成功の鍵は「文化」にあり? グローバル人材の真の条件
もはや聞き飽きているに違いない。「グローバル化」というテーマは、ここ十数年、ビジネス界で毎日のように論じられている。それは結局、盛んに必要性が叫ばれていながら、いまだグローバル化が遅れている、ということかもしれない。なぜそうなのか。そもそもグローバル化とは、グローバル人材になるとは、どういうことなのか。
英語力や論理力、プレゼン力など、グローバル人材の条件のように語られるスキルはいろいろあるが、本質はそうではなく、もっと人間性に根ざしたものだと説く本がある。『日本人が海外で最高の仕事をする方法――スキルよりも大切なもの』(糸木公廣/著、英治出版/刊)は、多くの人にとって「グローバル化」というテーマへの見方ががらりと変わる一冊となるだろう。
ソニーで20年、9カ国に赴任し、現場マネジャーから子会社CEOまでさまざまなポジションで活躍した著者は、どんな国で、どんなビジネスを行うにしても、「相手は人」だということを繰り返し強調する。人種や宗教に限らずさまざまな文化の違いがあっても同じ人間であり、それならば「微笑めば、微笑み返してくれる」――。海外で仕事をする上では、この単純明解な原理が鍵だと著者は示唆している。
本書では著者がそのような考えに至るまでに出会った困難やそれを乗り越えるまでの試行錯誤の軌跡が、生き生きとした筆致で記されている。人間味にあふれたエピソードが小説風に語られ、ビジネス書であることを時に忘れてしまうほどだ。実体験のストーリーで語られるため具体的・実践的なヒントを得やすい一方、各章末にはポイントが簡潔にまとめられ、振り返りや頭の整理もしやすい。
どんなエピソードがあるのか。たとえば、著者にとって初の海外赴任先のインドでは、当初は現地の従業員や取引先とうまく関係を築けず、「もう日本に帰ってくれ」とまで言われてしまう。四面楚歌の状態で著者が活路を見出したのは、インドの映画。仕事とは本来何の関係もない。だが、映画を通じて現地の文化を学ぶとともに、積極的に映画を話題にすることで、インド人に親しみを持ってもらうことができた。そこから人間関係がどんどん広がり、ついには新規プロジェクトまで成功してしまったのだ。
また、ベトナムに赴任した際にはベトナム語でカラオケを披露し現地の人々の心をつかんだというエピソードや、伝統文化を学んで「祖国の美」をテーマに広告をつくることで大成功した話などが語られている。ビジネスには一見関係のない文化的側面から関係をつくり、仕事の成功につなげるのが著者のやり方だ。そこで得られる成果は単に業績指標において優れているだけでなく、心を震わせる「感動」まで付いてくる。タイトルにある「最高の仕事」がけっして誇張ではないエピソードが満載だ。
外国人から自国の文化に対する敬意や理解を表明されて、喜ばない人はいない。当たり前のようだが、それを本気で実践できるかどうか。実践できれば、想像を超えるような成果が転がり込んでくる。「相手は人」である以上、それは実は、不思議なことではないのかもしれない。
また、こうした姿勢は、実は国内・国外にかかわらず、ビジネスで大きな成功をおさめるための鍵であることも示唆されている。同じ日本人であっても一人ひとり異なるバックグラウンドを持ち、価値観も多様なのだから。「相手は人」だと認識することは、つまり「相手を人として尊重する」ということだ。
どんな場所でも必要なのは、他人と異文化を尊重し、良好なパートナーシップを結ぶ力なのだ。本書はますます多様化する社会において、海外展開している企業だけでなく多くの企業において役立つだろう。また、海外で活躍したい人、グローバル人材をめざす人のみならず、国内でマネジメントに携わる人、ひいては「人を相手に」仕事をするあらゆる人にとって示唆に富む一冊と言えるだろう。
(新刊JP編集部)
英語力や論理力、プレゼン力など、グローバル人材の条件のように語られるスキルはいろいろあるが、本質はそうではなく、もっと人間性に根ざしたものだと説く本がある。『日本人が海外で最高の仕事をする方法――スキルよりも大切なもの』(糸木公廣/著、英治出版/刊)は、多くの人にとって「グローバル化」というテーマへの見方ががらりと変わる一冊となるだろう。
本書では著者がそのような考えに至るまでに出会った困難やそれを乗り越えるまでの試行錯誤の軌跡が、生き生きとした筆致で記されている。人間味にあふれたエピソードが小説風に語られ、ビジネス書であることを時に忘れてしまうほどだ。実体験のストーリーで語られるため具体的・実践的なヒントを得やすい一方、各章末にはポイントが簡潔にまとめられ、振り返りや頭の整理もしやすい。
どんなエピソードがあるのか。たとえば、著者にとって初の海外赴任先のインドでは、当初は現地の従業員や取引先とうまく関係を築けず、「もう日本に帰ってくれ」とまで言われてしまう。四面楚歌の状態で著者が活路を見出したのは、インドの映画。仕事とは本来何の関係もない。だが、映画を通じて現地の文化を学ぶとともに、積極的に映画を話題にすることで、インド人に親しみを持ってもらうことができた。そこから人間関係がどんどん広がり、ついには新規プロジェクトまで成功してしまったのだ。
また、ベトナムに赴任した際にはベトナム語でカラオケを披露し現地の人々の心をつかんだというエピソードや、伝統文化を学んで「祖国の美」をテーマに広告をつくることで大成功した話などが語られている。ビジネスには一見関係のない文化的側面から関係をつくり、仕事の成功につなげるのが著者のやり方だ。そこで得られる成果は単に業績指標において優れているだけでなく、心を震わせる「感動」まで付いてくる。タイトルにある「最高の仕事」がけっして誇張ではないエピソードが満載だ。
外国人から自国の文化に対する敬意や理解を表明されて、喜ばない人はいない。当たり前のようだが、それを本気で実践できるかどうか。実践できれば、想像を超えるような成果が転がり込んでくる。「相手は人」である以上、それは実は、不思議なことではないのかもしれない。
また、こうした姿勢は、実は国内・国外にかかわらず、ビジネスで大きな成功をおさめるための鍵であることも示唆されている。同じ日本人であっても一人ひとり異なるバックグラウンドを持ち、価値観も多様なのだから。「相手は人」だと認識することは、つまり「相手を人として尊重する」ということだ。
どんな場所でも必要なのは、他人と異文化を尊重し、良好なパートナーシップを結ぶ力なのだ。本書はますます多様化する社会において、海外展開している企業だけでなく多くの企業において役立つだろう。また、海外で活躍したい人、グローバル人材をめざす人のみならず、国内でマネジメントに携わる人、ひいては「人を相手に」仕事をするあらゆる人にとって示唆に富む一冊と言えるだろう。
(新刊JP編集部)