Appleのデザインを担うジョニー・アイブが今は亡きジョブズから学んだこととは?
iMac・MacBook・iPod・iPhone・iPadなど、数々のApple主力製品のデザインを担当してきたジョニー・アイブ上級副社長が、サンフランシスコでVanity Fairが開催したイベントに登場し、Vanity Fairのグレイドン・カーター編集長と対談を行い、「Appleの前CEOであるスティーブ・ジョブズ氏から学んだこと」や「他企業がAppleのデザインをマネすることについて」、さらには「iPhone 6がなぜあのようなデザインになったのか?」などについて語っています。
Apple's Jony Ive on the Lessons He Learned From Steve Jobs - YouTube
ジョニー・アイブ氏は世界的に著名なインダストリアルデザイナーのひとりで、半透明のカラフルなボディが印象的な初代iMacや動画の再生に対応した第5世代iPod、その他さまざまなApple製プロダクトのデザインに携わってきました。彼がAppleに入社したのは1992年のことで、2014年の10月17日に行われたAppleのスペシャルイベントにて発表された5KディスプレイのiMacや鉛筆以下の薄さを誇るiPad Air 2のデザインにも携わっています。
Appleのインダストリアルデザイングループ担当の上級副社長を務めるジョニー・アイブ氏は、1967年2月生まれの47歳。
◆今は亡きジョブズから学んだこと
「私がこれまで出会った人の中で、スティーブ・ジョブズは最も素晴らしい人物のひとりだ」とアイブ氏は言います。そんなアイブ氏は、今は亡きスティーブ・ジョブズ氏から「集中する」ということは最も重要なツールであり、「『月曜日は集中するぞ』というように長い時間集中しようとするべきものではなく、ほんの一瞬、ほんの数分間だけ全身全霊をかけて驚異的なアイデアを絞り出そうとするために行うべきもの」、ということを学んだそうです。
ジョブズ氏はひとつのデザインに全神経を注ぎ込み過ぎて、アイブ氏やデザインチームを猛烈に批判することもあったそうです。そんなある時、アイブ氏は「我々は心と魂をこのデザインに注ぎこんでいる」と、自分もチームも四六時中新しいデザインのことばかり考えていることをジョブズ氏に訴えたところ、「いいやジョニー、君は本当に無駄なことをしてる。君は自分の好きな人についてもっと考えるべきだ」と、ジョブズ氏から思いがけない返事が戻ってきたことを明かしています。
◆iPhone 6が丸みを帯びたデザインになった理由
iPhone 6のデザイン面でこれまでのiPhoneから大きく変化した部分といえば、やはり大画面化が挙げられます。この大画面化はその他のデザイン面にも大きな影響を与えたようで、iPhone 6/6 Plusが丸みを帯びたデザインになった理由もここにあるそうです。
iPhone 5/5s(右)はエッジ部分がダイヤモンドでカットされており、カクッとしたシャープな印象が特徴的でした。しかし、iPhone 6/6 Plus(左)ではエッジ部分が丸みを帯びたデザインに変更されています。
iPhone 6を全体的に丸みを帯びたデザインに変化した理由について、アイブ氏は「持ちやすくするため」と語っています。iPhone 6を販売する前にも、Appleでは当時発売していた最新のiPhoneよりも大きなディスプレイサイズのiPhoneの試作機を作成したことがあるそうです。大きなスクリーンというのは素晴らしい特徴ですが、他の多くの競合製品と同じように大きすぎてブサイクなものであったため、結局は質の悪いプロダクトとして却下されることとなった、と過去にiPhone大画面化のプロジェクトが頓挫していたことをアイブ氏は明かしています。
それでも大画面の需要が増えてきたことで、iPhoneのディスプレイを大きくする必要性が出てきたそうで、大きくても快適に使えるプロダクトを目指し、エッジを丸くすることであまり大きさを感じさせないようなiPhoneをデザインした、とのことです。
ジョニー・アイブ氏が熱くデザインについて語ったiPhone 6のデザインは以下の記事で見ることができます。
中身もデザインも大きく進化「iPhone 6」ゴールド速攻フォトレビュー、5sと比べると圧倒的ビッグサイズ - GIGAZINE
◆Apple Watchは時計型ではなくペンダント型ではダメなのか?
「Apple Watchは時計型ではなくペンダント型ではダメなのか?」という質問に対して、アイブ氏は時計の最良のポジションは腕であるとコメントし、さらに「情報を素早くチラ見するには、腕時計の位置は本当に素晴らしい」と、Apple Watchにとっての最良のポジションは人間の手首部分であることを強調しています。
◆XiaomiのようなメーカーがAppleのデザインを模倣することについて
中国の製造メーカーXiaomiは「中国のApple」と呼ばれており、これはXiaomi製デバイスのデザインがApple製品に非常に似ているためです。
Xiaomi製デバイスの中でも特にApple製品と似ているといわれているのがMi Padで、iPad miniにそっくりなタブレットとして知られています。Mi Padのより詳細な写真はココから確認できます。
こういった「マネ」についてどう感じるか問われたところ、アイブ氏は「多少は我慢しますが、こういったものを見ても自分たちのデザインが称賛されているとは感じられません。例えば何かを歴史上で初めて開発する時、それがどういったものになるかはまったく分かりません。そして開発に7、8年の年月がかかったとしても、それはすぐにコピーされてしまいます。これは窃盗だし、怠慢でもあるんです」とコメントしています。
◆機能かデザインか
また、聴衆から「機能とデザインのバランス」について問われたところ、「美しいデザインだろうと、ちゃんと動作しないプロダクトは醜いものだと思います」と答えています。
なお、対談によると他にもアイブ氏はサンフランシスコにある家から、車で2時間かけてクパチーノのApple本社まで通勤しているそうです。