今年に入ってからにわかに注目を集めているのが「探偵」です。

2月7日に渋谷区で探偵会社の元代表の男性が立てこもった事件、2月16日には同居女性に「探偵なんて儲かるの?」と言われた探偵事務所アルバイトの男が女性を殺害した事件、さらに復縁を謳い文句にした探偵事務所に、依頼した男性への賠償命令が下るなど、ニュースにはなるけれども実際の姿が見えてこない、探偵にまつわる事件が次々と報道されています。

結婚、離婚、不倫、復縁のキーワードとともに登場してくる探偵の存在は、アラサー世代にも他人ごとでは済まないでしょう。ところが、探偵の実態というのは一般人にはわかりません。そこで、小説の題材として探偵を取材した経験から、探偵業に関する基本的なことを紹介しておきましょう。

    資格がなくてもなれる。業務の9割は浮気調査

まず、どうやって探偵になるのか。会社として警察に届け出ることで「探偵業届出証明書」をもらって開業できます。これは、探偵業法という法律に定められています。ただし、個人ではなく会社としての届け出なので、調査員=探偵は営業所ごとに登録しているだけです。特別な資格があるわけではありません。

また、これはあくまで手続きだけ。実際の業務である調査で必要になる知識や尾行や張り込みなどの特殊なスキルは、探偵業者ごとに教育しているのが実情です(探偵業法では義務化されています)。なかには探偵学校を運営している事業者もあるようです。

探偵の通常業務の9割は浮気調査です。残りの1割は人探しや身元調査ですが件数的には圧倒的に少ないようです。実際、浮気調査はそこまで難易度が高いものはなく、尾行して証拠を集めるだけで調査が終わります。おおむね1、2週間が相場です。

    言い値で悪徳業者ほど儲かる仕組み

気になるのは探偵の報酬ですが、これは業者のモラルに応じて決まります。本来は調査業の業界団体が定める「日給(1〜2万円程度)」×「調査日数」+「必要経費」が基本です。しかし厳密に設定されているわけでもないので、業者が100万と言えば100万円になるのです。つまり、悪徳業者ほど儲かる仕組みになっているのです。

「パートナーが浮気しているかも」と追い詰められている人は、いくら支払ってでも真実をつきとめたいという精神状態に陥りやすいので、言われるがまま支払ってしまうということは多いようです。

「浮気調査で500万円請求された」などと言う依頼者もいます。しかし、依頼者から事件化しようとすることはありません。浮気調査などの場合、警察に訴え出ることで身内の恥をさらすことになるためです。残念なことにそうした部分につけ込む業者もいるのです。

また、依頼者が望んでいた結果が出なかったり、精神的に追い詰められすぎてやぶれかぶれで別のトラブルを起こしたり、探偵に責任をとらせようとして脅迫などの別の事件になってしまうこともあります。

このように金額面を除けば、人のトラブルを表に出ることなく処理してくれる貴重な仕事という側面もありますので、依頼をする際にはきちんとした業者を見極めていただきたいと思います。

(ネスカフェ和夫)