「アベノミクスは絵空事」亀井静香が政権を斬る
11日21日、自ら「アベノミクス解散」と称して、衆議院解散を決定した安倍晋三総理だが、下がり続ける支持率や、最優先としてきた経済政策の効果がいまだ見えないことから、「アベノミクスの失敗隠し」とも噂され、強い逆風にさらされている。
そんな中、安倍総理の父、晋太郎氏(故人)の薫陶を受けていた縁で、晋三氏を弟のようにかわいがってきたという衆議院議員、亀井静香氏が、著書『晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ〜傘張り浪人決起する〜』(メディア・パル/刊)を刊行。間もなく成立2年になろうとしている第2次安倍内閣をぶった切る。
■公的資金の流出を招いただけだった「異次元の金融緩和」
このところ、その効果が否定的に語られることの多い「アベノミクス」だが、亀井氏が「絵空事」と切り捨てているように、「3本の矢」はどれも外れたと考えざるを得ないようだ。
1本目の矢「異次元の金融緩和」によって、金は確かに世の中に溢れ出したが、その金が向かった先は株式市場だ。亀井氏は、日経平均株価が15000円を割りそうになるたびに、必ずといっていいほど政府が株価維持目的で公的資金を注ぎ込むというのを、ファンドなど投機筋は見抜いていると指摘している。そのタイミングで株価が戻るわけだから、彼らからしたら日本の株式市場は「損をしないで博打ができる、夢のような賭場」というわけだ。
企業への融資と生産活動の活発化を目論んだ「第1の矢」だったが、その結果が、国民年金や郵便貯金といった公的資金の海外金融資本への流出では成功とはとても言えない。
■地方の建設業が激減した今、「公共事業」の意味は…
2本目の矢「機動的な財政出動」だが、これは大ざっぱにいえば「政府から民間の会社に公共事業を発注する」ということを意味する。しかし、亀井氏が問題点として指摘するのは、今この「公共事業」が成り立たなくなってきていることだ。
公共事業は多くの場合、政府から大手ゼネコンに発注され、大手ゼネコンから各地方の中小建設会社に振り分けられる。バブルの時代ならばそれでよかったのかもしれないが、最終的に工事などの実作業を請け負う中小の建設会社は小泉改革前後から激減している。つまり、公共事業を政府が発注しても、遂行できる会社や職人がいないのだ。これでは、公共事業をどれだけ発注しても、儲かるのはゼネコンだけ。地方経済を活性化させる具体策なしに、ただ金をばらまいただけだと言われても仕方のないところだろう。
余談だが、これは東日本大震災の被災地復興も同様で、格好だけ予算を割り当てても、実際に働く人や企業がないために4割近くが未執行になっているという。
そして、3本目の矢「成長戦略」については、今にいたっても「よくわからない」という人は多いはずだ。このあたりの事情についても、亀井氏は本書でかなり辛口な評価を下し、「集団的自衛権」「新自由主義」といった、安倍政権を彩るキーワードについても政治家としての豊富な経験と、その経験から導き出される洞察力を元に「大変なことをやってしまった」「とんでもないことになる」と厳しい口調で非難している。
今は無所属と“浪人”の身分である亀井氏だが、かつては閣僚として引く手あまただった切れ者中の切れ者だ。本書では、同氏がこれまでの政治活動を振り返りつつ、対米関係や経済、政界といったトピックについて述べるとともに、今後日本が進むべき針路についても重要な提言を行っており興味深い。その政治観は、総選挙を控えて安倍政権への是非が問われている今、異彩を放っている。
(新刊JP編集部)
そんな中、安倍総理の父、晋太郎氏(故人)の薫陶を受けていた縁で、晋三氏を弟のようにかわいがってきたという衆議院議員、亀井静香氏が、著書『晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ〜傘張り浪人決起する〜』(メディア・パル/刊)を刊行。間もなく成立2年になろうとしている第2次安倍内閣をぶった切る。
このところ、その効果が否定的に語られることの多い「アベノミクス」だが、亀井氏が「絵空事」と切り捨てているように、「3本の矢」はどれも外れたと考えざるを得ないようだ。
1本目の矢「異次元の金融緩和」によって、金は確かに世の中に溢れ出したが、その金が向かった先は株式市場だ。亀井氏は、日経平均株価が15000円を割りそうになるたびに、必ずといっていいほど政府が株価維持目的で公的資金を注ぎ込むというのを、ファンドなど投機筋は見抜いていると指摘している。そのタイミングで株価が戻るわけだから、彼らからしたら日本の株式市場は「損をしないで博打ができる、夢のような賭場」というわけだ。
企業への融資と生産活動の活発化を目論んだ「第1の矢」だったが、その結果が、国民年金や郵便貯金といった公的資金の海外金融資本への流出では成功とはとても言えない。
■地方の建設業が激減した今、「公共事業」の意味は…
2本目の矢「機動的な財政出動」だが、これは大ざっぱにいえば「政府から民間の会社に公共事業を発注する」ということを意味する。しかし、亀井氏が問題点として指摘するのは、今この「公共事業」が成り立たなくなってきていることだ。
公共事業は多くの場合、政府から大手ゼネコンに発注され、大手ゼネコンから各地方の中小建設会社に振り分けられる。バブルの時代ならばそれでよかったのかもしれないが、最終的に工事などの実作業を請け負う中小の建設会社は小泉改革前後から激減している。つまり、公共事業を政府が発注しても、遂行できる会社や職人がいないのだ。これでは、公共事業をどれだけ発注しても、儲かるのはゼネコンだけ。地方経済を活性化させる具体策なしに、ただ金をばらまいただけだと言われても仕方のないところだろう。
余談だが、これは東日本大震災の被災地復興も同様で、格好だけ予算を割り当てても、実際に働く人や企業がないために4割近くが未執行になっているという。
そして、3本目の矢「成長戦略」については、今にいたっても「よくわからない」という人は多いはずだ。このあたりの事情についても、亀井氏は本書でかなり辛口な評価を下し、「集団的自衛権」「新自由主義」といった、安倍政権を彩るキーワードについても政治家としての豊富な経験と、その経験から導き出される洞察力を元に「大変なことをやってしまった」「とんでもないことになる」と厳しい口調で非難している。
今は無所属と“浪人”の身分である亀井氏だが、かつては閣僚として引く手あまただった切れ者中の切れ者だ。本書では、同氏がこれまでの政治活動を振り返りつつ、対米関係や経済、政界といったトピックについて述べるとともに、今後日本が進むべき針路についても重要な提言を行っており興味深い。その政治観は、総選挙を控えて安倍政権への是非が問われている今、異彩を放っている。
(新刊JP編集部)