先輩にタメ口→もう仕事はこない! 華やかで厳しい芸人世界の裏側とは?
吉本NSCの講師として、数多くの人気芸人たちを世に送り出した本多正識氏初の著書『吉本芸人に学ぶ 生き残る力』(扶桑社/刊)が満を持して出版された。
30年以上にわたり「笑いの世界」と接してきた本多氏。本書では、人気芸人たちを間近で見てきたからこそ知っている、芸能界を生き残るサバイバル術を実際のエピソードを交えて解説している。
ナインティナインの運命を変えた出来事や、南海キャンディーズ結成の秘密など、ファンのみならず思わず目を引く内容が満載だ。今回は本書で収まりきらなかったエピソードを、本多氏ご本人に伺った!
■先輩にタメ口→仕事がこなくなる 厳しい芸人の世界とは?
――NSC9期生として入学してきたナインティナインのお二人は、当時から抜群の存在感を放っていたと書かれていますが、ほかに印象に残った生徒さんはいらっしゃったのでしょうか。
本多氏(以下敬称略):ジャルジャルの2人を最初に見たときは、なんちゅう上品な子が来てんねんと思ったのを覚えてますね。聞いたら、後藤のお父ちゃんは市役所に務める真面目な公務員で、福徳の実家は大金持ちいうじゃないですか。今はもっとそういう子が多いですよ。九州大学出てお医者さんしながらNSC通ってるっていう子とかね。ロザンの宇治原くんが京大卒で有名ですが、今は東大卒もいますから。そういう意味で芸人の間口は昔よりも広がったかもしれない。
――バカバカしいことをしているように見えても、最低限の常識がないとダメだとおっしゃっていましたね。
本多:絶対そうですね。芸人はバカではなれない。ただし、単純に高学歴だけが武器になるかというとそうではないです。勉強ができるのと、芸人になるための頭の良さは違うものですから。こんなこというとアレですが、東大に入るより売れるほうがよっぽど難しい。東大は年に何千人と受かりますけど、売れる芸人はそれよりももっと少ないですから。1年に2、3組売れたら、今年は新しい組が出たよなって思うくらいですよね。
――売れる芸人のパターンというのはあるのでしょうか。
本多:キングコングのようにポンといく人もいれば、ウーマンラッシュアワー村本のようにセミの幼虫かってくらい潜伏しているのもいて、売れるパターンというのは、わからないんです、正味のところ。
――本書での対談コーナーでも、村本さんと当時のことをお話されていましたね。
本多:僕、NSC時代の村本を覚えてないんですよ。卒業して、中川パラダイスと組んでからようやく認識しました。彼と組んでから、ベースよしもとのオーディションにほんまによう来だしてね。パラダイスを見つけられたのが、村本にとって本当によかったんやろな。
―― 一方で売れずに引退していった芸人さんも数多くいらっしゃると思いますが、そういった中で今でも親交があるという生徒さんはいらっしゃいますか?
本多:ほとんどないですね。ただ、裏方になったという子は結構いるんですよ。ブラックマヨネーズの吉田くんの元相方とか小籔くんの元相方とかがそうですね。彼らは放送作家として今も活躍しています。そういう子たちには必要以上に頑張るなよって言ってますね。俺の牙城には入ってくるなよって意味で(笑)。そういえば以前、佐々木健介さんと北斗晶さんのマネージャーさんに『ご無沙汰してます』って声をかけられたことがあって。誰かと思ったら、『僕、NSCの○期です』ってこともありました。
――裏方に回った生徒さんたちも、現場に本多先生がいらっしゃったら緊張するでしょうね(笑)
本多:僕は、構成作家になった子たちにも変わらず接しますよ。もちろん教えることもあります。例えば、番組のゲームコーナーがあったとしたら、それをスタッフ自身できちんとシミュレーションしたのかとか。大喜利のお題も、作家たちが実際に答えを何十個も用意したのかということを聞きます。作家が何時間もかけて頭ひねって、ようやく10個しか出ないのを、芸人さんにふっても出てくるはずがない。逆に作家がサンプルでいくつも答えが出るようなお題は、芸人さんだったら、もっとすごいのが出てきますから。
――この本を読んで、本多先生の指導は、お笑いのイロハと同じくらい社会人としての振る舞い方にも重きを置いているように感じました。
本多:そうですね。特に敬語に関しては口酸っぱく言っています。たまに僕に対してタメ口で話す生徒がいますが、先輩芸人に同じことをしたら間違いなく仕事こなくなりますから。そこに関しては入学してから卒業するまで一貫して言い続けるようにしています。
本にも書きましたが、大御所芸人の中田カウスさんも、顔見知りの師匠がいたらすぐさま立ち上がって挨拶に行かれるんです。『師匠たちがいたからこそ今の自分たちがいるんだ』ということをおっしゃっていましたね。
――そういった、私達が知らないような芸人さん方の伝説的なエピソードがまだまだあるんでしょうね。ぜひもっとお聞きしたいです。
本多:今回の本でも書ききれなかったことは山ほどあるんですよ。今のお笑い界の礎が、どうやって築かれていったかを体系化したら面白いんちゃうかなと思ってるんです。横山やすしさん、阪神巨人さんといった偉大な先駆者たちが、どのようにして芸人として上り詰めていったかを、いつか何らかの形で残せたらいいなと思っています。
(了)
(本書に収録されている吉本興業・大崎社長との対談の風景)
(本書ではナインティナイン・岡村隆史さんら4人の芸人と対談をしている)
30年以上にわたり「笑いの世界」と接してきた本多氏。本書では、人気芸人たちを間近で見てきたからこそ知っている、芸能界を生き残るサバイバル術を実際のエピソードを交えて解説している。
ナインティナインの運命を変えた出来事や、南海キャンディーズ結成の秘密など、ファンのみならず思わず目を引く内容が満載だ。今回は本書で収まりきらなかったエピソードを、本多氏ご本人に伺った!
