「恥の多い生涯を送ってきました」。冒頭から共感を禁じ得ない、太宰治の自伝的作品、「人間失格」。だが、その一文も本を手に取って、ページを開かねば目にすることはない。生誕百周年で、にわかに太宰ブームが起きている今日とはいえ、文庫本コーナーの書棚の奥に鎮座していたら、どれほどの人が手に取っただろうか。2007年夏から29万7,000部の販売数である。若い世代に名作小説をアピールしようとする、集英社の夏の文庫フェア