。

犬が恐い人は、たとえリードが付いていても、飼い主にしっかり躾けられていても、今まで人にかみついたことはありませんよ、と言われても、同じ場所に犬がいるだけで恐怖心に囚われるそうだが、車内での携帯電話やスマホのマナーは、それとまったく同じなのだ。

「混雑している」、「混雑しないない」などと悩むのではなく、せめて優先席付近に立ったときくらい、携帯をいじるのをやめ、電源を切るくらいの思いやりを持ちたいものだ。