――NSC9期生として入学してきたナインティナインのお二人は、当時から抜群の存在感を放っていたと書かれていますが、ほかに印象に残った生徒さんはいらっしゃったのでしょうか。
本多氏(以下敬称略):ジャルジャルの2人を最初に見たときは、なんちゅう上品な子が来てんねんと思ったのを覚えてますね。聞いたら、後藤のお父ちゃんは市役所に務める真面目な公務員で、福徳の実家は大金持ちいうじゃないですか。今はもっとそういう子が多いですよ。九州大学出てお医者さんしながらNSC通ってるっていう子とかね。ロザンの宇治原くんが京大卒で有名ですが、今は東大卒もいますから。そういう意味で芸人の間口は昔よりも広がったかもしれない。
――バカバカしいことをしているように見えても、最低限の常識がないとダメだとおっしゃっていましたね。
本多:絶対そうですね。芸人はバカではなれない。ただし、単純に高学歴だけが武器になるかというとそうではないです。勉強ができるのと、芸人になるための頭の良さは違うものですから。こんなこというとアレですが、東大に入るより売れるほうがよっぽど難しい。東大は年に何千人と受かりますけど、売れる芸人はそれよりももっと少ないですから。1年に2、3組売れたら、今年は新しい組が出たよなって思うくらいですよね。
――売れる芸人のパターンというのはあるのでしょうか。
本多:キングコングのようにポンといく人もいれば、ウーマンラッシュアワー村本のようにセミの幼虫かってくらい潜伏しているのもいて、売れるパターンというのは、わからないんです、正味のところ。
――本書での対談コーナーでも、村本さんと当時のことをお話されていましたね。
本多:僕、NSC時代の村本を覚えてないんですよ。卒業して、中川パラダイスと組んでからようやく認識しました。彼と組んでから、ベースよしもとのオーディションにほんまによう来だしてね。パラダイスを見つけられたのが、村本にとって本当によかったんやろな。
―― 一方で売れずに引退していった芸人さんも数多くいらっしゃると思いますが、そういった中で今でも親交があるという生徒さんはいらっしゃいますか?
本多:ほとんどないですね。ただ、裏方になったという子は結構いるんですよ。ブラックマヨネーズの吉田くんの元相方とか小籔くんの元相方とかがそうですね。彼らは放送作家として今も活躍しています。そういう子たちには必要以上に頑張るなよって言ってますね。俺の牙城には入ってくるなよって意味で(笑)。そういえば以前、佐々木健介さんと北斗晶さんのマネージャーさんに『ご無沙汰してます』って声をかけられたことがあって。誰かと思ったら、『僕、NSCの○期です』ってこともありました。
――裏方に回った生徒さんたちも、現場に本多先生がいらっしゃったら緊張するでしょうね(笑)
本多:僕は、構成作家になった子たちにも変わらず接しますよ。もちろん教えることもあります。例えば、番組のゲームコーナーがあったとしたら、それをスタッフ自身できちんとシミュレーションしたのかとか。大喜利のお題も、作家たちが実際に答えを何十個も用意したのかということを聞きます。作家が何時間もかけて頭ひねって、ようやく10個しか出ないのを、芸人さんにふっても出てくるはずがない。逆に作家がサンプルでいくつも答えが出るようなお題は、芸人さんだったら、もっとすごいのが出てきますから。
――この本を読んで、本多先生の指導は、お笑いのイロハと同じくらい社会人としての振る舞い方にも重きを置いているように感じました。
本多:そうですね。特に敬語に関しては口酸っぱく言っています。たまに僕に対してタメ口で話す生徒がいますが、先輩芸人に同じことをしたら間違いなく仕事こなくなりますから。そこに関しては入学してから卒業するまで一貫して言い続けるようにしています。
本にも書きましたが、大御所芸人の中田カウスさんも、顔見知りの師匠がいたらすぐさま立ち上がって挨拶に行かれるんです。『師匠たちがいたからこそ今の自分たちがいるんだ』ということをおっしゃっていましたね。
――そういった、私達が知らないような芸人さん方の伝説的なエピソードがまだまだあるんでしょうね。ぜひもっとお聞きしたいです。
本多:今回の本でも書ききれなかったことは山ほどあるんですよ。今のお笑い界の礎が、どうやって築かれていったかを体系化したら面白いんちゃうかなと思ってるんです。横山やすしさん、阪神巨人さんといった偉大な先駆者たちが、どのようにして芸人として上り詰めていったかを、いつか何らかの形で残せたらいいなと思っています。
(了)
(本書に収録されている吉本興業・大崎社長との対談の風景)
(本書ではナインティナイン・岡村隆史さんら4人の芸人と対談をしている)