プロ投資家が語る「資金1000万円ならこれを買う!」
老後の蓄えのために、あるいは給料とは別に安定した収入を得るために、投資に関心を持つ人は多いはずです。しかし、実際に投資で利益を出し続けるのは大変なことですし、やり方を間違えれば損をしてしまうという怖さもあります。
こんな時、気になるのは「プロの意見」です。投資の収入だけで生活している「専業投資家」の投資方法は、我々一般の投資家にとっても参考になるはず。
そこで今回は、『プロも驚きの安定・高利回り!海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社/刊)の著者で、専業投資家として10年以上のキャリアを持つ玉川陽介さんにお話をうかがい、プロが実践する投資の極意を教えていただきました。
後編は「今手元に1000万円あったら、どんな投資をするか」。玉川さんの回答に注目です。
―「リスクを抑えつつできる限り高い利回りで」というのが投資の理想です。インカムゲイン投資でこの理想をかなえるためにはどんなことが必要になりますか?
玉川:まず押さえておかないといけないのは、日本が非常に低金利で、利益が上がらない国だということです。
高い利回りを得るのであれば、わざわざ低金利の国で投資をする必要はないので、海外にも目を向けるというのは必要だと思いますね。もちろんドルベースやユーロベースになりますが。
―海外への投資となると、気になるのは「リスク」です。
玉川:まっさきに来るのが「為替リスク」(投資商品ではなく為替相場の変動で損失を被るリスク)ですが、為替のリスクを取らない商品もあるので、自分の投資のなかにそういう商品を組み込んでいくといいと思います。
そういう商品は利回りが低いことが多いのですが、安定して損をしにくいという利点もあります。こういう商品にレバレッジをかけて運用するというのも一つの手です。
―実際的なことをお聞きしますが、もし今1000万円を投資に回すとしたら、どのように運用していきますか。
玉川:1000万円では不動産は買えないので、選択肢というと証券しかありません。となると、海外の債券ETFとか、アメリカのREITになると思います。
多少はキャピタルゲイン投資として株を買ってもいいと思いますが、1000万円を減らしたくないということだと8割方はETFとREITでしょうね。うまくやれば8%くらいで運用できますから、年間で80万円の利益です。月々のお小遣いが7万円弱増えると考えると大きいですよね。
―今挙げられたのはいずれも海外への投資ですが、国内のREITを買うという選択肢はないのですか?
玉川:国内のREITは高いという感覚があります。分配金を見ても良くないのですが、投資価格も高い。
たとえば、10億円の価値があって、年間1億円の家賃収入があるビルにREITで投資をするとします。ビルの価値が10億円なのだから、このビルのREITの価値も本来ならば10億円になるはずです。でも、今はこれがREITだと20億円くらいの値がついてしまうんですよ。10億円の価値のものに20億円の値がついている。これはおかしいですよね。
―なぜそういうことが起きるのですか?
玉川:みんな知らないからでしょうね。先ほどお話ししたようにREITもETFと構造的には同じですから、一つのREIT商品の中には複数の個別銘柄(不動産)が含まれています。その個別銘柄をすべて吟味してから買っている人はあまりいないんですよ。
投資をしたい人が証券会社の店頭にやってくると「月々5万円でも10万円でも欲しい。何かいい商品はないか?」と相談します。証券マンは顧客それぞれのことまで考えていませんから「安定して収入を得たいならREITだろう」ということでREITを買わせる。特にお年寄りだと、債券よりは不動産の方が馴染み深いですからね。
顧客からすれば、「これで安定して収入が得られる。安泰だ」となるのですが、実は10億円のビルに20億円出してしまっていることもあります。家賃収入が年間1億円だとすると、本来不動産価格の10%分の収入があるはずなのに、5%分しか入ってこないことになる。すごく損をしているわけです。
―それは証券会社にも非があるのではないですか?
玉川:明確に非があるわけではありません。このビルが本当に20億円まで値上がりする可能性もあるので、証券会社からしたらいくらでも言い訳が立ちます。だから詐欺などではないんです。
そういうこともあって、国内のREITは積極的には買えないなというのがあります。
―結局は、きちんと調べない方が悪いということになってしまう。
玉川:そうですね。調べていない人はそういうところで損をしてしまいます。
―本書を読むことで、インカムゲイン投資にかかわる知識とノウハウはかなりカバーできるかと思います。これ以外に投資の勉強として有効なものがありましたら教えていただければと思います。
玉川:物理といいますか、物事の「仕組み」の部分に常に目を向ける習慣をつけるといいと思います。
多くの人はメディアで発表された情報だとか個別のコンテンツといった「上澄み」しか見ていません。でもそれだと、物事がこれからどう変わっていくかといったことはわからないんです。
どんなことでも論理や道理が必ずあります。そこに目を向けて「どうやって成り立っているのか」を押さえれば、今後の展開もある程度予想がつくようになりますし、本物と偽物の区別がつくようになります。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。
玉川:頭のいい人であっても、「広告が格好いい」「見た目が綺麗」といったことが購買行動に寄与してしまいます。
たいした買い物でなければそれでもいいのですが、家を買ったり何百万というお金を投資したりという時は、もっと慎重になるべきです。極端な話、会社を2、3日休んで吟味していいくらいで、広告のイメージで買ってしまうと損をしてしまったり、リスクに気がつかなかったりする。
大事なお金を投資するわけですから、調べられる限りは調べて知識を得てから投資してほしいと思います。これをやらないとギャンブルになってしまいますからね。
