“バカにされない”話し方の極意

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 例えば同じ内容の話でも、話し方ひとつで相手に与える印象は違ってくるもの。

「彼は、足が短いがハンサムだ」
「彼は、ハンサムだが、足は短い」

 このように順番が入れ替わっただけでも、印象は大きく変わる。論理的な話し方をしたいと思っても、実際の会話の中では、話し方の持つ印象を操作する力が常に働いている。だから、どんな話し方がどのように話の内容や論理をねじ曲げているのかを認識し、自覚することが論理的な話し方の近道となるのだ。

 『あたらしい話し方の辞典』(高橋健太郎/著、日本文芸社/刊)は、ビジネスやメディアなどでよく使われるレトリックの使い方、見破り方および反論の仕方を、メジャーなレトリック、カウンセラーが使うテクニック、ギリシャ・ローマの弁論術などをふまえて説明した一冊だ。

 本書では、論理的な話し方以前の、「こいつはバカだ」と思われる話にならない話し方が解説されている。
 「理想論法」がその一つだ。
理想とは、現実にはありえないベストな状態のこと。そう考えれば、理想に比べて現実が劣るのは当たり前だが、その当たり前のことをわざわざ指摘する方法だ。

 例えば、「もっといいアイデアがあるだろ」「もっといい点とれるだろ」というような、「もっとやれるだろ」という言い草がある。
 仕事中にパソコンでゲームをしているなど、明らかに怠慢な部下なら「もっとやれるだろ」と言いたくなるが、この「もっと」にも現実的な根拠がなければ、それは理想にすぎない。
 もし、仕事が手一杯で余裕がない部下に「もっとやれるだろ」と言っても、その「もっと」には根拠がない。ここで、仕事を効率化したり他の人に割り振ったりするなど次善の策を考えるか、それでも「もっとやれるだろ」と理想論で押すかが、分かれ目となる。

 では、このように理想論法で押してくる相手には、どう反撃したらよいのか。著者は次のように述べる。
 「もっと、うまいアドバイスの仕方があるんじゃないですか?」と、こちらも理想論法で返せればいいが、それが現実的ではない場合もある。そういうときは、できるだけ具体的に「なぜやれないのか」を話し、アドバイスを求めるといい。もし、相手が「自分で考えることだ」などと言ってきたら、「どう考えたらいいですか?」と切り返せばよい。

 本書では、つい使ってしまうさまざまな論法が紹介されている。今まで言われてなんとなく受け入れていたことも、本書を読むことで分かるはずだ。もしかしたら、「この人、バカなんだろうな」と思われていたかも…ということに気づいてしまう可能性もある。
 自分が不利な立場にならないように、自分の発言で相手を困らせないようにするために、どんな人にでも対応できる話し方の知識は、さまざまな場面で役に立つはずだ。
(新刊JP編集部)