雲ひとつない秋の青空に一筋の弾道がのびていく。神宮球場のスタンドにいた観衆の誰もが空を見上げ、その打球の行方を見守った。いつまでも眺めていたいと思わせる白球はゆるやかに高度を下げ、ライトスタンドの中段で跳ねた。広陵の真鍋慧(けいた)がゆっくりとダイヤモンドを回り、ホームに還ってくる。広陵に得点が刻まれてもなお、しばらく胸の奥でドクンドクンと脈打つ音が聞こえていた。ただのホームランではない。見る