【玉川陽介イベント情報】
2014年11月27日(木)夜、東京都内の書店にて、ベストセラー『内藤忍の資産設計塾』の著者で知られる内藤忍氏と、玉川陽介氏の対談講演会が予定されています。
(新刊JP編集部)
こんな時、気になるのは「プロの意見」です。投資の収入だけで生活している「専業投資家」の投資方法は、我々一般の投資家にとっても参考になるはず。
そこで今回は、『プロも驚きの安定・高利回り!海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社/刊)の著者で、専業投資家として10年以上のキャリアを持つ玉川陽介さんにお話をうかがい、プロが実践する投資の極意を教えていただきました。
後編は「今手元に1000万円あったら、どんな投資をするか」。玉川さんの回答に注目です。
玉川:まず押さえておかないといけないのは、日本が非常に低金利で、利益が上がらない国だということです。
高い利回りを得るのであれば、わざわざ低金利の国で投資をする必要はないので、海外にも目を向けるというのは必要だと思いますね。もちろんドルベースやユーロベースになりますが。
―海外への投資となると、気になるのは「リスク」です。
玉川:まっさきに来るのが「為替リスク」(投資商品ではなく為替相場の変動で損失を被るリスク)ですが、為替のリスクを取らない商品もあるので、自分の投資のなかにそういう商品を組み込んでいくといいと思います。
そういう商品は利回りが低いことが多いのですが、安定して損をしにくいという利点もあります。こういう商品にレバレッジをかけて運用するというのも一つの手です。
―実際的なことをお聞きしますが、もし今1000万円を投資に回すとしたら、どのように運用していきますか。
玉川:1000万円では不動産は買えないので、選択肢というと証券しかありません。となると、海外の債券ETFとか、アメリカのREITになると思います。
多少はキャピタルゲイン投資として株を買ってもいいと思いますが、1000万円を減らしたくないということだと8割方はETFとREITでしょうね。うまくやれば8%くらいで運用できますから、年間で80万円の利益です。月々のお小遣いが7万円弱増えると考えると大きいですよね。
―今挙げられたのはいずれも海外への投資ですが、国内のREITを買うという選択肢はないのですか?
玉川:国内のREITは高いという感覚があります。分配金を見ても良くないのですが、投資価格も高い。
たとえば、10億円の価値があって、年間1億円の家賃収入があるビルにREITで投資をするとします。ビルの価値が10億円なのだから、このビルのREITの価値も本来ならば10億円になるはずです。でも、今はこれがREITだと20億円くらいの値がついてしまうんですよ。10億円の価値のものに20億円の値がついている。これはおかしいですよね。
―なぜそういうことが起きるのですか?
玉川:みんな知らないからでしょうね。先ほどお話ししたようにREITもETFと構造的には同じですから、一つのREIT商品の中には複数の個別銘柄(不動産)が含まれています。その個別銘柄をすべて吟味してから買っている人はあまりいないんですよ。
投資をしたい人が証券会社の店頭にやってくると「月々5万円でも10万円でも欲しい。何かいい商品はないか?」と相談します。証券マンは顧客それぞれのことまで考えていませんから「安定して収入を得たいならREITだろう」ということでREITを買わせる。特にお年寄りだと、債券よりは不動産の方が馴染み深いですからね。
顧客からすれば、「これで安定して収入が得られる。安泰だ」となるのですが、実は10億円のビルに20億円出してしまっていることもあります。家賃収入が年間1億円だとすると、本来不動産価格の10%分の収入があるはずなのに、5%分しか入ってこないことになる。すごく損をしているわけです。
―それは証券会社にも非があるのではないですか?
玉川:明確に非があるわけではありません。このビルが本当に20億円まで値上がりする可能性もあるので、証券会社からしたらいくらでも言い訳が立ちます。だから詐欺などではないんです。
そういうこともあって、国内のREITは積極的には買えないなというのがあります。
―結局は、きちんと調べない方が悪いということになってしまう。
玉川:そうですね。調べていない人はそういうところで損をしてしまいます。
―本書を読むことで、インカムゲイン投資にかかわる知識とノウハウはかなりカバーできるかと思います。これ以外に投資の勉強として有効なものがありましたら教えていただければと思います。
玉川:物理といいますか、物事の「仕組み」の部分に常に目を向ける習慣をつけるといいと思います。
多くの人はメディアで発表された情報だとか個別のコンテンツといった「上澄み」しか見ていません。でもそれだと、物事がこれからどう変わっていくかといったことはわからないんです。
どんなことでも論理や道理が必ずあります。そこに目を向けて「どうやって成り立っているのか」を押さえれば、今後の展開もある程度予想がつくようになりますし、本物と偽物の区別がつくようになります。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。
玉川:頭のいい人であっても、「広告が格好いい」「見た目が綺麗」といったことが購買行動に寄与してしまいます。
たいした買い物でなければそれでもいいのですが、家を買ったり何百万というお金を投資したりという時は、もっと慎重になるべきです。極端な話、会社を2、3日休んで吟味していいくらいで、広告のイメージで買ってしまうと損をしてしまったり、リスクに気がつかなかったりする。
大事なお金を投資するわけですから、調べられる限りは調べて知識を得てから投資してほしいと思います。これをやらないとギャンブルになってしまいますからね。
【玉川陽介イベント情報】
2014年11月27日(木)夜、東京都内の書店にて、ベストセラー『内藤忍の資産設計塾』の著者で知られる内藤忍氏と、玉川陽介氏の対談講演会が予定されています。
(新刊JP編集部)