注意深く、観察するように書く作家だと思う。建物にも、部屋の調度品にも、薬物にも、食べ物にも、男にも、女にも、匂いにも、自分の心の動きにも、一定の距離をおき、冷静な視線を向けている。感情に流されず細かく分析するような描写に、強く惹きつけられた。「本当に合わないんだ、君とは」という言葉を残して恋人が部屋を出ていった後、主人公はかつて出入りしていたある場所のことを思い出す。今は米国資本の会社で働き、清