格安SIMよりさらに安い無料SIMがアメリカで登場 どんな仕組みとサービスなのか

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今や毎月数百円で利用できる"格安SIM"(MVNOキャリア)の人気が日本でも高まっている。
だが海外では、なんと無料でスマホを利用できるキャリアが登場している。
しかも、スマホ本体の値段も約1万円と激安だ。

いったいどうやって無料サービスを提供しているのだろうか?

無料SIMを提供しているのはアメリカの「Scratch Wireless(スクラッチ・ワイヤレス)」。
同社がサービスを開始したのは約1年半前のことだ。
しかし当時は販売するスマホの値段が約3万円と必ずしも安くなく、話題にはならなかった。

ところが今年5月になり、なんと約1万円のスマホを発表した。
基本料金が無料で、しかも格安スマホも買えることから一躍話題となっているのだ。

Scratch Wirelessの無料サービスのからくりは実は簡単だ。
同社は携帯電話回線を利用せず、Wi-Fiを利用してスマホからインターネットへアクセスしているのだ。
しかもWi-Fi接続時に電話をかけることができ、ショートメッセージ(SMS)も利用することができる。

たとえば自宅と会社にWi-Fi環境があり、通勤途中の電車やバスでもWi-Fiが利用できれば、1日のほとんどの時間でインターネット利用ができる。Wi-Fiが利用できない時間は、家から駅へ移動する間など、わずかな時間さえ我慢すれば、スマホを無料で使い続けることができるのだ。


会社や学校、自宅などでWi-Fi環境のある人なら完全無料で利用できるだろう


しかしこれだけならスマホにSIMを入れずWi-Fi利用しているのと変わらない。
ところがScratch Wirelessのスマホは実は常に携帯電話回線にも繋がっているのである。

同社は大手キャリアのSprintの回線を利用するMVNOキャリアであり、スマホにも携帯電話の電話番号が入っているのである。
つまり同社のサービスは、普段はWi-Fiのみを利用し、どうしても携帯電話回線の利用が必要になった時だけSprintの回線を利用するのである。

しかもSprintの携帯電話回線を利用してSMSを送受信するのも無料だ。Wi-Fiに繋がっていないときでも、SMSの利用は引き続き料金がかからないのである。これならいつでも友人や家族と連絡がとりあえる。

また旅行先やWi-Fiを使えないときはSpringの回線を使った通話やデータサービスが利用できる。1日約240円(1.99ドル)で通話し放題、あるいは同額で50MBのデータ通信のオプションが用意されている。もっと多く通信したい人には30日で1GBが約3000円(24.99ドル)といったプランも用意されている。仮にWi-Fiだけとデータ通信1GBを付けても、大手キャリアの基本料金の半額程度で済む。


Wi-Fiが使えないときでも追加料金を払えば音声通話や携帯回線のデータ通信が利用できる


格安SIMキャリアの中には、無料データ利用分が少ないことをカバーするためにWi-Fiサービスを無料で提供するところもある。だがScratch Wirelessはそれとは逆の発想で、Wi-Fiを使いながら、どうしても携帯電話回線のデータ通信が必要な時だけ追加料金を払う、という全く逆の発送のサービスなのである。

Wi-Fi環境があり、普段は電話をほとんど使わず、友人や家族との連絡もスマホ、といった人ならこうしたサービスは、かなりお得に感じられるだろう。

ヘビーユーザーには向かないかもしれないが、格安SIMで安く済ませたい、と考えている人の中にはうってつけのサービスと言えるかもしれない。

アメリカで成功すれば、日本など他の国でも類似のサービスを始めるキャリアが出てくるかもしれない。

山根康宏