聖地ウインブルドンの「6番コート」は、人だかりでごった返していた。6番コートは決して、会場で6番目に大きなコートではない。スタンド席すら存在せず、4人がけのベンチが両サイドに数脚ずつ並ぶのみ。ベンチのうしろは通路だが、椅子にありつけぬ観客たちが足を止め、幾重にも折り重なり、肩と肩の合間から必死にコートをのぞき込む。それら観客のなかには、テニスのルールをさほど知らない人たちも少なくない。「こっち側