「IBMのクラウドは世界最大」は本当か?
IBMの全く信じられない主張
時折虚偽の主張には、その厚かましい話がどこから出てきたのか逆に感心させられることがある。例えばIBMの広報は、70億ドルの収入をクラウドで得ていることから、自社を世界最大のクラウドプロバイダだとGigaOmのバーブ・ダローに語っている。
IBMは信頼できるクラウドプロバイダだが、その主張は好意的に捉えても現実に即してるとは言えない。
現にアマゾン ウェブ サービス(AWS)のライバルと呼べるのは未だマイクロソフトであり、グーグルも果敢に挑んでいる。IBMは?というと、そうでもない。
誰もが世界を制したがっている
自身を誇張するのはIBMだけでは無い。6ヶ月前はマイクロソフトが自社のクラウドの数をもって、これは数十億ドルの価値があるマシンだと言い張っていた。この事で、少なくとも1人のアナリストは、マイクロソフトのクラウドが収益面で世界一だと公言した。
他に同じことを言った人がいるかは分からないが。
結局のところ、マイクロソフトはOffice365なども堂々とクラウドのうちに数えていた。しかし我々がクラウドプロバイダといわれて考えるのが、SaaSではなくIaaSやPaaSの事だとすれば、フェアな話だともいえる。
これがIBMの場合、話の論拠となるのが粗末なマネジメントのホスティングビジネスおよび、その他の「クラウド」アウトソーシングというわけだ。
IBMがクラウドビジネスを実態より大きなものに見せかけるため、数字をごまかすのはこれが初めてでは無い。2013年には、IBMはAWSに対抗してマーケティングキャンペーンを展開し様々な主張を展開したが、それらの多くは根拠が無いものだった。例えば「アマゾンより270,000も多くのWebサイトをホスティングしてるクラウドは何処でしょう?IBMだと答えることができれば、あなたは情報通だ」のようなものだ。
事実とは異なる。もしあなたの答えがIBMなら騙されたうちの1人ということになる。
IBMがAWSと比べて規模の小さいクラウドプロバイダというだけではない。ガートナーの分析によればエンタープライズ級と言えるレベルでもないという。ガートナーによれば、AWSは企業利用の92%を占めており、グッと差が開いた第2位のMicrosoft Azureが76%だという。IBMはどうか? エンタープライズのDNAを有しているにもかかわらず、上位に名を連ねていない。
大きく、さらに大きく
IBMの上級副社長にして財務のチーフであるマーティン・シュローターは最近の業績報告会で自社のクラウドの成長についてしつこい程に触れた。
クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャルおよびセキュリティで合わせて250億ドルの利益が上がった。これはIBM全体の27%を占めており、アナリティクスはそのうち7%にあたる。クラウドビジネスは60%の成長を遂げており、事業は大きなものになっている。クラウドビジネスの利益は70億ドルに登り、去年の段階で*aaSは年間あたり35億ドルの利益を出すようになった。これは前年から22億ドルの増収だ。
クラウドの正確な数を考えればこれは素晴らしい話に思えるが、完全にクラウドだけで成り立っているAWSと比較すると霞んでしまう。
アマゾンの主事事業以外の収入はほぼAWSによるものである。
2013年にガートナーのリディア・レオンが試算したところによると、AWSの規模は業界でアマゾンに次ぐ業者14社を集めたものの5倍になるという。IBMやその他のベンダがちっぽけに見えてしまう、他社が引いてしまう位に情け容赦ないとも言える規模だ。最高のパフォーマンスを担保するためにプロプライエタリなネットワークなどのインフラを用いているにもかかわらず、AWSのコストにおけるアドバンテージは良くなる一方だ。
このスケールとはどういったものだろうか? AWSのエンジニア、ジェームス・ハミルトンが最近語ったところによれば、2004年に年間収益が70億ドル位だった頃のアマゾンのグローバルインフラを支えるに足るだけの処理能力が毎日AWSに追加されているという。
言い換えれば、これはIBMがいうところの70億ドル規模のクラウドビジネスを支えるに足るだけの処理能力が、毎日毎日足されているという事でもあるのだ。
事実に基づいて
これらのことは、何もIBMのクラウドビジネスを貶す為のことでは無い。IBMのIaaSビジネスを支えるSoftlayerはすごいものだし、今後もさらに良くなって行くことだろう。
しかしIBMが実態よりも成功しているように顧客を欺くのは褒められたことでは無い。幸いにもパイパー・ジェフリーによるアンケート調査によれば、騙されてる人はあまりいないようだ。
以前のマイクロソフトがそうであった様に、IBMはAWSに機能面で対抗できるクラウドを構築する為に、例え自分たちのクラウドに対するアプローチに苦しみことになっても前進する事だろう。マイクロソフトのAzureビジネスが成功したのは、こういった戦略を取ることで実態を伴った大きな前進を生み出した賜物だ。勝者のふりを続けている限り、IBMはクラウド業界における凡百の中の一社であり続けるだろう。
Matt Asay
[原文]