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ナレッジグラフの新しい健康・医療検索が登場。

今や素人医師がグーグルを使って、容易に不安の種を検索する時代となった。

ハイテク界の巨人はナレッジグラフ(Knowledge Graph)の検索に医療情報を含めることを発表し、誰もが診察室にいる医師に反論することができるようになった。本質的には、グーグルが独自にWebMDのバージョンをパワーアップさせたものだ。インターフェースはよりシンプルになり、よりダイレクトなアクセスができるようになった(もちろん、実際の本家WebMDウェブサイトに暗い影を落とすだろう。少なくとも今のところはまだ活発に活動中ではあるが)。

この新機能は、緊急の場合に便利なツールのようだ。しかし、意図しない結果をもたらす可能性もある。

グーグル信者は自分で自分を治療する?

グーグルは人が望むものを単に提供しているだけのようだ。同社のブログ記事によると、グーグル検索において、20回に1回は健康関連の情報が検索されている。

新機能は、ウェブ全体から症状、一般的な治療や図解を探し出して明らかにするものだが、その結果は単純な(時に不正確な)マシンアルゴリズムに依存しているわけではない。データは、同社に所属するカピル・パラク博士、医学博士、公衆衛生学修士、博士、およびメイヨークリニック職員を含む医療専門家のチームによって再検討される。彼らはウェブの情報を選択し、精度を再検討し、自身の臨床知識を提供するとしている。

迅速に、おそらく信頼できて、容易に理解できるような医療情報を発掘する機能は、人々が危機に瀕した瞬間にまさに必要とされるものだろう。たとえば、子どもの症状の重症度を調べて心配する親は、おそらく冷静さを失ってしまうだろう。彼らは、医療専門用語のページを徹底的に探したり、延々と検索用語を絞り込むことになる。それが避けられるかもしれない。しかし同時に、心気症患者に多くの心配の種をももたらし、強迫観念に駆られて深夜に研究を重ねるという結果をも生み出すだろう。

「サイバー心気症(Cyberchondria)」という用語は既に存在している。オンライン検索を強迫的に行い、それによって生み出され、そして深刻化する心気症の一種だ。神経科医であり、作家、教育者でもあるリチャード・C・セネリックはHuffington Postでこのように述べている。「心気症の人々や、『自分の容体が気になる健康な患者』にとって、インターネットは彼らの懸念をエスカレートさせる大きな土壌なのです。(それは)オンラインの健康情報を利用することによる、過剰な不安の相互作用です…」。

彼は、オンラインの衛生研究に焦点を当てた2008年のマイクロソフトの研究を引用している。その中では40万ページのサンプル全体で3つの共通する症状が見られた。頭痛、筋肉のけいれん、胸痛である。検索エンジンは医師のように「診断推論」を行うことができないので、一般的な良性の疾患と、より深刻な問題とに同程度の重要性を与える傾向があることを研究者らは発見した。

グーグルは現実の、生きた医師のチームに協力を求めたが、彼らは個々のケースや状況を評価することはできない。言ってみれば、彼らは見せかけの事実調査員なのだ。

新ツール登場により問題が再燃

心気症やサイバー心気症が生まれたことに関して、目新しいことは何もない。それは将来の医師が訓練を受けている場でもよくあることだ。毎年、何百もの医学生が「医学生病」に屈し、自分が勉強しているのと同じ病気にかかっていると考えてしまう。

現在グーグルが提供するこの種のオンライン調査について、医学界の反応は分かれそうだ。臨床診断に異議を申し立てたり、診断をすげ替えるために、オンラインの情報を利用する人々がいる。そのため、治療を複雑にさせてしまうケースが考えられる、という意見がある。一方では、患者に情報を提供し、教育するための貴重な資源として擁護する意見もある。

ツールが役立つか害になるかどうかは、使い方による。一部の人々には、オンラインで探しあてたものに基づいて勝手に最終診断を下す傾向が明らかにある。良かれ悪しかれ、グーグルの新しい検索は、自己診断の誘惑を高めることになるだろう。

同社はそのことを認識しているようだ。ブログの記事にはこのように書かれている。

これらの検索結果は医学的なアドバイスを意図しているということではありません。症例は重症度や個人差によって様々であり、必ず例外があるということを私たちは知っています。私たちが提示するのは、情報を得るという目的のみのためで、あなたが健康に不安を持っている場合には必ず医療専門家に相談してください。

おそらく、謎の発疹や咳を、深刻な病気の症状と結びつけてしまう人は今後も出てくるだろう。グーグル検索でも何も見つけられず、医師が末期疾患の可能性を否定することもあるかもしれない。そのせいで深刻な病気を見逃してしまっても、グーグルを非難してはいけない。助けようとしてはいたのだから。

スクリーンキャプチャ画像提供:Google

Adriana Lee
[原文]